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聖書的な妻 講座[第14課] 夫の傷をいやす
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神の夢がある家庭 |
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トーチ・トリニティ神学大学 教授 イ・キボク
Introduction 人の心を木の年輪にたとえて説明することがあります。木の断面に生きてきた歳月が現れているからです。木の生長の歴史を現す年輪には、干天の年や雨がよく降った年、時には雷が落ちた跡も残っています。私たちの心も同じです。人の心の中をのぞいてみると、乳児期、幼少期、青少年期、青年期に経験した出来事の痕跡が残っています。そのような過去の痕跡は、ふだんは眠っていますが、何か触発的な出来事が起こると、現在の生活に姿を現します。 結婚は、ともすれば過去の歴史を持ったふたりの出会いだと言えます。ですから、夫のことを本当に理解して愛するためには、夫の幼少期についてよく知らなければなりません。どんな親のもとで育ったか、両親の関係はどうだったか、兄弟姉妹同士の比較や差別はなかったか、家庭の経済事情はどうだったか、成長過程で衝撃的な出来事はなかったかなど、心の傷を知る必要があります。親の離婚や、親のうち特に父親からの暴力はないか、親のうち一方が早く亡くなってはいないか、貧しかったか、親のうちひとりでも怒りっぽくはなかったかなどについても知る必要があります。 夫の過去の傷を理解すれば、はるかに愛しやすくなります。「だから夫が未来に対する心配や恐れが強いのだな」「だから夫が急に腹を立てることがあるんだな」「だから夫は愛の表現が下手なんだな」「だから自分の思いを表現できないんだな」「だから夫はお金に対する執着心が強いんだな」「だから人からほめられたり認められたりすることに飢え渇いているんだな」と理解できるようになります。 結婚は新しい家族の始まりです。かつて家族から受けた傷があったとしても、新たに出会った配偶者との関係の中で全く新しい経験を積み重ねていくことができます。妻が夫にどれほど尊い存在であるかを植えつけつづけてあげれば、夫は自分に対して新しいセルフイメージを持つことができます。結果的に言うなら、良い結婚は配偶者の過去の傷をいやし、回復させます。反面、悪い結婚は配偶者の過去の痛みや傷をさらに悪化させます。あなたの結婚生活はどうですか。あなたは夫の傷をいやす妻ですか。それとも夫の傷に対して無関心だったり、逆に傷を与えたりしていませんか。創造主なる神様は、罪によってゆがんだセルフイメージを回復させてくださいました。罪人である私たちにこのように語ってくださいます。「だれでもキリストのうちにあるなら、その人は新しく造られた者です。古いものは過ぎ去って、見よ、すべてが新しくなりました」(Ⅱコリ 5:17)。「神は、私たちを暗やみの圧制から救い出して、愛する御子のご支配の中に移してくださいました」(コロ 1:13)。私たちを罪から救い出し、限りなく愛してくださるイエス・キリストの愛によって、夫のセルフイメージを回復させてあげましょう。今から始めましょう。愛しがたい夫であったとしても、イエスの愛によってもう一度愛する努力を始めてみましょう。
1. 劣等感 もし夫が外見に対して劣等感を持っているなら、「あなたは素敵よ」「あなたは魅力的よ」とくり返し言ってあげましょう。心にもない嘘を言っているようでしょうか。いいえ。創造主なる神様の目で見れば、あなたの夫は神様の最高傑作です。世の視点で見るのではなく、創造主なる神様の永遠の基準で見てください。私たちはみな、神様の手で創造された唯一無二の尊い存在です。その真理を夫に伝えましょう。夫に新しいセルフイメージを植えつけてあげるのです。妻の愛と祈りによって夫の劣等感は十分にいやされるでしょう。
2. 自信がない 自分の能力に対して自信がない夫がいます。子どもは親からほめられ、励まされながら育たなければなりません。ほめられず、指摘や非難、叱責ばかり受けて育てば、すべての面で臆病で、自信がなくなります。親から「おまえは何をしてもだめだな」「また失敗したのか」「がっかりだよ」などの否定的な言葉をしょっちゅう聞いて育ったら、おとなになってもそのような言葉が心に残っています。そうすれば、自ら「私は何をしてダメな人間だ」「自分に失望する」というような否定的な考えを持つようになります。もし夫にそのような考えが支配的で、自信が欠けているなら、妻として夫に反対のメッセージを投げかけてあげるべきです。決して指摘や非難をしてはなりません。むしろ夫に「だれでも失敗するものよ」「失敗を恐れないで、チャレンジしてみたら?」「それくらいできたら、大したものよ」「よくやったと思うわ」「すごいわね」というような言葉をたくさんかけてあげましょう。特に、子どもやほかの人の前で夫の小さな成果についても惜しみなくほめてください。心のこもった称賛は、夫の自信を回復させます。
3. 自己愛と自尊心の欠如 人はみな、愛されるために生まれた尊い存在です。すべての子どもは親から「愛している」「おまえは尊い存在だ」「おまえのおかげで幸せだ」「おまえが生まれてうれしい」というような言葉を聞いて育たなければなりません。そうして自分がどれほど尊く、愛されている存在なのかを、心底から確信しなければなりません。そのような自己愛と自尊心は、生きていくための希望となり、時には人生の中で遭遇する試練を克服するための原動力になるでしょう。 ところで、多くの親は、表現ができない文化のためか、時には自分たちが生きていくのに精一杯だからか、子どもにそのような愛の表現ができないようです。もし夫が子どもの頃、両親からの愛を感じることができなかったなら、夫の心には愛の飢え渇きが残っているはずです。そのような人は、自分を愛せず、自尊心に欠け、いつも愛に飢え渇いている状態です。自分は愛される資格がないから愛されないのだと誤解することもあります。それで、自分を卑下し、憂うつで、よく怒るようになります。そのような場合、そばにいる妻も大変で、疲れてしまいます。しかし、これからは夫に愛と自尊心を植えつけてあげなければなりません。もちろん、決して簡単なことではありません。そのように愛するためには、まず妻が日々、神様の無条件の愛を深く経験しなければなりません。朝ごとに神様の恵みを賛美してこそ、夫を愛することができるのです。
4. 不安と恐れ 子どもの頃の家庭生活が穏やかでなかったなら、夫は未来に対する不安や恐れがひときわ大きいことでしょう。両親が、やむをえない事情で経済的な必要や保護を与えられず、とても貧しい環境で育った人は、明日に対する不安が大きくなります。そのような人には、お金に対する心配や執着が見られます。不安や恐れは、信仰の反義語なので、霊的な不信仰と結びつきます。主に生涯をゆだねる信仰を持つのが容易ではないからです。そのような恐れの感情はサタンに利用されます。サタンは不安や恐れによって、きょうの感謝と幸福を奪うのです。 結婚して、夫にそのような心配や恐れが格別に多いということがわかれば、妻は特に夫の信仰と勇気を強めるよう努力しなければなりません。ポジティブな表現、信仰的な言葉、希望を与えるメッセージなどによって夫から恐れを追い出さなければなりません。「あなた、何も心配しないで。私が祈っているから、なんとかなるわよ」「すべてうまくいくわよ」「神様が守ってくださるわ」「幸せよ」というような言葉をくり返し口にしましょう。玄関やリビングに次のようなみことばを貼っておきましょう。「空の鳥を見なさい。種蒔きもせず、刈り入れもせず、倉に納めることもしません。けれども、あなたがたの天の父がこれを養っていてくださるのです。あなたがたは、鳥よりも、もっとすぐれたものではありませんか」(マタ 6:26)。「わたしはあなたがたのために立てている計画をよく知っているからだ。──主の御告げ──それはわざわいではなくて、平安を与える計画であり、あなたがたに将来と希望を与えるためのものだ」(エレ 29:11)。「何も思い煩わないで、あらゆる場合に、感謝をもってささげる祈りと願いによって、あなたがたの願い事を神に知っていただきなさい」(ピリ 4:6)。家庭に「心配と恐れの霊」が入ってこないよう、妻としていつも目を覚まして祈りましょう。
5. 怒り:抑えられない憤り 結婚生活で、怒りは“時限爆弾”のようなものです。人は怒りが込み上げてくるとき、理性的な判断ができなくなります。それで、家族に対して決して言うべきでない致命的な言葉までまくし立てます。そのような言葉は取り返しがつかず、家庭に大きな傷を残します。それで、怒りを爆発させたあとは、後悔と罪責感、羞恥心、挫折感などが湧き、怒りはさらなる怒りを呼びます。 ひときわ怒りがたまっている人は、子どもの頃に不当な待遇や出来事をたくさん経験した人です。そのような悔しさを表現することもできず、心の中に押し込めておいたのでしょう。実際、怒りそのものは悪い感情ではなく、自尊心を保護するための正当な感情として働くこともあります。しかし、過去の怒りをうまく対処できず、現在の家庭に破壊的に働くことが大きな問題です。 いったん怒りが爆発した人には、怒りによって反応してはいけません。まず、怒った人に優先権があることを認めてください。即座に反応しないよう自制し、夫の言葉に傾聴し、腹を立てている理由を理解するよう努めましょう。しばらく祈る余裕を持てたら成功です。聞く耳を与えてくださいと祈りましょう。そして、夫の話を聞いてあげてください。しばらく時間が経ってから、落ち着いて自分の考えを話しましょう。このとき、非難の言葉は絶対禁物です。「あなたが願うことがわかったわ」「でも、さっきみたいにあなたが腹を立てたら、私も腹が立つし、恐いし、挫折しそうになるわ」「怒る代わりに、あなたが願うことを話してくれないかな」「どうしたらあなたを助けることができるかしら」というような対話を試みてください。非難せず対話することができたら、時間とともに夫の怒りもいやされていくでしょう。
終わりに 信仰深い妻は、夫が病気にかかった時、失業した時、最もつらい時、あるいは誕生日や特別な日に、花束と手紙を心を込めて準備します。夫が自分にとってどれほど尊い人であるか、夫は神様が出会わせてくださった最もすばらしい特別なプレゼントだと手紙に書いて伝えるのです。愛は傷をいやします。夫の過去を理解すれば、夫の傷を受け入れることができます。もちろん簡単にできることではなく、時間がかかるでしょう。しかし、妻として夫の傷がいやされるよう助けてください。大切なのは、表現することです。「あなたは尊い存在です」「あなたのおかげで幸せです」「自慢の夫」などの表現は、夫の心に響くことでしょう。 最も感動的な告白は、「妻の愛によってイエス様の愛を知るようになった」「妻のおかげで私はたましいの救いを得た」という証しです。実際、夫がイエス様に人格的に出会うなら、心の傷はいやされます。ですから、最大の愛は、イエス様を伝えることです。夫のたましいの救いのために、最後まで祈る妻になられますようお祈りします。
祈りましょう 天のお父様。夫に出会ったのは、偶然や失敗ではなく、神様のご計画であったことを信じます。夫を理解し、愛することができるよう助けてください。時には、愛することが難しくても、イエス様の愛によって愛することができますように。愛は寛容で、すべてをがまんし、すべてを信じ、耐え忍ぶと言われましたので、愛と忍耐をもって夫の傷をいやし、回復させることができますように。そのために、まず私が神様の愛を深く経験できますように。そして、私の愛の労苦によって夫がイエス様の愛を深く知ることができますように。イエス様の御名によってお祈りします。アーメン。
イ・キボク トーチ・トリニティ神学大学院、キリスト教カウンセリング学教授。オンヌリ教会協力牧師、ツラノバイブルカレッジ家庭ミニストリーディレクター。ラブソナタ講師。
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