マタイの福音書の恵み 155

   銀貨30枚では神の国に入れません
 
マタイの福音書の恵み 155

銀貨30枚では神の国に入れません
[ マタイの福音書27章1~10節 ]

ハ・ヨンジョ オンヌリ教会 前主任牧師


遅すぎた悔い改め
「さて夜が明けると、祭司長たちと民の長老たちは全員で、イエスを死刑にするために協議した。そしてイエスを縛って連れ出し、総督ピラトに引き渡した。そのころ、イエスを売ったユダはイエスが死刑に定められたのを知って後悔し、銀貨三十枚を祭司長たちと長老たちに返して、言った」(マタ 27:1~3)。
イエス様が死刑に定められた後、イスカリオテのユダは良心の呵責を感じ始めました。ようやく自分の考えが間違っていたことに気づき、大変なことをしてしまったという思いに襲われたのです。しかし、この時のユダには2つの問題がありました。1つは、悔い改めるのが遅すぎたということです。
すべての悔い改めには、機会と赦しがあります。悔い改めに遅すぎるということはありません。それにもかかわらず、ユダの場合は、悔い改めるタイミングがあまりにも遅すぎたのです。
イエス様が死刑に処されたとき、一方の十字架につけられていた強盗のことを考えてみてください。彼は最後の瞬間、イエス様が息を引き取られる前に、悔い改めてイエス様に救いを求めました。すると、イエス様は彼に悔い改めの機会と救いの喜びを与えられました。そのことを考えると、遅すぎる悔い改めなどないように思えます。最後の瞬間、自分のいのちが尽きる瞬間まで、救いの道があるということが分かります。
しかし、イスカリオテのユダがイエス様が死刑に定められたのを見て、自ら自分の過ちに気づいた時のことは、それとは少し違います。なぜなら、ユダには悔い改める機会がすでにたくさん与えられていたからです。ところが、ユダは悔い改めようとしませんでした。神様は何度も機会を与えられましたが、彼はますます心を頑なにしていったのです。そして、より意図的に、より狡猾にイエス様を売り渡す計画を練りました。その結果、ユダはサタンの手下になってしまったのです。
イエス様が不当な裁判を通して死刑に定められ、ピラトに引き渡された瞬間、ユダの心に変化が起こりました。これは、一種の良心の働きです。それまで彼の良心は塞がれていましたが、決定的瞬間に心が開かれたのです。しかし、時すでに遅しでした。
神様は、私たちに恵みの時を与えてくださいます。しかし、ある人々は、「イエス様を信じてください」と言うと、さらに心を閉ざします。口さえ開けば人の悪口を言い、嘘をつき、人を傷つけることばかり口にする人もいます。もしあなた自身がそのような態度であるなら、気をつけなければなりません。早く心を入れ替えましょう。心が頑ななままでいると、イスカリオテのユダのようになってしまいます。心が攻撃的になっている人は、早く心を穏やかにしてください。
神様は、すべての人に機会を与えてくださいます。祝福の機会、恵みの機会、救いの機会を与えてくださいます。しかし、イスカリオテのユダはその機会を用いることができず、彼が悔い改めた時はすでに扉が閉ざされた後でした。

目標と方向がある悔い改め
ユダは、イエス様が死刑に定められたのを知った後、自分の過ちに気づき、銀貨30枚を返しに行きました。このユダの悔い改めには、自分の過った行動を悔いる姿はありますが、神様に立ち返る姿はありません。これが、ユダの悔い改めに現れた2つ目の問題です。悔い改めとは、過去の咎と罪を認め、告白することです。しかし、それが悔い改めのすべてではありません。真の悔い改めは、神様に立ち返ることです。
イスラエルの民は、エジプトの奴隷生活から脱出しました。ところが、脱出したことで彼らのすべきことが終わったのではありません。乳と蜜の流れる約束の地カナンに入ることが、彼らの目標でした。ある人は、悪い習慣や罪を断ち切りますが、それが悔い改めのすべてではありません。それらを断ち切った後、目標と方向がなければ、もっとさまようようになります。目標と方向がない人は、ユダのように自殺してしまうこともあります。
私たちは、イエス様を信じて生まれ変わり、新しい人になりました。それなのに、なぜ私たちの生活に葛藤や思い煩いがあるのでしょうか。それは、過去を断ち切っただけだからです。自分の過去の生活を後悔し、断ち切るだけで満足したからです。それでは、私たちの救いは半分しか成し遂げられていません。私たちは、主の懐に抱かれなければなりません。イエス様の人として変わらなければなりません。そのとき、全き救いが成し遂げられます。
イスカリオテのユダは、悔い改めた後、イエス様を売って得た銀貨30枚を持って祭司長たちと長老たちのもとに行きました。ユダが犯した罪はイエス様に対するものでしたが、ユダは祭司長たちのもとに行きました。彼のように、私たちはみな、罪の本質を見抜けない存在です。私たちは、自らに対して罪を犯し、家庭に対して罪を犯し、社会に対して罪を犯します。実際、その罪はだれと関係があるのでしょうか。それはイエス様です。私たちが罪を悔い改めるべき対象は、祭司長ではなく、イエス様です。祭司長や長老たちがユダの罪を赦すことができるでしょうか。それなのに、ユダはイエス様のもとへ行かず、祭司長のもとへ行って悩みを打ち明けました。私たちは、罪の根本的な問題は人ではなく、神様と関係があるということを知らなければなりません。
「そこで、彼は銀貨を神殿に投げ込んで立ち去った。そして出て行って首をつった」(マタ 27:5)。
ユダは、銀貨を神殿に投げ込んだ後、外に行って首をつって死にました。ユダの悔い改めは、自殺に至る悲劇でした。その反面、ペテロの痛哭は、聖霊を受ける祝福でした。ペテロとユダは、二人とも後悔し、悔い改めました。しかし、その結果を見るなら、一人は聖霊に満たされてキリスト教の最初の指導者になり、もう一人は首をつって自殺する悲劇に至りました。
私たちは、真の悔い改めと偽りの悔い改め、聖霊による悔い改めと良心の悔い改めを見ます。聖霊によらない道徳、良心、ヒューマニズムは、必ず挫折します。ヒューマニズムは、いつも力のある者が勝つ弱肉強食の論理です。

お金によって買うことのできない信仰
イスカリオテのユダが銀貨30枚を神殿に投げ込んでから首をつった出来事を通して、私たちは2つのことを学ぶことができます。1つ目は、赦されない罪はないということです。イエス様に関する罪は、どんなものもすべて赦されます。しかし、イエス様を拒むなら、赦される道がありません。私たちは神様に対して罪を犯すことがあります。神様に悪口や文句を言ったりすることもあるかもしれません。しかし、もし神様ご自身を否定してしまうなら、私たちはどこで赦しを得ることができるでしょう。私たちは、失敗することがあります。そんなとき、赦しの主であられるイエス様の御前に行かなければなりません。
2つ目に、どんなにお金を払ってもイエス様を買うことはできないということです。イスカリオテのユダはイエス様を銀貨30枚で売りました。イエス様を売ることができると考えたのです。それは世俗的な考えであり、人間的な考えです。お金があれば何でもできると考えて、イエス様を売り、教会を売ろうとするのです。お金と神様を区別できないほど、同じ位置に置いているのです。イスカリオテのユダを通して教えられることは、イエス様はお金では買うことができないということです。ユダは、最後にそのことが分かりました。お金の問題は、私たちが死ぬ時まで絶えず私たちを苦しめます。
ユダは、イエス様を売ったお金が心の底から嫌になりました。それで祭司長たちに、自分はそのお金はいらないと言いましたが、彼らに拒まれました。ユダは、そのお金を神殿に投げ捨てました。祭司長たちは、そのお金を受け取りませんでした。
「祭司長たちは銀貨を取って、言った。『これは血の代価だから、神殿の金庫に入れることは許されない。』そこで彼らは相談し、その金で陶器師の畑を買って、異国人のための墓地にした。このため、その畑は今日まで血の畑と呼ばれている」(マタ 27:6~8)。
そのお金は、イスカリオテのユダにとっても、祭司長たちにとっても、手にするのが苦しいものでした。結局、ユダのお金は神殿の献金としても価値がなくなり、通りすがりの異国人の墓地を買うために用いられました。ユダが神殿に銀貨を投げ捨てたとたん、神殿の外に飛び出ました。献身がすべて神様に受け入れられるわけではなく、献金がすべて神様に受け入れられるわけではありません。神様はその人の心と動機をご覧になります。純粋できよい献身と献金を通して、神様は奇跡を起こされるのです。
悔い改めることは、偉大な始まりです。そして、偉大な始まりは、自分がしていることを振り返り、よく考えることです。ペテロのように自分の過ちに対して心を痛めて悔い改め、新たに始めなければなりません。神様は、私たちの外見ではなく心をご覧になります。私たちが職場や家庭、生活の場でどのような心で歩んでいるかに神様の関心があります。神様は私たちが謙遜であることを願われます。自分の罪を悔い改めて、新たに信仰の歩みを始めましょう。

祈り
父なる神様、私たちが悔い改めて、嘆き悲しむことができるよう導いてください。神様が与えてくださった恵みの機会を逃してイスカリオテのユダのように遅すぎる悔い改めをしないように助けてください。イエス様を拒む愚かな罪を犯さず、さらにイエス様に似た者になっていけるようにしてください。イエス様の御名によって祈ります。アーメン。

 

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