クリスチャン人生論 ⑧

   キリスト論:キリストの品性 柔和と謙遜を選ばれる
 
ユ・スンウォン デトロイト韓国人連合長老教会 主任牧師


荒々しくて高慢な人がいいですか。それとも柔和で謙遜な人がいいですか。柔和な人はみなから慕われます。「柔和」が愛の姿だからです。柔和は、温かく、人の心を楽にしてくれるからです。良い関係を維持させ、人の心に深い変化をもたらし、人を生かすからです。
柔和はいつも謙遜を伴います。心の謙遜が外に流れ出て、その結果として現れる態度が柔和だと言うことができます。「謙遜」に当たるギリシャ語“タペイノス”(tapeino,j)は、「低さ」という意味です。自分の心をほかの人の心よりも低くすることです。自分よりもほかの人をすぐれていると考える心(ピリ 2:3)を持つなら、その人は柔和になります。

イエスは本当に柔和だったのか
ありとあらゆる暴力が横行し、生きるのも大変なこの時代に必要なのは、高慢な暴君ではなく、柔和と謙遜の品性を備えた、仕えるリーダーです。このような時代に、イエスが私たちを招かれます。「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。わたしは心優しく、へりくだっているから、あなたがたもわたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすればたましいに安らぎが来ます」(マタ 11:28~29)。イエスはこの招きの中で、ご自分の品性を定義されました。私たちの罪の重荷と人生の疲れを解決してあげようというイエスの招きはイエスの働きですが、そこに柔和と謙遜の品性が語られています。ここに重要なキリスト論的な意味が含まれています。
しかし、首をかしげさせるような出来事が、いくつもあります。偽善的で高慢で陰険で批判的なパリサイ人たちと争われるとき、イエスは一歩も譲られることなく、戦闘的で攻撃的でした。毒舌に近い「まむしのすえたち」ということばを使うこともためらわれませんでした(マタ 12:34)。神殿で商売する人々の台を倒し、人々を追い出されました(マコ 11:15~18)。このような姿を見せながら、同時に、ご自分の心が柔和で謙遜だと言われるのなら、果たしてその柔和と謙遜とは何なのでしょうか。
このような過激な出来事もありましたが、イエスの人生と働き全般を見てみると、イエスは実に温かく包容的でした。その当時、神の国に属することのできない者と考えられ、排除の対象として烙印を押されていた取税人や罪人といっしょに食事することをためらわれなかったので、「取税人や罪人の仲間」という汚名も着せられました(ルカ 7:34)。姦淫の現場で捕らえられた女を赦して帰らせ(ヨハ 8:3~11)、わずらわしい子どもたちを嫌がらずに抱いて按手されました(マコ 10:13~16)。友であるラザロが死んだ場所では悲しみの涙を流され(ヨハ 11:35)、十字架ではご自分をあざける人々のために祈られました。「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです」(ルカ 23:34)。

品性と働きとしての柔和と謙遜
私たちは一般的に、性格・気質・品性などの概念を混ぜて使っていますが、この分野を研究する人々は、この3つを区別して扱っています。まず、「気質(temperament)」というものがあります。これは、生まれ持った性質です。創造主なる神から与えられた心の基礎のようなものです。一般的に、多血質(sanguine)、粘液質(phlegmatic)、胆汁質(choleric)、憂鬱質(melancholic)の4つに区分されますが、実際は人によって微妙に異なると考えるべきでしょう。抑えつけたり、隠そうとしたりしても、死ぬまで変わらない心の原材料です。ですから、神が造ってくださったままの気質を感謝して受け入れなければなりません。また、ほかの人の気質を、認めることもできなければなりません。気質については、間違っているのではなく異なっているのだと受け止め、互いに尊重し合わなければなりません。
気質を原材料として築いていく人格の産物があります。心理専門家たちは“character”と“personality”に区分します。この2つの概念の翻訳には混線があります。ある人々は“character”を「性格」、“personality”を「人格」とし、またある人は“character”を「人格」、“personality”を「性格」と翻訳します。そのため、翻訳された本を読むときには、原書を確認してみる必要があります。私は“character”を品性(人柄)、“personality”を性格と規定しました。
品性(character)は、生まれ持った気質を基盤にして磨き上げられて形成された、その人の人柄です。人格的価値とも言えます。神が最終的に評価される私たちの人生における、作品としての自分自身の姿です。この品性が外に現れ、ほかの人々の目に見える姿が性格(personality)です。
イエスの気質は、私たちがむやみに診断することはできず、定義するのも簡単ではありません。しかし、イエスが「わたしは心優しく、へりくだっているから」と言われたのは、聖霊に満たされた中で宣言されたイエスの意志表明です。これは、イエスご自身の気質について言及したものではありません。主が意図的にそのような品性を選ばれたという宣言です。そのため、イエスの品性は、イエスの働きの定義として見なければなりません。疲れた人、重荷を負った人のための務めが、イエスの柔和と謙遜の性質だという意味です。そのような意味で、イエスの柔和と謙遜は、私たちの生まれ持った気質とは関係なく、生涯ならっていくべきものなのです。
ある一般信徒の働き人の証しに、深い感銘を受けたことがあります。その人は、信仰を持つ前は反キリスト教的で気難しい人でしたが、教会で主の愛を体験して変えられたそうです。奉仕の人生を決断する「選択」と、主にゆだねられた働きを感謝して果たそうとする「受任」の姿勢によって、本心では会いたくもないほど問題のある人々を意図的に受け入れ、忍耐しながら待ち、寛大に接しているうちに、自然と御霊の実が結ばれたという証しでした。選択と受任の姿勢で生きているうちに、謙遜で柔和な人に変えられたのです。

柔和な人の相続、神の国
柔和は弱さではありません。むしろ、柔和な人のほうが、強くて気の早い人に勝ります。柔和な人は神が責任を負ってくださるからです。モーセがクシュ人の女を妻としたことに関し、ミリヤムとアロンが非難しました。モーセはその非難に反応しませんでした。しかし、神ご自身がミリヤムを罰して、モーセを守ってくださいました。その理由が記されています。「さて、モーセという人は、地上のだれにもまさって非常に謙遜であった」(民 12:3)。モーセが自己防衛をしない柔和を選んだとき、神ご自身が義を行使されたのです。
神は、地上の貧しい者たちをみな救うために立ち上がると言われました(詩 76:9)。柔和な者には神の国の約束があります。「柔和な者は幸いです。その人たちは地を受け継ぐから」(マタ 5:5)。「しかし、貧しい人は地を受け継ごう。また、豊かな繁栄をおのれの喜びとしよう」(詩 37:11)。「地」は部族に与えられた相続地のイメージであり、神の国の約束を象徴します。イエスの柔和は、神の国を相続地として受けるための約束の根拠です。
イエスの柔和と謙遜の品性は、十字架の死によってクライマックスに至ります。「人の子が来たのも、仕えられるためではなく、かえって仕えるためであり、また、多くの人のための、贖いの代価として、自分のいのちを与えるためなのです」(マコ 10:45)。「彼は痛めつけられた。彼は苦しんだが、口を開かない。ほふり場に引かれて行く羊のように、毛を刈る者の前で黙っている雌羊のように、彼は口を開かない」(イザ 53:7)。神は、このようなイエスに神の国を相続地として与えられました。「……もし彼が、自分のいのちを罪過のためのいけにえとするなら、彼は末長く、子孫を見ることができ、主のみこころは彼によって成し遂げられる」(イザ 53:10)。
イエスにとって柔和は、身につけるべき品性であり、神の国を成し遂げるための務めでした。「見よ。わたしのささえるわたしのしもべ、わたしの心の喜ぶわたしが選んだ者……彼は叫ばず、声をあげず……彼はいたんだ葦を折ることもなく、くすぶる燈心を消すこともなく、まことをもって公義をもたらす。彼は衰えず、くじけない。ついには、地に公義を打ち立てる。島々も、そのおしえを待ち望む」(イザ 42:1~4)。
イエスが、柔和と謙遜をご自分の品性として定義されたので、キリストを手本とするべき私たちもまた、柔和と謙遜を選び、献身しなければなりません。つまり、柔和と謙遜の品性を身につけることは、私たちの務めなのです。柔和と謙遜の選択が、つらくて苦しい世に平和といこいを与えます。リーダー気取りで、苦しい世をもっと苦しくする人がたくさんいます。私たちの姿はどうでしょうか。いつにもましてイエスが教えられた仕えるリーダーシップが必要な時です。真の奉仕は柔和と謙遜に基づきます。柔和は弱さではありません。神がともにおられる強さです。柔和な人が神の国の実を結ぶのです。

柔和と謙遜は、イエスが意図的に
選ばれた品性です。それは、疲れた人、
重荷を負った人のためのイエスの務めです。

柔和は弱さではありません。
柔和な人のほうが、強くて気の早い人に勝ります。
柔和な人は神が責任を負ってくださるからです。

 

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