健全な自己表現

   神の夢がある家庭 聖書的な妻 講座[第20課]
 
トーチ・トリニティ神学大学 教授 イ・キボク


Introduction
創造主なる神様は、私たち一人ひとりを唯一無二の尊い存在として創造されました。目を造り、耳を造り、口を造られた神様は、私たちを見、聞き、話して表現する自主的な人格体として創造されました。ですから、健全な家庭では夫でも妻でも、また幼い子どもたちも、自分の考えや気持ち、意見などを恐れることなく表現し、意思疎通方法を学びながら成長することができます。

1. 健全な人は自分のことを正確に表現する
『境界線』(地引網出版)という本で、「堂々と自分の意志を明らかにしながら生きる秘訣」について、相手(配偶者)との間で葛藤が生じたとき、正直に話す方法を学ばなければならないと言っています。それは、自分自身の感情、考え、行動、願いなどを、すべて自分自身の宝物と考え、勇敢に表現する力を意味します。また、自分の表現したことに対して責任まで持てる人が、健全な人だと言っています。ですから、健全な人は、配偶者に自分の感情を押し付けたり、恨んだり、責任転嫁したりせず、表現することができると言っています。これまで私たちは、「良い人シンドローム」に陥って、自分の意見や感情は心の奥に押し込み、無条件に我慢し、譲る人が良い人だと考えてきました。そのため、心の中には幸福感の代わりに憂うつや無気力、恨みなどがたまっていました。しかし、それでは夫婦間にも有益よりは疎外感や冷淡さを深めるだけです。何が何でも我慢し、譲ってあげるのが良いわけではありません。そんな妻は、夫が自分のことをわかってくれないので、自分の殻の中に閉じこもって、「やめた」「もう、いいや」「私だけ我慢すればいいのよ」と背を向ける態度も捨てるべきです。それは、とても不健全で、非効率的な態度です。心の中に誤解が生じたらなら、対話によって解かなければなりません。夫とさらに深い愛の関係を願うなら、勇敢に葛藤を解いていかなければなりません。心にためておかないで、その日その日、解くようにしなければなりません。もう一度「怒っても、罪を犯してはなりません。日が暮れるまで憤ったままでいてはいけません。悪魔に機会を与えないようにしなさい」(エペ 4:26~27)という聖書のみことばを黙想しましょう。怒りが生じたたとき、心にためておいたり、翌日に先延ばしにしたりすれば、悪魔に機会を与えることになります。怒りがたまり続ければ、いつの日か、「夫は私のことをわかってくれない」と寂しくなり、夫との間に壁ができ、関係はだんだんさらに冷めていきます。そうすれば、悪魔が夫婦の愛をむしばみ、機会を得るというのです。夫との愛を当然のことと思い、油断しないようにしましょう。少しずつ愛情が冷めていけば、いつか取り返しのつかない状態になりかねません。愛を守るためには、警戒心を持って目覚めていなければなりません。ですから、ふだんから小さな誤解や葛藤が生じたら、対話を通してすぐに解く方法を学んでください。そのために、妻として自分の感情や願いを夫にはっきりと表現する方法を学び、訓練しましょう。

2. アイメッセージを学びましょう
健全な自己表現と自己主張の方法の中に、「アイメッセージ」というものがあります。これは、「ユーメッセージ」の反対の表現法です。「ユーメッセージ」は「あなた」という言葉で始まり、相手(配偶者)を攻撃(非難)する態度が伝わりやすくなります。反面、「アイメッセージ」は、配偶者を非難せず、配偶者の行動と関連した自分自身の考えや感情をうまく表現する対話法です。「私」を中心とする表現を用い、私の気持ちや考えを開放的で正直でありながら、非攻撃的に伝えることにより、夫との葛藤の解消と、問題解決にとても効果的です。「アイメッセージ」は、以下のようなものです。
1)発生した状況や出来事を客観的かつ正確に伝えます。たとえば、「こうこうしていた時……」という言葉で始める表現です。このときに大切なことは、非難が含まれないようにすることです。また、誇張しないようにしなければなりません。「あなたはいつも……」と一般化して誇張する表現は良くありません。人は、非難されたら自己防御が発生し、正直な対話ができなくなります。ですから、大切なことは、非難したり相手のせいにしたりせず、いったん、発生した状況を正確に伝えることです。
2)最初の言葉に続けて、そのような出来事や状況で感じた自分の感情を述べて、伝えます。たとえば、「そのとき、私はとても寂しかった」「そんなことがあって、とても戸惑って、気が動転した」のように、自分の心の状態を表現します。このときも大切なことは、恨み言や非難の言葉を控えることです。それとなく恨みをこめた表現も避けなければなりません。そのようにして夫に強要したり、コントロールしたりしてはなりません。できるだけ自分自身の正直な感情をさぐり、表現するのです。人はだれでも、自分の感情を打ち明ければ、心がいっそう落ち着くものです。
3)最後に、自分が夫に求めることをはっきりと伝えます。(しかし、この段階を省略することも、とても良いことです。一つ目と二つ目の自己表現だけを伝えても、十分であることもあるからです。)
この三つ目の段階は、たとえば、次のような言葉で始めることができます。「だから、こうしたらいいと思うの」「だから、これからは、こうしてくれたら、うれしいわ」という表現です。すなわち、良い提案や代案を伝えるのです。大切なことは、私はアイデアを出すだけで、それを夫が必ずしてくれるよう強要したり、コントロールしたりしないことです。自分の願いをただ伝えて終えるのです。

3. 「直面的なアイメッセージ」と「肯定的なアイメッセージ」
1)直面的なアイメッセージ  これは、おもに葛藤のある状況で腹が立ったときや、否定的な感情が込み上げてくるときに、自分自身をうまく伝える表現法です。大切なことは、夫を非難することなく、自分の怒りや挫折感などを伝えることです。自分の心を伝えた後に夫が変わらなくても、強要しない態度を保たなければなりません。私がうまく表現して、夫を必ず変えさせようという考えを捨てなければなりません。
大事なことは、自分の感情や挫折感を表現することです。自分の感情を心にしまっておかないで、表現するのです。時が来れば、神様が夫を変えてくださいます。しかし、「アイメッセージ」を通して自分の心を伝えたなら、夫は非難されたと思うことなく、妻の心を理解できます。それで、申し訳ないと気持ちになり、次からはもっとうまくやろうと思うかもしれません。以下のいくつかの例を通して「直面的なアイメッセージ」を訓練しましょう。三つ目の文章は省いても問題がありません。

例1 「この前、私の誕生日を前もって言っておいたのに、あなたが覚えていなかったから」
「なんだか寂しかったな」「あなたに大切にされていないみたいで、悲しくなっちゃった」
「だから、きょうでも私とどこか雰囲気のいい所に連れていってくれたら、うれしいな」

例2 「きのう、私の実家に行こうって言った時、あなたが行こうとしないから」
「寂しい気持ちになって、つらかったわ。あなたが私の実家を嫌ってるんじゃないかと思ったわ」
「だから、今週末にでも一度、母を誘って食事にでも行ってくれたら、うれしいんだけど……」

例3 「さっき、人の前で私を馬鹿にするようなこと言ったでしょう」
「ちょっと腹が立った」「私が大切にされていなくて、無視されているように感じたわ」
「だから、ほかの人の前で私を馬鹿にするようなことを言わないでほしいの」

例4 「いっしょに教会に行こうって言っても、あなたがいやがるたびに」
「寂しい気持ちになるの。ほかの夫婦がいっしょに礼拝をささげているのを見ると、うらやましい。私の願いを大切に思ってくれてないように感じるし」
「だから、今週は私といっしょに教会に行こうよ。そうしてくれたら、とってもうれしいわ」

例5 「あなた、私がしなければならない家事がたくさんあるんだけど」
「あなたは関心もないみたいで、寂しいし、からだもきついのよ」
「これだけでも手伝ってくれる? そうしてくれたら、本当に助かるわ」

例6 「あなた、あなたがさっき腹を立てたから」
「私、どうしたらいいかわからないし、恐かったの」
「だから、怒りを爆発させないで、落ち着いて話してくれたら、あなたのことをもっと助けられると思うの」

最近、夫との関係で起こった出来事のうち、つらかたったり、腹が立った状況を「直面的なアイメッセージ」を用いて、一度、紙に書いてみましょう。そして、教会の姉妹にそれを読んで分かち合ってみましょう。「アイメッセージ」を学び、訓練する時間です。非難が含まれないように気をつけましょう。
2)「肯定的なアイメッセージ」  「肯定的なアイメッセージ」とは、夫に対してふだん感謝していることを伝える方法です。私たちは、感謝することについては、何も言わないで素通りしがちです。心の中では感謝していても、表現しないのです。そのため、感謝することが減っていきます。感謝は、必ず表現しなければなりません。
驚いたことに、「肯定的なアイメッセージ」を通して、具体的に感謝を伝えれば、むしろ夫が変わります。葛藤も減り、かえって「直面的なアイメッセージ」を用いることも減っていきます。「肯定的なアイメッセージ」を練習して、いろいろな場面で活用してみてください。ここでは、三つ目の文章は必要ありません。

例1 「この前、あなたがうちの母にお小遣いを渡してくれたとき」
「うれしかった。感動しちゃった。ありがとう」

例2 「うちの母に電話してくれて」
「本当にありがとう」「忙しいのに、母のことを覚えてくれて、ありがとう」

例3 「最近、会社のことで忙しそうなのに、私の誕生日を忘れないで覚えてくれて」
「本当にうれしかった。思いやりのある人だなって思った」

例4 「さっき、子どもたちの前で私の肩をもってくれたとき」
「ちょっと驚いたけど、感動した。本当に良い夫を持ったなって思った。ありがとう」

例5 「きょう、私といっしょに教会に行って礼拝をささげてくれて」
「本当にうれしかった。あなたのことを誇らしく思ったわ。ありがとう」

例6 「あなたが誠実に仕事をしてくれるおかげで、お給料をもらうたびに」
「私たち家族みんな、本当に感謝しているのよ。責任感を持って働いてくれて、ありがとう」

「肯定的なアイメッセージ」を用いて、夫に対して感謝していることを紙に書いてみましょう。そして、教会の姉妹にそれを分かち合ってみましょう。これまで感謝できなかった内容も考えてみましょう。そして実際に感謝する内容を「肯定的なアイメッセージ」を用いて、言葉で、手紙で、メールで夫に伝えてみましょう。夫は感動するに違いありません。


祈りましょう
神様。私を歴史上、唯一無二の存在に創造してくださり、感謝します。また、私を救うために、ひとり子であるイエス様を十字架で犠牲にしてまで救い出し、愛してくださり、感謝します。私に与えられたすべての財産、才能、資質を多くの人を救うために用いてください。父なる神様。今まであふれるほどの恵みを与えてくださったのに、感謝できなかったことを悔い改めます。私にいのちを与え、健康を与え、家庭を与え、日ごとの糧を与えてくださり、感謝します。夫にも感謝を表現し、伝えたいと思います。私たちの家庭に互いへの感謝があふれるよう助けてください。イエス様の御名によってお祈りします。アーメン。

イ・キボク
トーチ・トリニティ神学大学院、キリスト教カウンセリング学教授。オンヌリ教会協力牧師、ツラノバイブルカレッジ家庭ミニストリーディレクター。ラブソナタ講師。

 

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