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世界にひろがるキリストの愛

日本から「霊的戦い」に召されて②

アンテオケ宣教会宣教師　在原繁

4. 悪魔が送り込まれる場所
悪魔礼拝をすることからその深みにはまっていったN氏が体験したことが三つあります。第一に、すべてのことは「霊的」なことで決定づけられていました。第二に、サタンと会話することができました。第三に、N氏はサタンから派遣を命じられました（派遣先は人、団体、場所など具体的です）。
サタンの働きは昔から今まで変わらず、地を行き巡りながら人に働きかけ、破壊することにあります（Ⅰペテ 5:8）。「盗み、殺し、滅ぼす」ことを目的に、悪魔の国の宣教師として派遣されたN氏の使命は、霊的に人や団体を誘惑し、彼らをサタンの支配下に置き、最後には彼らを破壊し、滅ぼすことにありました。N氏の証言から、派遣先は、簡単に自分を受け入れてくれる人や場所に狙いを定めていたそうです。サタンを受け入れ、敵が「足場」を築きやすい場所とはどこでしょうか。それは、人間の「罪」のあるところです。

1）享楽・油断の場所
N氏の体験から、一番入りやすかったのは、「享楽」に身をささげている人で、中でも、深夜、若者の集まる「ディスコ」は格好の標的だったそうです。ミシオネス州にあるディスコは、週末の深夜から明け方にかけてきらびやかな照明で若者を集めるダンス・クラブです。ダンス・クラブと言えば、聞こえはよいのですが、実際はこの場所が青年たちにとって堕落と人生崩壊の出発点と化していることは否定できません。欲望のはけ口とも言えるこのディスコで、若者たちの心は週末の安堵感もあって開放的になり、「どうにでもなれ」とばかりに肌をむき出しにした服装をしているので、「節度」や「良識」をそこに見ることなどできません。無礼講がまかり通ったその場所では、マリファナ、飲酒、偶像礼拝、不純交友などが繰り広げられ、結果は、自己愛の喪失、不純による妊娠と裏切り、絶望感など、気がついた時には罪の泥沼にはまり、身動きが取れない状態になっているというわけです。「享楽に踊り、心が無防備状態の青年たちのうちに入り込み、そこを支配することは、いとも簡単だった」とN氏は告白します。
では、日本の享楽の場所とはどこでしょうか。半世紀前の日本では、青少年を悪から守るためにいかがわしい書籍、あるいは場所には「18歳未満お断り」の札が下げられていたものでした。しかし、時代は変わりました。「お断り」と掲示しなければならない「危険区域」は、特定の場所や物ではなく、今日では青少年の手元に拡がっているのです。年齢に関係なく、一般化した危険区域は言うまでもありません。その筆頭はスマートフォンでしょう。「悪魔に機会を与えないようにしなさい」（エペ 4:27）と聖書は警告しています。このみことばに立つために、私たちが実践すべきことは何でしょうか。それは、自分に悪影響を与えるものから離れること、つまり「悪影響を及ぼす」と思ったら、思い切って「捨てる」ことなのです。
宣教地入りした直後ですから今から28年前になりますが、ある教会の立派な牧師の言葉を聞き、驚愕したのを思い出します。この牧師が「洗礼式」の場で、今から洗礼を授ける、特に青年たちに対して、次のように言いました。「あなたに今から洗礼を授けますが、次のことを約束してもらいます。タバコを吸わない、マリファナを吸わない、飲酒しない、ディスコに出入りしないということです。」
牧師のその言葉は、「なんでも自由」なラテンアメリカに入った直後の私たちにとって、律法的なものに思えました。しかし、その牧師は「霊的戦い」の実践者であり、その戦いの厳しさを現実的に知っていたからこそ、あえて「危険な4点」を「行かないほうが、吸わないほうが、飲まないほうがいいよ」という優しい言葉でなく、「行くな、吸うな、飲むな」という厳命をもって約束させたのだと、今になって思わされます。

2）冷えた夫婦関係
次に、悪霊が入り込みやすい場所として、「離反状態の夫婦」を挙げています。
愛、尊敬、信頼による「一致」は、夫婦生活に絶対不可欠な要素でしょう。「互いに愛し合う」夫婦の間にこそ神様は熱く臨在され、たとえ二人が砂漠や逆境の中に置かれても、さながら、そこは「泉の湧くところ」となるからです。しかし、夫婦愛に亀裂が入った途端、そこは悪魔が簡単に入り込む「足場」と化してしまいます。現代は、「不倫時代」などと言われるほど、実に不謹慎で、不誠実なことが氾濫しています。それは宣教地でも同じことで、それがこの国の文化の一部ではないかと思わされるほどのひどさになっています。その結果、どれほど多くの家庭が破壊され、今もって心の傷がいやされず、苦しんでいる婦人（あるいは男性の場合もある）が多いことでしょう。
何よりも、離別、または離婚した夫婦の子どもたちが受けた心の傷と、おとな社会に対する不信は、絶望感となって彼らを苦悶させ、暴走させています。このように荒廃した家庭や社会の現況に、サタンの爪痕を見るのです。ですから、たとえ夫婦がけんかをしたとしても、すぐに和解することは、悪魔につけ入る機会（足場）を与えないための防御策となるのです。

3）悪い人間関係
さらにN氏の体験談から、簡単に悪魔が入り込み、霊的に支配しやすい場所として「悪化した人間関係」を挙げています。悪化した人間関係とは「ねたみ、憎しみ、誹謗、中傷、陰口」などの渦巻く人間関係のことで、そこに入り込むのは簡単だったとN氏は告白しています。
みことばでは、「高慢」は最大の罪であり、これは人間関係を破滅へと導く「罪の入口」だと警告しています。知恵のことばは「高ぶりは破滅に先立ち、心の高慢は倒れに先立つ」（箴 16:18）と教えています。さらに、別の個所では「もし互いにかみ合ったり、食い合ったりしているなら、お互いの間で滅ぼされてしまいます。気をつけなさい」（ガラ 5:15）と警告しています。
みことばから考察すると、悪魔が足場を築きやすい場所が、私たちの身近な生活の中に多く存在することがわかります。特に、日常生活の人間関係のささいな誤解や争いの中に、悪魔は侵入しやすいのです。時には、家庭や教会を愛するがゆえに、激しい議論やつかみ合い寸前の激論を交わすこともあるでしょう。しかし、金切声を挙げたにせよ、激論が終わった後は「ノーサイド」とでも言わんばかりに、互いに握手やハグをもって「平安」を得るほどの、信仰者としての成熟度を体得したいものです。「怒っても、罪を犯してはなりません。日が暮れるまで憤ったままでいてはいけません。悪魔に機会を与えないようにしなさい」（エペ 4:26～27）。

5. 神の国の要塞
N氏は、悪魔に遣わされて、悪魔が入って行けないところへ「何としても入って行こう」と、意気込んで出掛けたことがありましたが、どうしても侵入できない場所が2か所あったそうです。それは、「クリスチャンが互いに愛し合い、祈っているところ」と「十字架が立てられたところ」です。
N氏のこの体験談は注目に値します。ある日の出来事から証しを紹介しましょう。
ある日、狙いを定めた町を支配するため、そこを訪れようとしたところ、心と足に「ブレーキ」が掛かってしまい、どうしても町の中を歩くことができなかったと言います。なぜでしょうか。それは、町の入り口の路傍で、複数のクリスチャンたちが円陣を組み、手を取り合って祈っていたからです。N氏は、それを目にした途端、どうしたことか侵入することができなかったそうです。
このことから、複数のクリスチャンの「祈り会」の真ん中には神様のご臨在があり、それは悪魔の攻撃を封じ込めることができるということがわかります。また、その証しを通して、区域や教会の祈祷会に「勝利の突破口」があるということを教えられます。
二つ目の「十字架が立てられていたところ」とは、物理的な「十字架」のことではなく、そこは「生きた信仰」、「血潮の力」、「主のご臨在」のある場所を意味します。「十字架」が立てられている場所と言えば、世の中では「キリスト教会」から「ネックレス」、「墓地」に至るまで、至る所に見られます。営利目的で立てられた「ブライダル教会」や、すでに形骸化した形だけの教会であっても、「十字架」は高々と掲げられ、美しく輝いています。しかし、そこに「神の国」のいのちはあるでしょうか。ありはしません。「生きた信仰」がないからです。
悪魔が入り込めない「十字架の場所」とは、次の4つの条件を備えた所です。
1）主イエスに対する信仰（へブ 11:6）
2）聖書信仰（マタ 4:1～11、箴 13:13）
3）愛と純粋な心の交わり（使 2:42～46）
4）真の礼拝と賛美（コロ 3:16）

N氏は「とりなしの祈りがなされ、人々が互いに愛し合い、祈り合っているところでは何もできませんでした」と言いました。主イエスは「ふたりでも三人でも、わたしの名において集まる所には、わたしもその中にいるからです」（マタ 18:20）と言っておられます。
基本的に、日常生活における「勝利の要因」とは、みことばに堅く立ち、聖霊に満たされることにあるわけで、それを体得するための条件とは、聖書を読む習慣の確立、祈りの習慣の確立、教会生活の確立という3点にあります。
「リバイバルの国」と言われて久しいアルゼンチンでも、民を「真理であるキリスト」から引き離し、これを破壊しようとするサタンの働きは熾烈を極めています。その戦いの中で勝利するために強調されていることは「神のみことばに立ち、その中に生きること」、「祈りの習慣を確立し、聖霊に満たされること」、「互いに愛し合い、受け取った祝福を隣人と分かち合うこと」です。
「教会」、「家庭」、「区域」で信仰の祈りの手を高く掲げ、悪魔の手から私たちの町を守ろうではありませんか。私たちは「勝利者イエス」の側に立っているのですから。

「どうか父が、その栄光の豊かさに従い、御霊により、力をもって、あなたがたの内なる人を強くしてくださいますように」（エペ 3:16）。

在原繁
1949年、静岡県生まれ。20歳のときに召命を受ける。KBI（関西聖書学院）、MTC（宣教師訓練センター）で学ぶ。1988年よりアルゼンチンのミシオネス州にて宣教活動に従事し、現在に至る。

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