聖霊と三位一体 愛が造り出す神秘、「三位一体」

   クリスチャン人生論 ⑬
 
ユ・スンウォン デトロイト韓国人連合長老教会 主任牧師


もしカルト宗教の創始者になるために教理を意図的に作るとしたら、実用性と商品性の次元で、決して含んではならないものがあります。それは、三位一体の教理です。人の心をつかむためには、説明しやすく、合理的なものを選ばなければなりませんが、三位一体の教理は常識では理解できず、説明が難しいため、扇動的に人を感動させることができません。では、なぜキリスト教はこの難しい概念をあえて中心教理としているのでしょうか。それは、三位一体の教理を便宜のために作ったのではないからです。人の頭で理解できないけれども、だからといって切り捨ることはできないもの、つまり真理だということです。

「三位一体」、教会史の中の新造語
三位一体(Trinity)ということばは、ラテン語“トリニタス”(trinitas, 3重)から来ました。簡潔に言うと、「ひとりの神の存在の中に三つの神格」、すなわち“三つで一つ”という意味です。この教理に対する長い論争は、325年のニカイア公会議で始まり、126年間続いて、カルケドン公会議で451年に終結しました。
ウェストミンスター信仰告白(1649年)第2章「神、三位一体」第3条の内容です。「神の統一性の中に、一つの本質、力、永遠性をもつ三つの人格がある(Ⅰヨハ 5:7、マタ 3:16~17;28:19、Ⅱコリ 13:13)。すなわち、御父、御子、御霊は、本質と力と永遠性において同一である。御父は何ものからも生まれたり出たりせず、御子は永遠に御父からお生まれになる(ヨハ 1:14, 18)。聖霊は永遠に御父と御子とから出られる(ヨハ 15:26、ガラ 4:6)」
中世時代に三位一体を説明するために使っていた「三位一体の盾」の図式は、その意味をうまく要約しています。①御父は神です。御子も神です。御霊も神です。②御父は御子ではありません。しかし、御父も御子も一つの神です。③御父は御霊ではありません。しかし、御父と御霊は一つの神です。④御子は御霊ではありません。しかし、御子と御霊は一つの神です。どうしたらそのようになるのか、人間の頭では理解できません。しかし、神はこのように啓示されました。
「三位一体」という用語は、聖書にはありません。神の存在を説明するために作られた用語です。しかし、概念はすべて聖書に基づいています。三位一体という単語は聖書にありませんが、三位一体の概念が聖書に満ちているということです。三位一体という用語を作らざるをえない理由がここにあります。

「三位一体」、聖書の啓示
第一に、神はひとりの神です。これがすべての戒めの根幹です。十戒の第一と第二の戒めは、ここから与えられました。「主は私たちの神。主はただひとりである」(申 6:4、ヤコ 2:19参照)。
第二に、イエス・キリストは神です。イエス・キリストは全的に神であられ、人間になられた神の第二位格です。「キリストは神の御姿である方なのに、神のあり方を捨てられないとは考えず、ご自分を無にして、仕える者の姿をとり、人間と同じようになられました。人としての性質をもって現れ」(ピリ 2:6~7、ヨハ 1:1;8:58参照)。
第三に、聖霊は神の霊である神です。「けれども、もし神の御霊があなたがたのうちに住んでおられるなら、あなたがたは肉の中にではなく、御霊の中にいるのです。キリストの御霊を持たない人は、キリストのものではありません」(ロマ 8:9)。聖霊は神の霊であり、キリストの霊です。
第四に、三つの神格はそれぞれ全的に神ですが、一定の差別性を見せながら、互いにつながっています。御父が御子を世に遣わされました。「しかし定めの時が来たので、神はご自分の御子を遣わし、この方を、女から生まれた者、また律法の下にある者となさいました」(ガラ 4:4、マタ 10:40、マコ 9:37参照)。御父と御子は御霊を私たちに遣わしてくださいました。「しかし、助け主、すなわち、父がわたしの名によってお遣わしになる聖霊は、あなたがたにすべてのことを教え、また、わたしがあなたがたに話したすべてのことを思い起こさせてくださいます」(ヨハ 14:26、15:26;16:7参照)。
三つの神格の関係を示す最も劇的な場面は、イエスがバプテスマを受けられる時です。「こうして、イエスはバプテスマを受けて、すぐに水から上がられた。すると、天が開け、神の御霊が鳩のように下って、自分の上に来られるのをご覧になった」(マタ 3:16~17)。このように、個別の神格によって存在されますが、互いにつながっています。それでいながら一つです。それで、三位一体なのです。
これは、いったい何なのでしょうか。三位一体の教理は、人間の歴史的な神体験です。神の唯一性、神が人間になられたイエス・キリストの神性についての歴史経験、神の霊である聖霊に対する人格的体験が、教会に三位一体を悟らせ、その教理を記録させました。つまり、私たちが三位一体を知ることができたのは、神がご自分をそのように啓示されたからです。

三位一体が与える意味
では、三位一体が持つ意味は何でしょうか。第一に、三位一体は愛です。三つの神格ですが、ひとりです。論理では理解できない神秘です。三つなのに一つである完全な結合です。「それは、父よ、あなたがわたしにおられ、わたしがあなたにいるように、彼らがみな一つとなるためです。また、彼らもわたしたちにおるようになるためです。そのことによって、あなたがわたしを遣わされたことを、世が信じるためなのです」(ヨハ 17:21)。これが愛です。「愛は神から出ているのです。愛のある者はみな神から生まれ、神を知っています。愛のない者に、神はわかりません。なぜなら神は愛だからです」(Ⅰヨハ 4:7~8)。三位一体は愛です。
第二に、十字架の福音は、三位一体の神の人間に対する愛です。「神はそのひとり子を世に遣わし、その方によって私たちに、いのちを得させてくださいました。ここに、神の愛が私たちに示されたのです。私たちが神を愛したのではなく、神が私たちを愛し、私たちの罪のために、なだめの供え物としての御子を遣わされました。ここに愛があるのです」(Ⅰヨハ 4:9~10)。御子イエス・キリストが私たちのもとに来られたという福音は、その三位一体の愛が私たちの上にそのまま注がれたということです。
「この希望は失望に終わることがありません。なぜなら、私たちに与えられた聖霊によって、神の愛が私たちの心に注がれているからです。……しかし私たちがまだ罪人であったとき、キリストが私たちのために死んでくださったことにより、神は私たちに対するご自身の愛を明らかにしておられます」(ロマ 5:5, 8)。
三位一体は、愛の神が私たちを愛されたために救ってくださる「愛の啓示」です。「神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである」(ヨハ 3:16)。御父が私たちを愛して御子を遣わし、私たちのために死なせ、御霊を通してその愛を知らされたことが私たちの救いです(Ⅰコリ 2:12)。
第三に、三位一体は私たちの人生のモデルです。「またわたしは、あなたがわたしに下さった栄光を、彼らに与えました。それは、わたしたちが一つであるように、彼らも一つであるためです。わたしは彼らにおり、あなたはわたしにおられます。それは、彼らが全うされて一つとなるためです。それは、あなたがわたしを遣わされたことと、あなたがわたしを愛されたように彼らをも愛されたこととを、この世が知るためです」(ヨハ 17:22~23)。
愛が最も大きな戒めである理由は、三位一体として互いに愛し合っておられる神が、ご自分の愛のかたちのとおりに、私たちを互いに愛する存在として創造されたからです。そのため、アダムとエバは一体だと言われます(創 2:24)。「私たちの見たこと、聞いたことを、あなたがたにも伝えるのは、あなたがたも私たちと交わりを持つようになるためです。私たちの交わりとは、御父および御子イエス・キリストとの交わりです」(Ⅰヨハ 1:3)。
神が建てられた教会は、三位一体の神の神秘的な愛が、キリストのからだとして現されたものです。「ですから、ちょうど、からだが一つでも、それに多くの部分があり、からだの部分はたとい多くあっても、その全部が一つのからだであるように、キリストもそれと同様です。なぜなら、私たちはみな、ユダヤ人もギリシヤ人も、奴隷も自由人も、一つのからだとなるように、一つの御霊によってバプテスマを受け、そしてすべての者が一つの御霊を飲む者とされたからです」(Ⅰコリ 12:12~13)。
三位一体のかたちである人間も愛である
また、三位一体の神のかたちに造られた人間も愛です。神が三位一体の関係で存在されるように、人間は愛の関係で存在し、愛の関係で生きています。そのため、神が愛であられるように人も愛です。人生は愛です。人生が愛であれば成功で、憎しみと無関心であれば失敗です。心といのちと力を尽くして神を愛することが、最大の戒めです。そして、隣人を自分自身のように愛することが、すべての律法と預言者の戒めです。
私たちが互いに愛し合うことは、御父、御子、御霊のメッセージを世に伝えることです。「あなたがたに新しい戒めを与えましょう。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。もし互いの間に愛があるなら、それによってあなたがたがわたしの弟子であることを、すべての人が認めるのです」(ヨハ 13:34~35)。互いに心から愛し合うだけで伝道になります。世の人々は、私たちが互いに愛し合うとき、その姿に互いに愛し合っておられる三位一体の神を見いだすからです。


三位一体の教理は、人間の神体験です。
神の唯一性、子なるイエスについての歴史経験、
聖霊についての人格的体験がこれを悟らせるのです。

 

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