クリスチャン人生論 ①

   人間論:個人の重要性 大切だから大切に生きる!
 
ユ・スンウォン デトロイト韓人連合長老教会 主任牧師


宗教改革500周年に振り返る信仰の基礎
今年はマルティン・ルターが1517年に『95ヶ条の論題』をヴィッテンベルク大学に掲示した時を基準にして、宗教改革500周年にあたります。宗教改革は、聖書の真理に戻る「信仰のみ(sola fide)、恵みのみ(sola gracia)、聖書のみ(sola scriptura)」の信仰回復でした。今日の教会は、いつにも増して「改革」が必要な時ですが、叫ぶ「改革」の内容が聖書の本質を希釈したり、変質させている場合が少なくありません。
乱世には「正しい教理」にとどまらなければなりません。まるで私たちの時代をあらかじめ知って語っているかのように、使徒パウロは「学んで確信したところにとどまっていなさい」(Ⅱテモ 3:14)と教えています。
「学んで確信したところ」とは、イエス様が建てられた教会を通して私たちが「学んだこと」です。これをドグマ(dogma)、つまり教理または教義と呼びます。「確信したこと」とは、私たちに救いをもたらした「福音」を意味します。「私は福音を恥とは思いません。福音は、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、信じるすべての人にとって、救いを得させる神の力です。なぜなら、福音のうちには神の義が啓示されていて、その義は、信仰に始まり信仰に進ませるからです。『義人は信仰によって生きる』と書いてあるとおりです」(ロマ 1:16~17)。このみことばこそ、500年前の宗教改革の根本であり、理由でした。
宗教改革500周年を迎え、私たちが知るべきこと、信じるべきことを分かち合いたいと思います。これは、メッセージの宣言や黙想を目的とする、説教的なエッセイであり、個人的決断と生活における実践を目指すもので、題して「クリスチャン人生論」としました。「人間論」から始まり、福音を正しく認識させるためのキリスト論、神論、聖霊論、教会、生活、倫理、終末論へと展開していく予定です。責任のある人間の実践に焦点を当てたいからです。

世界の中心は私
昨年、無痛内視鏡検査を受けました。眠っている間に長いホースが入り、臓器の中の写真を撮り、ポリープを切り取り、組織検査用の粘膜を切り取りました。その間、私は何も知らずに眠っていました。このように私が眠っている間には、私にとって世は存在していません。
すべての物は、私の認識内に入ってくるときに存在します。世界の人口約74億人のうち、だれも知らない物は、存在しないのと同様であり、だれも知らない事件は発生しなかったのと同じです。アメリカ大陸は元々ありましたが、1492年にコロンブスが新大陸を発見するまでは、ヨーロッパ人にとっては、全く存在しない土地でした。
哲学者デカルトにとって最も確実な存在は、考えている自分自身です。存在するすべてを疑い、確実なものから始めようとするとき、哲学の出発点は「考える私」の存在です。そのため、「我思う、ゆえに我あり」という言葉が有名になりました。どんな場合であれ、私の認識に入ってくるとき、その存在が意味を持ち、「出来事」になるのです。存在するすべての世界の中心に私がいます。私がいなければ世界は何の意味もないため、世界が私の前に存在するのではありません。私がいなくなる瞬間、世界も一緒になくなるのです。
そのような意味において、この世で最も重要なのは「私」です。私がいなければ世もないため、私が存在の中心です。この論理によって、利己主義を主唱しようとしているのではありません。神が人間をそのように造られたということを話しているのです。
神は、世のすべてを造られ、良しとされました。そして、アダム(人)に生き物の名をつけさせました(創 2:19~20)。被造物は神が造られて存在するようになりましたが、神の命令によってアダムが名をつけ、その存在が完成されました。これが、たましい(霊)である人間と世界の存在方法です。私たちの世界は客観的実在と主観的認識が結びついて存在するのです。
神は人間の外に世を造られました。しかし、同時に人間の中にその世を置かれました。ですから、人間が宇宙の中心です。宇宙の中心には私がいます。これは利己主義の詭弁ではありません。神が造られた世界の存在方法としての創造秩序です。神は世の中心に私を置かれました。神はひとりのたましいを尊ばれ、大切にされます。

ひとりのたましいの価値
100匹の羊のうち、1匹がいなくなると、羊飼いは残りの99匹を残して、その1匹を見つけるまで捜し回ります。そして、羊を見つけると背負って戻り、隣人や友人を招いてその羊1匹よりもはるかに多くの費用がかかる宴会を開いて祝います。その1匹を、100匹のうちの1匹として考えるのではなく、それ自体が完全で大切な存在だと考えるため、99匹を残して1匹を見つけるまで捜すのです。
神は、私を74億人の中のひとりではなく、ひとりしかいない、全世界にあたる価値のある存在として見ておられます。私は、74億分の1ほど尊いのではなく、74億全体にあたるほど、100%尊いのです。神の目には、ひとりのたましいの価値はこの世全体に匹敵します。これが、私たちの意識の中で、自分が世の中心として存在しているように思う理由です。神は、人をそのように造られました。私がいなければ世もありません。世は存在しますが、それは私と関係を結ぶとき初めて意味を持つのです。
人は自分が大切な存在であるという体験を通して、ひとりの人の大切さを知ります。そして、すべての社会、すべての国、すべての思想は、本能的に「人間の尊厳」を語り、それを守ろうとします。
では、なぜ人間がそのように尊厳があり、大切なのでしょうか。その根拠は何でしょうか。

私が尊い本当の理由
人間の尊厳の理由は、神の特別な創造にあります。「神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして彼を創造し、男と女とに彼らを創造された」(創 1:27)。「人とは、何者なのでしょう。あなたがこれを心に留められるとは。人の子とは、何者なのでしょう。あなたがこれを顧みられるとは。あなたは、人を、神よりいくらか劣るものとし、これに栄光と誉れの冠をかぶらせました」(詩 8:4~5)。人間は、神がご自分のかたちに造り、栄光と誉れの冠をかぶせた存在なのです。
人が、なぜこのように尊いのかというのは、自分の子どもが尊い理由と同じです。自分の子どもは私から出てきたため、特に尊く感じます。子どもは自分と同じDNAを持ち、親子鑑定をすれば99.9%一致します。存在するすべてのものを創造された神は、ご自分の特別なDNA、つまり神のかたちを人間にだけ与えられました。そのため、被造世界はすべて尊いものですが、人間は特に尊いのです。神は「あなたたちの中にわたしがいる!」と語られます。今ここにいる私に語られることばです。私の中に神様がおられる!だから、尊いのです。
人が特別に尊い理由は、神が人を特別に愛しておられるからです。私は神が愛するために創造された神の子です。私が何かを愛すると、その瞬間からそれは大切なものになります。時にはつまらない物であっても、私が愛すれば大切なものになります。
自分の子どもは、なぜいのちをかけられるほど大切なのでしょうか。簡単です。愛しているからです。人間が大切なのは、神が愛しておられるからです。私たちがまだ罪人であったときにも、神が愛してくださったからこそ尊く、そのように愛してくださったからこそ、神の御子が私たちの代わりに死んでくださったのです(ロマ 5:8)。

尊い人にふさわしく生きる
私は尊い存在です。神が愛しておられるので、尊い存在です。ですから、尊い存在である私を、自分も尊ばなければなりません。よく顧み、大切にしなければなりません。その尊い存在を軽んじて、地獄に投げ捨ててはなりません。イエスが私を大切に思われ、切なる思いで語られるみことばに耳を傾けてください。「人は、たとい全世界を手に入れても、まことのいのちを損じたら、何の得がありましょう。そのいのちを買い戻すのには、人はいったい何を差し出せばよいでしょう」(マタ 16:26、マコ 8:36)。全世界よりも尊いたましいです。生かさなければなりません。この世のどんなことよりも重要なのは、私が生きることです。
私がそのように尊いため、ほかの人が尊いこともわかります。だれもあざけってはなりません。神の尊い子をぞんざいに扱ったり、苦しめたりするなら、神が黙っておられません。老若男女、地位の違いを問わず、私たちは人をその人自身を見て接しなければなりません。人の上に人はおらず、人の下に人はいません。政治、事業、牧会など、何をするにしても、人を手段と考えてはなりません。
私たちに与えらえた最大の戒めは、「心を尽くし、思いを尽くし、知力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ」、そして「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ」です。これがすべての律法と預言者の教えです(マタ 22:37~40)。ですから、私たちは愛さなければなりません。聖書のすべては人に帰結します。人生は愛なのです。

神は、私が74億分の1だけ尊いのではなく、
74億全体にあたる100%分、尊く思われます。
神にとっては、ひとりのたましいが世のすべてなのです。

神のかたちに造られ、神のDNAを持つ子であるため、
私は、神の特別な愛を受けている、
尊く大切な存在なのです。


今後のテーマ
1月.人間論:個人の重要性
2月.人間論:たましいとしての人間
3月.人間論:人間の社会性

 

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