マタイの福音書の恵み 83

   本物につまずいた郷里の人々
 
オンヌリ教会 前主任牧師 故 ハ・ヨンジョ

……すると、彼らは驚いて言った。「この人は、こんな知恵と不思議な力をどこで得たのでしょう。……」
こうして、彼らはイエスにつまずいた。しかし、イエスは彼らに言われた。
「預言者が尊敬されないのは、自分の郷里、家族の間だけです」……(マタ 13:54~58)


教えるために行かれた郷里
天の御国のたとえを話し終えられた後、イエス様は郷里に行かれました。イエス様がお生まれになったのはベツレヘムですが、ふつうイエス様の郷里と言えば、ナザレを指します。なぜイエス様は突然、郷里に行かれたのでしょうか。一般的に人々は、苦労の末、大きな成功を収めたときに郷里に行きたいと思います。また、成功の夢を抱いて都会に来たのに、大失敗をしたり、病気になったりしたときも、人々は郷里に向かいます。郷里はそれほど慕わしい所であり、疲れた人生の安息の地なのです。
イエス様にも家族がいて、子どもの頃、一緒に遊んだ友だちもいました。イエス様が12歳のとき宮で論議する姿を、親や親戚の人々が目にすることもありました。ところが不幸にも、その郷里の人々はイエス様を歓迎せず、イエス様につまずきました。
なぜイエス様は、ご自分につまずく郷里に行かれたのでしょうか。聖書を見ると、「ご自分の郷里に行って、会堂で人々を教え始められた」とあります。ナザレ地域の様子から見て、おそらくここに記されている会堂は、その地域に一つしかないものだったのでしょう。イエス様は郷里に行ってすぐ、その会堂に行かれたのです。ですから、イエス様が郷里に行かれた目的は、家族に会うためでも、友だちから慰めを得るためでもなく、会堂で教えられるためだったことがわかります。イエス様が郷里の人々を愛する方法は、私たちとは違いました。彼らを愛しておられるがゆえに、天の御国の福音を教えようとされたのです。
マタイの福音書12章46節以下で、イエス様の母と兄弟たちがイエス様のことをよく理解できずにやって来たことがありました。人々がイエス様にお母さんと兄弟たちが来たことを伝えると、イエス様は「わたしの母とはだれですか。また、わたしの兄弟たちとはだれですか」と言われ、「天におられるわたしの父のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、姉妹、また母なのです」(マタ 12:50)と言われました。イエス様は人間の血肉を無視されたわけではありません。しかし、血肉自体がイエス様の目標ではなく、神のみこころを成し遂げることに関心がありました。
そうです。人間に欠かせないことは、食べることや着ることではありません。からだも重要です。しかし、それらが必要だからといって、目的にはなりません。
イエス様は、食べることや着ることなどには関心がありませんでした。それよりもはるかに重要な、人のたましいに関心がありました。肉のことがいくらうまくいったとしても、たましいに関することが誤っていれば、何の意味もありません。
「人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる」(マタ 4:4)。「いのちを与えるのは御霊です。肉は何の益ももたらしません。わたしがあなたがたに話したことばは、霊であり、またいのちです」(ヨハ 6:63)。
食べたり飲んだりすることだけが重要なら、私たちは動物と何が違うのでしょうか。きれいに着飾り、おいしいものを食べ、裕福に暮らすことだけが人生のすべてだと考えるなら、人生の価値はどこにあるのでしょうか。貧しく、苦しい生活をし、誤解されたとしても、人間らしく生き、神の子どもにふさわしく生き、霊的な歩みをするとき、人生の真の報いと価値があるのです。イエス様が郷里に行ってされたことは、会堂で教えることでした。それがイエス様と郷里との関係でした。

ナザレの人々の無知
イエスの郷里の人々がイエス様につまずいた理由について、考えてみましょう。
その一つは、「ねたみ」です。だれかが自分よりも勉強がよくできたり、自分よりも出世して金持ちになったりするのを見ると、私たちは祝福するよりも、その人を認めようとせず、批判し、さばくことさえあります。その人が成功するのがいやなのです。それが人間の心です。それが「ねたみ」です。ある人に、明らかに長所があるのに、決まって短所ばかり指摘する人がいます。その言葉は間違っていないかもしれませんが、その人の心は否定的で、攻撃的で、批判的なものに変わってしまったのです。私たち自身はどうでしょうか。私たちは、良いことよりも、否定的なものを見ることを好みませんか。ナザレの町の人々もそうでした。イエスの知恵と力を見て、神様をほめたたえるより、ねたみ、そしりました。
もう一つの理由は、「曖昧な知識」です。彼らはイエス様のことをだれよりも知っていると錯覚していました。もちろん、子どもの頃、イエス様と一緒に遊んだこともあるので、よく知っていると言うこともできますが、本当の意味で知りませんでした。曖昧な知識だったのです。彼らは、イエス様の家族をだれよりもよく知っていると自負していました。しかし、イエス様に対して最も無知な人々でした。よく知っているという高ぶりが、彼らを無知にし、悲惨な人にしたのです。
先入観と誤解は、人間の自画像です。私たちはどれほど多くの偏見と誤解を持っているでしょうか。私たちは特に、自分の専攻に対しては謙遜である必要があります。最新の学問を学んで帰ってきて、自分よりもすぐれている人はいないと大口をたたかないようにしましょう。数年経つと、その知識も古いものになってしまいます。知識は絶えず更新されています。自分がいつも最先端にいることはできません。そして、その分野の専門家であるからこそ、最大のミスを犯してしまうことがあるのです。それが人間です。
57節に「彼らはイエスにつまずいた」(マタ 13:57)とありますが、それは「気分が悪くなった」という意味です。結局、「ねたみ」と「よく知っているという錯覚」のために、彼らはいのちであられるイエス・キリストを逃してしまったのです。否定的で批判的な人は賢く見えますが、実は彼らは不幸で信仰のない人々です。イエス様は、当時のことわざを引用して、預言者が尊敬されないのは、自分の郷里、家族の間だけだと言われ、重要な結論を下されます。
「そして、イエスは、彼らの不信仰のゆえに、そこでは多くの奇蹟をなさらなかった」(マタ 13:58)。
このみことばには、多くの教訓が込められています。信じなければ奇蹟が起こらないという意味です。どんなにイエス様と親しい人でもイエス様をキリストとして信じなければ、奇蹟は起こらないのです。イエス様に力がないのではなく、私たちがイエス様の力を信じないために、奇蹟が起こらないのです。
私たちは、イエスの御名によって祈らなければなりません。イエスの御名に力があるからです。ヘブル人への手紙には、「イエス・キリストは、きのうもきょうも、いつまでも、同じです」(ヘブ 13:8)とあります。2千年前にガリラヤで施された奇蹟が、今日もそれを信じる者の前に、そのまま現れることを信じます。なぜなら、イエス様は、きのうもきょうも、いつまでも同じ方だからです。
私たちは、「無理だ」という言葉を習慣のように言ってはなりません。「私には無理だ」「私の家庭は無理だ」「あの人は無理だ」と言わないようにしましょう。まず、自分自身が変わることができることを信じましょう。なぜ、尊いイエス様をお迎えした私たちが、苦しみや思い煩いに抑えつけられて生きなければならないのでしょうか。イエス様には偉大な力があります。イエス様は愛です。イエス様は私たちの救いです。
自分の子どもが変わることを信じなければなりません。今はどんなに堕落した子どもであったとしても、イエスの御力を信じて祈り続けるなら、彼らはいつか変わるでしょう。家庭が天国に変わるということを信じてください。「イエス様は、私を変えることができる。イエス様は私の家庭を変えることができ、社会を変えることができる」と信じなければなりません。イエス様は、きのうもきょうも、いつまでも、同じ方だからです。

 

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