マタイの福音書の恵み73

   [マタイの福音書 13章1~17節] 天の御国に周波数を合わせましょう
 
オンヌリ教会 前主任牧師 故 ハ・ヨンジョ


その日、イエスは家を出て、湖のほとりにすわっておられた。
すると、大ぜいの群衆がみもとに集まったので、イエスは舟に移って腰をおろされた。
それで群衆はみな浜に立っていた。イエスは多くのことを、
彼らにたとえで話して聞かされた…(マタ 13:1~3)。


地上で最も美しい永遠のメッセージは、天の御国に関するメッセージです。御国は、さまよっている人間が究極的に到達すべき最大の理想郷であり、永遠の安息の地です。
イエス様がこの地に来られて最初に説教されたことばは、「悔い改めなさい。天の御国が近づいたから」(マタ 4:17)です。マタイの福音書4章では、イエス様の3大ミニストリーを、御国の福音を宣べ伝え、御国のみことばを教え、すべての病と悪霊を追い出し、いやす働きとしてまとめています。マタイの福音書5~7章の山上の説教は、天の御国の民がどのように生きるべきかについて伝えています。主の祈りで最も重要な祈りは、「みこころが天で行われるように地でも行われますように」(マタ 6:10)です。御国がこの地で成し遂げられるようにという祈りです。
イエス様はなぜ十字架で死なれましたか。御国を私たちに与えるためです。なぜイエス様は復活されましたか。御国を私たちに与えるためです。マタイの福音書12章までは、イエス様が迫害され、反対にあわれた内容が記されています。ところが、驚いたことに、13章に入ると、イエス様は天の御国に関して集中的に語っておられます。
クリスチャンであれば、天の御国を日々心の中で夢見、慕い求め、待ち望み、描き、感じながら生きなければなりません。ところが、多くの信徒が、朝目覚めると天の御国のことはすっかり忘れたまま一日を始め、世で一生懸命に生きています。教会に来ても、日曜学校の教師をし、聖歌隊をし、奉仕に追われて天の御国を考えることができません。信徒がこの程度であるなら、世の人たちが天の御国について考えることは期待できず、むしろ、死についてもっと多く黙想するでしょう。ほとんどの人は、死に対する恐れと不安を持っています。人は、この世は地獄のようだと言ったり、生きていくのは、もううんざりだという言葉をこぼしたりします。
しかし、これとは反対に、死を祝福だと考える人たちがいます。たとえば使徒パウロのような人です。パウロは、自分の死を直感して「私は勇敢に戦い、走るべき道のりを走り終え、信仰を守り通しました」と言い、自分が死んだ後には「義の栄冠が私のために用意されているだけだ」と告白しました(Ⅱテモ 4:7~8)。これが使徒パウロの死生観です。
では、天の御国はどんな所でしょうか。何をする所でしょうか。イエス様は、13章で御国について詳しく説明しておられます。おもしろいことに、実際のところキリスト教のすべてだとも言える「天の御国」を説明されるとき、イエス様は、たとえによって説明されました。直接説明されてもいいのに、なぜたとえで説明されたのでしょうか。ここに大変重要な意味が含まれています。
使徒の働き2章2節以下を見ると、五旬節の日に聖霊が臨んだ出来事が次のように記されています。
「すると突然、天から、激しい風が吹いて来るような響きが起こり、彼らのいた家全体に響き渡った。また、炎のような分かれた舌が現れて、ひとりひとりの上にとどまった」(使 2:2~3)。
聖霊は偉大な神ご自身なので、「こうだ」と説明することができません。それで「何々のようだ」と説明したのです。真理があまりにも偉大なときは、はっきりと説明できません。ヨハネの黙示録を見ると、象徴的なことばがたくさんありますが、それは神様の奥義を人間の言葉で規定できないからです。天の御国も同じです。御国は人間の概念では説明できないほどすばらしいので、たとえで説明されたのです。たとえで説明するしかないという点が、天の御国の第一の特徴です。
イエス様が御国をたとえで説明されたもう一つの理由は、私たちがわかりやすいようにするためです。御国は人間が一度も経験したことのない世界です。それで、イエス様は人間が最もよく理解できる実生活をたとえに用いて教えてくださったのです。
13章でイエス様は、御国を7つのたとえで説明されました。種を蒔く人、毒麦、からし種、パン種、隠された宝、真珠、地引き網のたとえです。農作業に関してたとえたものが4つ、商売に関するたとえが2つ、魚をとることに関するたとえが1つです。それらは、たとえ学識がなくても、当時の人であればだれでもよくわかる内容です。たとえは御国の意味を含んだ地上の話なのです。これは、私たちが御国について誤解しないようにするためのイエス様の方法でもあります。
またイエス様は、私たちが聞いて理解したことを、具体的に確信させるためにたとえを用いられました。「すると、弟子たちが近寄って来て、イエスに言った。『なぜ、彼らにたとえでお話しになったのですか。』イエスは答えて言われた。『あなたがたには、天の御国の奥義を知ることが許されているが、彼らには許されていません』」(マタ 13:10~11)。
イエス様は天の御国の奥義が隠されている理由を説明されたのです。たとえで話されるのは、隠すためではなく、「持っている者はさらに与えられて豊かになり、持たない者は持っているものまでも取り上げられてしまうからです」(マタ 13:12)というみことばのように、さらに与えるためです。つまり、ある人には隠すためですが、本当の意味は、愛する弟子たち、持っている者たち、御国の民が、この天の御国をより明らかに体験し、確信できるようにするためなのです。
聖書の奥義は、神の国にあります。そして、御国についてのたとえは、この神の国の奥義を探り出すことに目的があります。イエス様は、天の御国をこの地に成し遂げるために来られました。イエス様ご自身が天の御国です。イエス様を悟る者が御国を悟る者であり、イエス様を信じる者が御国を所有する者であり、イエス様に仕える者が天の御国を成し遂げる者です。パウロは、「(神は)みこころの奥義を私たちに知らせてくださいました。それは、この方にあって神があらかじめお立てになったみむねによることであり、時がついに満ちて、実現します。いっさいのものがキリストにあって、天にあるもの地にあるものがこの方にあって、一つに集められるのです」(エペ 1:9~10)と言っています。
神の国は奥義です。それは、みむねであり、実現するものです。まことの奥義は、天の御国にあり、その御国の奥義は、イエス・キリストのうちにあります。今、イエス様が語っておられる奥義とは、イエス様ご自身を啓示する内容なのです。それで、イエス様は、たとえによって語られるしかなかったのです。
人々が天の御国についてのそら言に惑わされるのは、御国が日々、自分の心の中で感じられないからです。日々、御国で生きる人々は、イエス様とともに天の御国がすでに自分のうちにあります。イエス様が、農作業や漁や商売に関するたとえを通して御国について語られたのは、自然のすべての秩序や環境、私たちの周りの日常生活を通して、天の御国の真理を知ることができるということです。ですから、自然のすべての現象から霊的な真理を探り出す祝福がなければなりません。一日中、仕事だけをして、疲れたからだで眠りにつくなら、それは死です。しかし、朝、深い眠りから目覚めて、一枚の木の葉、風、鳥など、一つ一つのことから主を感じるなら、それが天の御国なのです。
天の御国は、私たちが死んだ後に行く所ではなく、今、この瞬間から私たちが味わい、適用しなければならない世界です。ですから私たちは、天の御国を私たちのうちで具体的に感じ、適用して、自分のものとしなければなりません。

 

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