キリストのからだ(教会) 教会、神秘的な共同体

   クリスチャン人生論 18
 
ユ・スンウォン デトロイト韓国人連合長老教会 主任牧師


教会のアイデンティティ:エクレーシア
教会を意味するギリシャ語は「エクレーシア」(evkklhsi,a)で、「呼び出して集めた人々」という意味です。だれが呼び出して集めたのでしょうか。それは神です。集められたのは「聖徒として召され、キリスト・イエスにあって聖なるものとされた」(Ⅰコリ 1:2)者たちです。
罪によって全世界が悪に染まると、神は人類を救うためにアブラハムを呼び出し、彼とその子孫と契約を結ばれました。しかし、イスラエルはその契約を誠実に守りませんでした。そのため、神は預言者たちを通して新しい契約を立てることを約束され(エレ 31:31、エゼ 37:26~28)、イエスを遣わし、その血潮によって「新しい契約」を結ばれました(ルカ 22:20、Ⅰコリ 11:25)。神はこの「新しい契約」の中で再びご自分の民を造られます。それが「エクレーシア」です。旧約時代にはイスラエルが神の民でしたが、新約時代には教会が神の民です。ですから、教会は建物ではなく人です。新約聖書で「教会」が建物にたとえられたことはありますが、建物そのものを指したことは一度もありません。教会は人なのです。
ペテロがイエスのことを「神の子キリスト」と告白すると、イエスは「あなたはペテロです。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てます。ハデスの門もそれには打ち勝てません」(マタ 16:18)と宣言されました。人間ペテロの上に教会を建てるという意味ではありません。彼の告白の上に教会を建てるという意味です。「イエス・キリスト」という信仰告白が教会の礎であり、岩です。イエスはこれを説明するために「岩」という意味のシモンの別名、ペテロ(ケパ)を用いられたのです。
イエスはキリストと告白する全世界の教会は一つです。すべての時代と地域を包括する普遍教会(Universal Church)が神の民です。しかし、この普遍教会は必ず生活空間である地域で時代的・文化的特性を反映した個別の教会として存在します。地域教会は普遍教会の一部分であり、ともに礼拝し、ともに使命を果たす地域教会の中に普遍教会があります。

教会の本質:キリストのからだ
パウロは単数名詞を用いて、教会を「ひとりの人」と呼びます。「二つのもの(ユダヤ人と異邦人) をご自身において新しいひとりの人に造り上げて」(エペ 2:15)。全世界の普遍教会が「ひとりの人」であり、特定空間に位置する地域教会も「ひとりの人」です。その理由は、教会がキリストのからだだからです。
教会のかしらは、キリストです(エペ 1:22、コロ 1:18)。ですから、教会はキリストのからだです(Ⅰコリ 12:27)。「なぜなら、私たちはみな、ユダヤ人もギリシヤ人も、奴隷も自由人も、一つのからだとなるように、一つの御霊によってバプテスマを受け、そしてすべての者が一つの御霊を飲む者とされたからです」(Ⅰコリ 12:13)。神の御霊であり、キリストの霊であられる聖霊も、一つです(エペ 4:4)。しかし、その聖霊はクリスチャン一人ひとりの中に住まわれます(Ⅰコリ 6:19)。クリスチャンはそれぞれ一つの聖霊を飲みました。だからといって、万物よりも大きな神の御霊が分解するわけではなく、みな合わせて一つのからだです。
さらに、教会はキリストご自身です。問題の多いコリント教会にパウロが送った手紙にこうあります。「からだが一つでも、それに多くの部分があり、からだの部分はたとい多くあっても、その全部が一つのからだであるように、キリストもそれと同様です」(Ⅰコリ 12:12)。「教会」という単語が出てくると期待される部分で「キリスト」と言っています。教会はキリストなのです。キリストは、神が人間のからだでこの地に来られた(受肉された)方であるため、キリストのからだである教会は今、「受肉の延長」(extension of incarnation)として、この地に存在していると言うことができます。神は問題の多い人間によって構成された教会を、キリストと呼ばれるのです。
パウロは回心する前に、イエスを信じて従う人々である教会を迫害しました。すると、主が彼の前に現れ「なぜわたしを迫害するのか」(使 9:4)と言われました。教会をキリストご自身と考えておられたからです。これにより、パウロは教会はキリストのからだであるということをはっきりと悟ったのです。
この真実に忠実であれば、「教会のないクリスチャン」はいません。イエスを信じているのに教会には属さないということは、クリスチャンなのにキリストとは関係ないと言っているのと同じです。「わたしはぶどうの木で、あなたがたは枝です……わたしを離れては、あなたがたは何もすることができないからです。だれでも、もしわたしにとどまっていなければ、枝のように投げ捨てられて、枯れます。人々はそれを寄せ集めて火に投げ込むので、それは燃えてしまいます」(ヨハ 15:5~6)。
木から落ちた枝は死にます。冬になると、木についている枝も、地に落ちている枝も、死んでいるように見えます。しかし、春になると両者の差がはっきりと現れます。一方にはいのちがあり、もう一方にはいのちがないからです。一方は芽を出し、葉が出て実を結びますが、もう一方はそのまま枯れて、土の上で雨に濡れ、いつか腐ってしまいます。
しかし神は、寒い冬に幹とつながっていても、地面に落ちている枝と何の違いもなさそうな、枯れた枝のような存在を、聖なるキリストのからだと呼ばれます。コリントの教会の問題の多かった人々を、キリストのからだの器官と呼ばれます。子どものように争い、性的に不道徳で、聖餐式ではぶどう酒に酔い、偶像のいけにえの問題で混乱していた人々を、パウロは「コリントにある神の教会へ……聖徒として召され、キリスト・イエスにあって聖なるものとされた方々」(Ⅰコリ 1:2)と呼んでいます。これはお世辞ではありません。事実だからです。枯れてよじれていますが、木にくっついているこの枝たちが聖なる民であり、聖徒です。神の教会です。イエスをキリストと告白し、救い主として迎えたからです。
もし、自分はとても高潔だから汚れたクリスチャンとはつき合えないと言う人がいれば、その人は自分がキリストよりも聖いと言っているのと同じです。それは高慢です。わかっているようで、実はわかっていない無知な人です。私たちは絶対にキリストと離れてはなりません。3世紀のカルタゴの監督であったキプリアヌスは「教会を母として仕えないなら、神を父として迎えることはできない」と言っています。

現実的特性:罪人であり、聖なる存在
教会は罪を赦されて聖徒として召された「キリストのからだ」ですが、まだ十分に聖化されていないため、いまだ罪の影響下にある社会学的人間集団です。ここに教会の現実的な特徴があります。教会は赦された罪人の集まりです。そのため、コリントの教会の情けない姿は、事実上、現教会の姿なのです。
私たちがクリスチャンになったのは、世と根本的に異なる、傷のない世捨て人の境地に至ったからではありません。私たちが受けるバプテスマは、悟りの境地に入った人に、「完了」というスタンプを押すようなことではないのです。そのような資格や力が自分にないことを悟り、イエス・キリストにあって神の恵みがなければ生きることができないという「弱さの告白」として受けるのがバプテスマです。そのようにして私たちは教会になります。教会はこのように、未熟な人々によって構成されています。そのため、教会もまた程度の差こそあれ、この世の罪人たちの間に起きるようなことが発生します。だからこそ、互いに赦し、愛し合わなければならないのです(マタ 6:12、エペ 4:32参照)。
教会はキリストのからだであると同時に、赦された罪人たちの集まりであるため、これまでの歴史の中で、教会が聖く完全なキリストのからだという理想に行き着いたことはありません。ですが、教会が教会でなくなるほど腐敗し、放っておかれたこともありません。神が教会を支えておられるからです。主が再び来られる時まで、この地の教会は両者の緊張の中にいます。私たちはこの緊張の中で成功を収めなければなりません。

教会の使命:宣教
キリストは未熟な共同体を世に遣わされます。「宣教」と翻訳された「mission」は、ラテン語「misit」から派生しました。その意味は「遣わす」です。「父がわたしを遣わしたように、わたしもあなたがたを遣わします」(ヨハ 20:21)。教会は世と区別され、召されて集まった「エクレーシア」ですが、再び世の中に「行け」と遣わされる「ディアスポラ」(diaspora, 散らされる)です。世に遣わされ、世の中で生き、世でキリストが行われたことを行う、キリストのからだなのです。
「しかし、あなたがたは、選ばれた種族、王である祭司、聖なる国民、神の所有とされた民です。それは、あなたがたを、やみの中から、ご自分の驚くべき光の中に招いてくださった方のすばらしいみわざを、あなたがたが宣べ伝えるためなのです」(Ⅰペテ 2:9)。教会はキリストの広報大使なのです。
教会は必然的に「宣教的教会」(missional church)です。世は本質上、教会に好意を持ってはいません(マタ 5:11~12参照)。しかし、イエスは弟子たちをその敵対的な世に欠かせない塩であり、光だと語られます(マタ 5:13~14)。塩と光になれと命じているのではありません。「あなたがたは、地の塩です」「世界の光です」と断言しておられます。これが教会のアイデンティティです。スイスの神学者エミール・ブルンナー(Emil Brunner)の名言です。「火が燃えることによって存在するように、教会は使命によって存在します。使命がなければ、教会もありません」


教会はキリストご自身です。
キリストがこの地に受肉され、
教会はその受肉の延長として存在します。

教会は罪の赦しを受けて「聖徒」と呼ばれますが、
完全に聖化されていない、罪の性質を持つ「罪人」であるため、教会は両者の緊張の中にいます。

 

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