マタイの福音書の恵み 151

   主とともに目を覚まして祈りなさい
 
[ マタイの福音書26章36~46節 ]

ハ・ヨンジョ オンヌリ教会 前主任牧師


イエス様の生涯には、2つの試みがありました。まず、イエス様が公生涯を始められる頃、十字架を負われるイエス様の救いのみわざを妨害し、挫折させようとするサタンが、直接イエス様のもとにやって来て試みました。サタンは、40日間、断食をされたイエス様のもとにやって来て、3度誘惑しましたが、すべて失敗に終わりました。しかし、この試みよりも大変な試みがイエス様を待っていました。それは、十字架を負う直前のことでした。この試みを行ったのは、サタンではありません。サタンは、私たちを誘惑し、苦しめますが、それほど恐ろしい存在ではありません。私たちは、イエス・キリストの御名により、祈りとみことばと断食によってすべての悪しき勢力に打ち勝つことができます。サタンの勢力よりも私たちを苦しめ、当惑させ、窮地に追いやるのは、実は私たち自身です。
自分自身よりも難しく、大変な存在はありません。ほとんどの人にとって、周りの人よりも自分自身のほうが大変な戦いの相手です。イエス様は、十字架を負うという、すさまじい苦難を前にして、自分自身と戦わなければなりませんでした。
イエス様は、神様と一つであり、様々な奇跡を行う力がありました。そのイエス様が、どうして祈らなければならなかったのでしょうか。イエス様は「だれでもわたしに従って来たければ、自分を捨て、自分の十字架を負って、わたしに従って来なさい」(マコ 8:34)と言われました。十字架を負うためには、自分を捨てなければなりません。自分との戦いに勝たなければなりません。自分を打ち負かさなければなりません。自分を絶望させなければなりません。イエス様も、その過程がなくては十字架を負うことができませんでした。それで、その苦しみと重荷である十字架、人類のすべての罪の重さとも言える十字架を負うために、弟子たちとともにゲツセマネに行って祈られたのです。

目に見えない働き、祈り
「それから、イエスは弟子たちと一緒にゲツセマネという場所に来て、彼らに『わたしがあそこに行って祈っている間、ここに座っていなさい』と言われた」(マタ 26:36)。
「ここに座っていなさい」というのは、ただ座っていなさいという意味ではなく、「目を覚まして祈っていなさい」という意味です。
イエス様の働きの合間には、目に見えない隠れた働きがありました。宣教の働き、病んだ者を癒やす働き、大勢の人々を助ける働きなど、目に見える働きの合間に、実に重要な働きが隠れていたのです。それは、祈りの働きです。イエス様は、静かに一人で山に行き、夜遅くまで、また明け方まで祈られることが度々ありました。つまり、イエス様の働きに力があり、勝利し続けることができた秘訣は、夜遅く、また明け方まで祈られたことにあったのです。そんなイエス様が、今は弟子たちと一緒に祈っておられます。
「そして、ペテロとゼベダイの子二人を一緒に連れて行かれたが、イエスは悲しみもだえ始められた。そのとき、イエスは彼らに言われた。『わたしは悲しみのあまり死ぬほどです。ここにいて、わたしと一緒に目を覚ましていなさい』」(マタ 26:37~38)。
はじめは、弟子たちを連れて行き、一緒に祈らせます。その後、弟子たちのうち3人を連れて行き、「目を覚ましていなさい」と祈るよう命じた後、ご自分はもう少し進んで行って祈られました。
私たちも、1人で祈る時があります。人知れず祈り、早朝に起きて祈り、断食して祈らなければならない時があります。しかし、決定的に重要な働きの前では、ほかの人と心を合わせて祈ることが重要です。イエス様は「二人か三人がわたしの名において集まっているところには、わたしもその中にいるのです」(マタ 18:20)と言われました。未熟な信徒たちであっても、心を合わせて祈るとき、悪しき勢力がみな去って行き、私たちが負えないような困難な十字架でも負うことのできる力が与えられるのです。

愛による悩みと悲しみ
「そして、ペテロとゼベダイの子二人を一緒に連れて行かれたが、イエスは悲しみもだえ始められた。そのとき、イエスは彼らに言われた。『わたしは悲しみのあまり死ぬほどです。ここにいて、わたしと一緒に目を覚ましていなさい』」(マタ 26:37~38)。
イエス様の祈りは、賛美や感謝の祈りではなく、死ぬほどの悲しみを訴える祈りでした。イエス様は、それほど悲しんでおられたのです。イエス様のゲツセマネでの祈りは、嘆き悲しむ祈りでした。苦悩し、もだえる祈りでした。なぜイエス様がこのような苦しみと悩みの祈りをしなければならなかったのでしょうか。イエス様に力がなかったからでしょうか。イエス様は、死んだ者を生かす力を持つ、罪のない神そのものです。苦悩する必要も、悲しむ必要もない方です。しかし、本文を見ると、イエス様は悲しみもだえるほど深刻な祈りをしておられます。なぜでしょうか。それは愛のためです。私たちを愛されたので、悲しみ、苦悩されたのです。
イエス様は、理性的に祈ることもありますが、涙を流しながら祈ることもありました。それは、自分のためではなく、愛する対象のために流した涙でした。私たちは、神様のことを考えながらも、「自分の過ちや咎のためではなく、自分に力がないためでもなく、ただ愛するために」という涙と痛みを抱かなければなりません。

いのちを懸けた祈り
ゲツセマネで祈られるイエス様には、実に不思議な姿が見られます。
「それからイエスは少し進んで行って、ひれ伏して祈られた」(マタ 26:39)。
一般的に、ユダヤ人たちは立って祈りました。立って手を挙げ、神殿に向かって毎日3度祈りました。しかし、イエス様は立って祈るほど心の余裕がなく、地に顔をつけて祈られたのです。このようなイエス様の切実な祈りに比べると、私たちの祈りは、多分に感傷的なのではないでしょうか。祈りは、感傷的なものではなく現実的なものです。霊的戦いであり、身もだえしながら、いのちを懸けてするものなのです。ルカの福音書22章41節には、イエス様がひざまずいて祈られたという表現があり、43節ではイエス様の祈りがあまりに切実だったので、御使いが現れて助け、44節にはイエス様が祈られるとき、汗が血のしずくのように地に落ちたとあります。
私たちの人生において、いのちを懸けた祈り、汗が血のしずくのように地に落ちる祈りをするべき時は今だと信じます。私たちは、祈らなくてもいいほど安易な状況にはありません。私たちの子どもを見ても、夫婦関係を見ても、現在の自分の仕事を見ても、国を見ても、感傷的な祈りをしていられるほどの状況ではありません。特に、私たちの民族の現実を見ると、ひざまずいていのちを懸けて祈るべきだと思わされます。
なぜ私たちは、祈らなければならないのでしょうか。それは、誘惑に陥らないためです。人はなぜ失敗するのでしょうか。悪いことをして失敗するのではありません。努力をしなかったからでもありません。失敗し、倒れる決定的な理由は、誘惑に陥るからです。私たちは、良いスタートを切っても、誘惑に陥れば揺らぎます。そうなれば、恵みを受けられず、信仰を失うということもあります。だからイエス様は「誘惑に陥らないように、目を覚まして祈っていなさい」と言われたのです。

神様が望まれるままに
では、イエス様の祈りの内容を考えてみましょう。
「それからイエスは少し進んで行って、ひれ伏して祈られた。『わが父よ、できることなら、この杯をわたしから過ぎ去らせてください。しかし、わたしが望むようにではなく、あなたが望まれるままに、なさってください』」(マタ 26:39)。
ほとんどの人は、自分の望むことをかなえるために祈ります。しかし、イエス様は、神様のみこころが成し遂げられることを求めて祈られました。
祈りは、父なる神様が望まれるままに成し遂げられるようにと願い求めることです。祈る前は自分の願いがあっても、祈る時には父の願いを求めます。頭で考えるときにはいろいろな自分の計画があります。しかし、目を閉じて祈れば、御父のご計画が見えてきます。祈りとは、自分の願いではなく、御父の願いを受け入れることです。初めは自分の意志や計画、自分のやり方を大切にしていたとしても、祈れば祈るほど「神様、私の自我を打ち砕いてください」と祈るようになります。
人格を持っておられたイエス様の考えは何だったでしょうか。「父よ、この杯を必ずしもわたしが飲まなければなりませんか。十字架を負わない道はありませんか」と神様に尋ねられたのです。ここに私たちは、完全な人であられるイエス様を見ることができます。私たちにも十字架を避けたいという願いがあります。しかし、そのことこそ私たちが必ず負うべき十字架なのです。そこから逃げてはなりません。神様から委ねられた十字架を負わなければなりません。私たちが十字架を負う決意をすれば、神様が十字架を負う力を与えてくださいます。

祈り
父なる神様! 誘惑に陥らないように、祈らせてください。今は、目を覚まして祈るべき時であると信じます。私たちの霊が目を覚ましていることができるように助けてください。地にひれ伏して祈らせてください。汗が血のしずくのように地に落ちるまで祈られたイエス様と同じ心を与えてください。いつも自分自身と戦い、自我を砕き、神様だけを見上げさせてください。いのちを懸けて霊的戦いに勝利し、神様のみこころを成し遂げさせてください。イエス様の御名によって祈ります。アーメン。

 

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