聖霊の力と体験

   クリスチャン人生論 15
 
御霊の賜物と実、そして力
ユ・スンウォン デトロイト韓国人連合長老教会 主任牧師


絶望の嘆きから希望の嘆きに
堕落した人間の霊的無能は、神の嘆きの材料であり、人間にとっては絶望の理由です。神はノアの時代の水のさばき以降、人間の道徳的不能状態を痛切に嘆かれました。「人の心の思い計ることは、初めから悪であるからだ」(創 8:21)。パリサイ人であったパウロは、律法の戒めをすべて守ることが神に喜ばれることだと考え、律法を守ろうと努力しましたが、このように絶叫しました。「私は、ほんとうにみじめな人間です。だれがこの死の、からだから、私を救い出してくれるのでしょうか」(ロマ 7:24)。人間は、罪の性質に従って行動する弱い存在です。そのため、神は律法を石の板ではなく、人の心に書きしるすと約束されました。「わたしはわたしの律法を彼らの中に置き、彼らの心にこれを書きしるす。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる」(エレ 31:33)。神が人の心に入られ、人を変えることにされたのです。「わたしの霊をあなたがたのうちに授け、わたしのおきてに従って歩ませ、わたしの定めを守り行わせる」(エゼ 36:27)。神の霊、つまり聖霊は私たちのうちにおられ、非常に無能で無力な私たちに、みことばに従って善を行う力を与えてくださるのです。
完全不能の絶叫(「私は、ほんとうにみじめな人間です」、ロマ 7:24)が、喜びの嘆き(「私たちの主イエス・キリストのゆえに、ただ神に感謝します」、ロマ 7:25)に変わる理由は、この聖霊の力にあります。「肉によって無力になったため、律法にはできなくなっていることを、神はしてくださいました……御霊に従って歩む私たちの中に、律法の要求が全うされるためなのです」(ロマ 8:3~4)。このような聖霊の力は、賜物と実で現れます。

御霊の賜物についての誤解と理解
「御霊の賜物」と言うとき、賜物と翻訳されたギリシャ語は“カリスマ”(ca,risma)です。最近はある人に内在する「大衆を惹きつける資質」を指す単語になりましたが、本来は「恵みとして与えられたもの」、つまり「恵みのプレゼント」という意味です。神の賜物という言葉は、救いと永遠のいのちを指すときにも用いられました(ロマ 6:23)。結婚も独身もすべて神の賜物であり(Ⅰコリ 7:7)、危機から救ってくださる神の祈りの応答も賜物です(Ⅱコリ 1:11)。つまり、「御霊の賜物」は、神が聖霊を通して神の国と教会のために与える「恵みのプレゼント」なのです。
コリント人への手紙第一では、いろいろな御霊の賜物に言及しています。知恵のことば、知識のことば、信仰、いやしの賜物、奇蹟を行う力、預言、霊を見分ける力、異言、異言を解き明かす力などです(Ⅰコリ 12:8~10)。それに対し、ローマ人への手紙では「私たちは、与えられた恵みに従って、異なった賜物を持っている」と述べた後、預言、奉仕(ディアコニアdiakoni,a)、教え、勧め、分け与え、指導、慈善などを挙げています(ロマ 12:6~8)。ここで、コリント人への手紙第一とローマ人の手紙に共通して述べられているのは、預言だけです。コリント人への手紙第一で多く論じられている異言については、ローマ人への手紙では全く触れられていません。コリント人への手紙第一で述べられた賜物が理解しがたく、しっくりこなかった人も、ローマ人への手紙に出てくる賜物には全く違和感がありません。
この2つの教会の賜物を比較すると、必ずしも超自然的なものだけが御霊の賜物でないことがわかります。ローマ人への手紙は、パウロがまだ行ったことのない教会に、自分が伝えた福音と生き方について語る手紙です。そのため、特定の問題を扱うコリント人への手紙第一やガラテヤ人への手紙のような特殊性はあまりありません。これらの書簡に比べ、ローマ人への手紙の内容はより普遍的です。ローマ人への手紙は、すべての教会を念頭に置いた、福音と生き方と働きについての記述であると考えてもよいでしょう。そのため、ローマ人への手紙で挙げられた賜物が、コリント人への手紙第一で挙げられた賜物よりも、教会に適用するときにより一般的だと感じるかもしれません。
エペソ人への手紙では、教会の組織が大きくなるにつれ、賜物の意味が職務に近づいています。「こうして、キリストご自身が、ある人を使徒、ある人を預言者、ある人を伝道者、ある人を牧師また教師として、お立てになったのです。それは、聖徒たちを整えて奉仕の働きをさせ、キリストのからだを建て上げるためであり」(エペ 4:11~12)。ここではこのような職務がキリストの賜物です(エペ 4:7~8)。
このように、聖書は、多少特異な霊的現象から、日常的なものに至るまで、すべてのものを神の恵みで与えられたプレゼント、つまり、御霊の賜物であると記しています。パウロが、教会によって異なった賜物について述べたように、賜物は共同体の状況と時代によって変わります。コリント教会では問題になるほどの話題であっても、ローマ教会では全く触れられていないものもあり、以前は何度も言及されたことでも、エペソ人への手紙を記述するときには全く触れられていないものもあります。新約聖書には言及されていませんが、新しいチャレンジと使命に直面しながら、神が私たちの時代の教会に与えられた新しい賜物もあります。賛美のための楽器演奏、福音伝道を助けるメディア技術、各種プログラムの開発や企画力など、御霊の賜物は主が再び来られる日まで、時代や地域、文化の必要に応じて、福音の中で無限に展開されるのです。
御霊の賜物は、教会を正しく成長させ、神の国を建てるため、教会共同体の益のために、神が与えられたすべての特質、才能、務め、機能を含みます。神の国と教会のために神が教会とそれぞれの人に与えられたものは、すべて御霊の賜物です。そのため、その賜物を認識し、感謝し、与えられた目的にふさわしく用いなければなりません。
御霊の賜物を与える目的
重要なのは、賜物の種類ではなく、すべての賜物の目的です。「賜物(カリスマ)にはいろいろの種類がありますが、御霊は同じ御霊です。奉仕(ディアコニア)にはいろいろの種類がありますが、主は同じ主です。働き(エネルゲーマ evne,rghma、“活動、効力”という意味)にはいろいろの種類がありますが、神はすべての人の中ですべての働きをなさる同じ神です。しかし、みなの益となるために、おのおのに御霊の現れが与えられているのです」(Ⅰコリ 12:4~7)。「賜物」が「奉仕」をつくり、「奉仕」にはそれにふさわしい「働き」(活動)があるという意味です。その賜物の目的は、究極的には「みなの益となるため」(Ⅰコリ 12:7)であると明示されています。パウロは、自分の益を求めず、ほかの人の益を求めなさいと語ります(Ⅰコリ 10:24)。御霊の賜物は、ほかの人の益となるために、神が教会と私たちに与えられた恵みのプレゼントです。言い換えると、御霊の賜物は、自分を誇るための力ではなく、教会を建て上げる奉仕をするために与えられたプレゼントなのです。利己的に賜物を用いる瞬間から、堕落が始まります。多くの指導者がつまずいたのは、賜物を自分のために乱用した時からです。「その日には、大ぜいの者がわたしに言うでしょう。『主よ、主よ。私たちは……悪霊を追い出し、あなたの名によって奇蹟をたくさん行ったではありませんか。』しかし、その時、わたしは彼らにこう宣告します。『わたしはあなたがたを全然知らない。不法をなす者ども。わたしから離れて行け』」(マタ 7:22~23)。賜物は、階級章や勲章ではありません。「つぶやかないで、互いに親切にもてなし合いなさい。それぞれが賜物を受けているのですから、神のさまざまな恵みの良い管理者として、その賜物を用いて、互いに仕え合いなさい」(Ⅰペテ 4:9~10)。賜物の核心は、何を持っているかではなく、それによって神と教会と世のために何をしながらどのように生きるかにあります。

聖霊の実が力の核心
賜物を受けた私たちに要求される重要なことは、聖霊の実です。神は御心のままに御霊の賜物を一人ひとりに分け与えてくださいます(Ⅰコリ 12:11)。賜物を持つことが自動的に報いとなるのではなく、私たちが何のために、どのように賜物を用いたかによって、神の評価を受けます。私たちが認められるのは、持っている賜物ではなく、その賜物によって仕えてた結果である「人生の実」によります。賜物は神が与えてくださるものを受け取ることであり、実は私たちが人生において結ぶものです。ですから、実が私たちのアイデンティティです。イエスは私たちのことを実によって知るからです。実がなく賜物の現れだけで「主よ。主よ」と呼ぶ人々を、主は知らないと言われます(マタ 7:23)。ですから、もし賜物が明らかでなくても、実が結ばれていれば、主は「わたしはあなたを知っている」と言ってくださいます(マタ 7:20)。実が核心なのです。
聖霊の実は、私たちの人生と働きの成長過程であり、その結果です。聖霊の実は罪と対照的です。「肉の行いは明白であって、次のようなものです。不品行、汚れ、好色、偶像礼拝……こんなことをしている者たちが神の国を相続することはありません」(ガラ 5:19~21)。これに対し「御霊の実は、愛、喜び、平安、寛容、親切、善意、誠実、柔和、自制です。このようなものを禁ずる律法はありません」(ガラ 5:22~23)。
私たちに聖霊を与えられた究極的な目的は、この実を結ぶことにあります。私たちが聖霊に満たされることを求めるのは、自分の力を誇るためではありません。人生の実を結ぶ聖なる御霊の力を現すためであり、究極的には神に栄光をささげるためです。


聖霊の実は私たちの人生と働きの成長過程であり、
その結果です。私たちに聖霊を与えられた
究極的な目的も、この実を結ぶことにあります。

 

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