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信仰は告白によって評価される ① ［マタイの福音書16章13～17節］

マタイの福音書の恵み 96

オンヌリ教会前主任牧師　故ハ･ヨンジョ

｢さて、ピリポ・カイザリヤの地方に行かれたとき、
イエスは弟子たちに尋ねて言われた。
『人々は人の子をだれだと言っていますか』」（マタ 16:13）。

｢さて、ピリポ・カイザリヤの地方に行かれたとき、イエスは弟子たちに尋ねて言われた。『人々は人の子をだれだと言っていますか』」（マタ 16:13）。
ここでイエス様が投じられたこの質問は、イエス様の歩みの上で最も重要なターニングポイントになります。この質問の後から、イエス様は受難の道を歩むことになるからです。「イエス・キリストとは、どんな人か」「イエス様は人々からどのように理解されているのか」というのが、この質問のポイントです。
この質問にはとても重要な意味があります。なぜなら、真の信仰は真の告白から生まれるからです。告白のない信仰は、信仰とは言えません。私たちの救いは告白から始まります。「あなたは生ける神の御子キリストです。私はこれを信じます」という告白から教会が始まり、救いが始まり、永遠が始まるのです。
イエス様の質問を受けて、弟子たちはイエス様に対する一般的な見解を述べました。
｢バプテスマのヨハネだと言う人もあり、エリヤだと言う人もあります。またほかの人たちはエレミヤだとか、また預言者のひとりだとも言っています」（マタ 16:14）。
これを聞いたイエス様は、さらに具体的で本質的な質問をされます。これがイエス様の真の質問でした。
｢あなたがたは、わたしをだれだと言いますか」（マタ 16:15）。
私たちは、この質問から二つの重要な内容を見いだすことができます。一つ目は、イエス様がなぜこの質問をそれほど重要視されたのかということであり、二つ目は、この質問に対してペテロが重要な告白をしましたが、その告白の内容がどういうものかということです。

神の国の真理を宣言されたイエス様
まず、イエス様がこの質問を重要視された理由について考えてみましょう。この質問には、イエス様の生涯と働きの方向性を整理する意味が含まれています。イエス様は山上の教えを終えて山から下り、本格的に働きを始められました。ツァラアトの人をいやし、悪霊につかれた人から悪霊を追い出し、5千人に食べ物を与え、死んだ者をも生き返らせました。そして、みことばを宣言し、神の国の真理を教えられました。
人々はイエス様がなされたことにショックを受け、そして、人々の心の中に葛藤が起こりました。「彼は歴史に現れた英雄、聖者なのだろうか。それとも、彼のことばどおり、神の御子なのだろうか」イエス様は明らかにふつうの人ではありませんでした。しかし、イエス様が神の御子だと信じることも容易ではありませんでした。天から来た人だとも、ふつうの人だとも言えなかったのです。
弟子たちは、イエス様に対する人々の見方を三つに整理して報告しました。ある人々はバプテスマのヨハネだと言いました。ヘロデ王がその一人です。ヘロデ王はイエス様を恐れていました。なぜなら、バプテスマのヨハネがよみがえったのだと思ったからです。イエス様のメッセージの中に、荒野で叫んだヨハネのメッセージと同じだと感じるものがあったからです。
またある人々は、イエス様を見てエリヤだと言いました。その昔、カルメル山で、エリヤはバアルの預言者たちと対決しました。バアルの預言者たちが一日中、自分の身を傷つけてまでバアルに向かって叫び、天から火を下らせてくださるよう祈りましたが、火は下りませんでした。しかし、エリヤが静かに神様に祈ると、天から火が降ってきて祭壇を焼き尽くしました。また、エリヤがカルメル山でひざまずいて祈ると、三年半もの間、降らなかった雨が降り始めました。人々は、イエス様の奇蹟から、このようなエリヤを思い浮かべました。
また別の人々は、イエス様のことをエレミヤや預言者のひとりだと考えました。彼らは、イエス様の姿に、エレミヤの嘆きや涙、民に対する愛情を見ました。
きょうのみことばにはありませんが、イエス様の兄弟や親戚の人々は、イエス様が少し狂っていると考えていました。また、当時の宗教指導者たちは、イエス様の奇蹟を否定することができず、イエス様を神の御子だと告白することもできないので、悪霊どものかしらベルゼブルによって奇蹟を行う人だと言いました。

仕えるために来られたイエス様
次に、この質問は、イエス様ご自身の生涯と働きの本質を明らかにする意味をもつ質問です。イエス様は、世で生きるために来られた方ではありません。ほとんどの人は、生まれてすぐに生きるためにあがきます。少しでも長く生き、もっと格好良く豊かに生きるために、あくせくします。しかし、イエス様は最初から死ぬために来られた方です。イエス様は義人のためではなく、罪人のために来られました。人々から仕えられるためではなく仕えるために、そして、ご自分のいのちを全人類の贖いの供え物とするために来られました。イエス様の生涯と働きのすべての意味がここに集中しているのです。
しかし多くの人々は、イエス様を単に火のメッセージを投げかける人、奇蹟を行う人、悲しみと人間的な涙と愛情を持った人として理解しました。イエス様に対する彼らの理解は、不完全で部分的でした。彼らはまだ、イエス様が神の御子であり、ダビデの子孫から出た人類のメシヤだと告白することができませんでした。ですから、イエス様は、ご自分の生涯と働きの本質を明らかにするために、この質問を投げかけられたのです。

心で告白する信仰
イエス様がこのような質問をされたもう一つの理由は、他人の告白ではなく、自分自身の告白が重要だということを教えるためです。イエス様は最初に「人々は人の子をだれだと言っていますか」と聞かれました。しかし、イエス様の目的はそこにあったのではありません。イエス様は、世の人々の考えについては、さほど重要視されませんでした。イエス様の真の関心は、弟子たちにありました。
一般的に人々は、他人の話をするときは気軽に話します。しかし、自分の話をするときは、苦しみを感じます。とても賢く、話し上手な人たちを見ると、自分についての話はありません。いつも人の話だけです。自分のことを打ち明けるのが怖いのです。イエス様の関心は、世の人ではなく、弟子たちにありました。イエス様は私たちの口から出る告白、私たちの心から出る告白を聞きたいと思っておられます。愛の告白も、他人の口からではなく、私が愛する人の口から聞かなければ意味がありません。
同じように、私が神様にどんな告白をするかが重要です。「主は、生ける神の御子キリストです」という告白がなければなりません。信仰告白も、愛の告白も、心からしなければなりません。胸が熱くなり、涙が流れ、天のその栄光が自分のからだいっぱいに満ちなければなりません。「あなたはキリストです。神の御子です。私はこのことを信じます。私はあなたの御名の前でひざまずき、両手を掲げてほめたたえ、礼拝します」という告白がなければなりません。
｢人々はわたしをだれだと言っていますか」という問いに、「バプテスマのヨハネ、エリヤ、エレミヤ、あるいは預言者だと言っています」と気軽に答えた弟子たちは、イエス様が「あなたがたは、わたしをだれだと言いますか」と問われて戸惑いました。このときペテロが進み出て告白しました。しかし、このことばはペテロが聖霊に満たされて、思わず口にした言葉であって、準備されていたものではありませんでした。その理由は、この告白の後、ペテロがイエス様から突然「下がれ。サタン」と叱られるのを見ればわかります。弟子たちまでもイエス様の本質を理解できないでいたとき、聖霊がペテロに臨み、ペテロにクリスチャン全体を代表する驚くべき告白をさせたのです。

（来月号につづく）

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