QT牧会と教会への提案

   QTと信仰 12
 
イ・ギフン  オンヌリ教会 一対一弟子養育 責任牧師


1. QTの牧会的な適用
QTを牧会の現場に適用するためには、以下の二つの点が必要です。第一に、牧会者自身がQTに深い関心を持つことです。牧会者は、自身が経験したことのないことを信徒に強調することはできません。QTを教会のプログラムとして導入して失敗するのは、ほとんどの場合、牧会者自身に霊的な深い体験がなく、QTを教会の成長のための一つのプログラムとしてのみ導入するからです。ユージン・ピーターソンは、牧会者が黙想によって人生を発展させなければ、高慢になるのは当然だと語っています。黙想がなければ、成功しようという欲望に引き回され、プログラムの支配を受ける奉仕者になってしまうというのです。牧会者が黙想の人生を歩まなければ、信徒も真理を悟れないばかりか、真理の力も体験できません。
第二に、信徒がQTをする環境を作ってあげることです。QTは、祈りの生活と似た面があります。私たちは、祈りの必要性を知りながらも、祈り続けるのは難しいものです。QTも、必要性は知りながらも、毎日続けることは簡単ではありません。ですから、牧会者がみことばの黙想を通して得られる恵みを説教の時間に信徒と分かち合う、「QT説教」を提案します。QT説教とは、みことばを生活の中で適用した経験を分かち合うことです。それを通して、信徒はQTをすることについて、さらに励ましを得ることでしょう。信徒を養育することは、どんなに強調してもしすぎることはありません。信徒は土壌です。牧会者は、みことばという種を蒔き、実を結ぶことができるよう農夫の役割を忠実に果たさなければなりません。

2. QT牧会の期待
QTが牧会の現場で多様に活用されるとき、多くの恵みを受けることができます。QTをする教会共同体の中で信徒たちと教会が味わう恵みを紹介しましょう。
神様と持続的に交わる
牧会者は、信徒が神様と人格的に交わりながら信仰生活ができるように導かなければなりません。キリスト教の信仰は、生きておられる神様を信じることであり、同時にその方と人格的に交わることです。神様は、人を交わりの対象とされました。QTは、信徒が生きておられる神様と人格的な交わりをするのを助けてくれます。また、神様との交わりは、信徒の信仰と人格を成熟させてくれます。聖書を通して神様と交わることは、信徒に変化をもたらし、その変化は霊的成長を促します。ですから、神様との感動的な交わりができなければ、何の変化も期待できません。なぜなら、変化は人が主体となって起こるのではなく、私たちの内面で、いのちあるみことばが導くものだからです。QTを通して主と継続的に交わるとき、私たちは神様と親密になり、その親密さによって神様の愛の中で自由を味わうことができるのです。キリスト教の信仰は、神様との関係です。
聖書の教えに従って信仰生活をする
牧会者の重要な使命の一つは、信徒が信仰者としてふさわしく生きるよう教えることです。QTはそれを助けてくれます。キリスト教的な人生とは、つまり弟子の道を歩むことです。新約聖書の原典には「弟子」という単語が260回以上出てきます。そして、四福音書には「弟子が従う」という言葉と結びついて、70回用いられています。キリスト教の霊性は、弟子の道に従うことです。チャールズ・スウィンドルは、主のことばの目的は、私たちの人生を変化させることと、イエス様の教会を建て上げることだと言いました。ですから、信徒がQTをすることによって、毎日の生活の中で真理がその目的を成し遂げるようにしなければなりません。牧会者は、信徒がみことばを通して内的な変化を経験し、この時代に対応できるようにしなければなりません。信徒にとって聖書は、善悪を見分けるための基準になります。また、ゆがんだ考え方を正し、心を新しくしてくれます。QTをする信徒は、みことばに従って信仰生活を歩むようになるのです。
信仰的な考えをもって生活する
牧会者は、信徒が教会の内外で直面するあらゆる問題に対して信仰的に考えられるよう訓練させなければなりません。信徒が人間的な視点や教会の固定化された伝統的な考え方によってではなく、聖書的に判断し、結論を得られるよう助けなければなりません。
信仰的な考え方は、定期的に聖書を黙想したり研究したりしなければ、決して形成されません。なぜなら、人は知っていることから影響を受けるからです。主のことばが信徒に満ちれば、夫婦関係、子育て、倫理的な判断などにおいて、信仰的に考えるようになります。信仰的な考え方の形成は、主のことばによってのみ可能となります。QTはそれを助けてくれます。QTをする人々は、聖書に基づいた神様の視点で、日常生活や仕事、そして直面する状況や世を見るようになります。そして、みことばによってプログラミングされた考え方によって問題を解決することができるようになります。
イエス・キリストに似てくる
QTが究極的に追求する人生は、イエス・キリストに似ること、つまり神様の姿を回復することです。神様は、キリストの姿に似させようと私たちを選び(ロマ 8:29)、みことばと聖霊によって私たちが栄光から栄光へと、主と同じかたちに姿を変えられていくことを願い(Ⅱコリ 3:18)、終わりの日には、私たちがキリストと似た者になることを約束しておられます(Ⅰヨハ 3:2)。ジャン・カルヴァンは、敬虔の生活とは、キリストを模範にする人生で、その方を手本にして従うことだと言いました。また、キリストが私たちを弟子とされた目的は、主ご自身に似ていかせるためだと言いました。
QTは、究極的には信徒をキリストの姿に似させ、キリストの支配を受けながら生きるよう霊的に成長させてくれます。また、自分を捨て、自分の十字架を負って生きるように成熟させてくれます。イエス様が父なる神様に似ておられたように、私たちもイエス様に似なければなりません。QTをする人々は、イエス・キリストに似ていき、この世で小さなキリストとして生きるようになるでしょう。イエス様に似ることは、神様がご自分の民のうちに見たいと思われる姿であるだけでなく、この世が見たいと思う姿でもあるのです。
信仰と人格を成熟させる教会共同体
教会共同体が成長するためには、主のことばの基礎の上に建てられなければなりません。教会が追求すべき共同体は、真理の共同体でなければなりません。これは、知識と教えと学びが一致する共同体を意味します。信徒がみことばに従って味わった体験談や、神様が行われた驚くべきみわざを互いに分かち合うとき、教会共同体はみことばの土台の上に堅く建てられていきます。そのような中で、教会はどんなことにも耐えられるよう成長していくのです。QTをする生活は、根本的に一致していく人生です。信仰は共同体との相互作用を通して育ちます。共同体に属さないクリスチャンはいません。私たちには自分を成長させてくれる共同体が必要です。霊的な同伴者のグループであるQTの集いは、みことばによって互いの信仰を成長させ合う場です。個人の敬虔訓練として始まったQTは、スモールグループの中でみことば中心の共同体の霊性を求めていく場です。
霊性を教化し、維持するための教会プログラム
教会の中に多様なプログラムがありますが、プログラムが終わった後に直面する問題は、後続プログラムがしっかりしていないことです。プログラムで得た感動が続き、保たれ、生活の中で実を結ぶためには、プログラム後の処置が必要です。QTは、教会の中で行われるプログラムを終えた信徒たちを主のことばに立ち返らせます。さらに、プログラムで受けた感動とともに、神様にさらに近づくことによって、信仰と霊性がさらに深まるよう助けてくれます。信徒たちがQTによって自身の霊的な生活にさらに重い責任を負うとき、教会はより多くの相互的な働きをすることができます。

3. ポストモダン時代に対応するための方法
ポストモダニズムの特徴が強いこの時代に、キリスト教はどのように対応すべきでしょうか。イエス・キリストと福音の唯一性が拒まれ、真理を固守しようとする態度をエゴや偽善だと言う時代の中で、信仰者はどのように振るまうべきでしょうか。キリスト教は、ポストモダン時代の中でアイデンティティを守りながら、時代との関連性を効果的に保つ方法について悩み、その道を提示しなければなりません。ポストモダニズム時代の中でキリスト教が対応できる方法はいろいろありますが、ここではQTと関連して二つの提案をしたいと思います。
自分だけの特別な物語に忠実に
ポストモダン時代の人々は、普遍的で、だれにでも益となる理論や知識はないと考え、客観的な真理や解釈、道徳的な標準もあるはずがないと主張します。ですから、そのような状況で、キリスト教は、すべてのことを包括する普遍的な基準として福音を示すよりは、キリスト教だけが持つ固有の特徴を示すことにより、キリスト教信仰の正当性を主張しなければなりません。言い換えれば、キリスト教は、普遍的な正当性に基づくよりは、キリスト教に立っている者の独自の物語に基づいて福音を弁証しなければならないのです。幸いなことに、ポストモダンの流れは、自分だけの固有な物語について興味を示します。ですから、キリスト教の信仰の同等性を強調する方法で弁証する必要があります。キリスト教がポストモダン社会で生き残るためには、自身の存在を可能にした物語、つまり救いと救いの確信、救われた者の祝福された人生を人々の前で明らかにしなければなりません。ダビデが自分だけの固有の方法でゴリヤテに対抗した時のように、キリスト教は自分だけが持っている福音に対する確信をもって世に向かわなければなりません。
みことばを実践する人生を示す
キリスト教は、変えられた人生を通して福音の力を表さなければなりません。なぜなら、ポストモダン時代に人々が真に願っていることは、神様との人格的な経験、神様を通して人生が変わる経験だからです。ポストモダン時代には、聖書の価値や権威を一方的に人々に主張することはできません。ポストモダン時代に生きる人々が聞きたい福音の真理は、神様が抽象的で非人格的な方法で私たちのために働かれるというのではなく、神様がイエス様にあって人格的に私たちとともにおられるという事実です。ですから、キリスト教は、自分の経験を根拠に福音を提案し、福音が私たち自身や世界に対する理解にふさわしいものであることを示さなければなりません。みことばによって変えられた人生を通して、世が聖書の力を目にすることができるようにしなければなりません。イエス様を信じる教会と家庭がどのように神の国を実現していくのかを示すのです。このような事実を総合して見るとき、QTは、福音の本質と力を世に証しする最善の方法と言えるでしょう。

 

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