いのちを与えるキリストによってつながる

   日本の宣教の課題と展望を考える
 
新潟聖書学院 院長 中村 敏


「あなたがたは、世にあっては患難があります。しかし、勇敢でありなさい。わたしはすでに世に勝ったのです」(ヨハネ 16:33)。
2009年に札幌で開催された第5回日本伝道会議で、私たちは「危機の時代」に生きていると示され、それから7年経ちました。その間に東日本大震災が起こり、私たちを取り巻く状況は一層厳しく、混迷の中にありますが、冒頭の聖句のように、危機の時こそ私たちの土台を確認し直し、前進するチャンスであり、みことばこそ私たちの希望です。今日の韓国の教会を見ても、霊的骨格を作った1907年の大リバイバルは、日本による植民地化に向かう国の一大苦難と危機の中で始まりました。
本稿ではまず今の時代を取り巻く危機を取り上げ、次に宣教の展望を考えます。

1. 私たちが直面している危機
① 世界における危機
2001年の同時多発テロ以降、今日まで、報復と憎悪の連鎖は一層激しくなり、難民の増加による社会不安が広がっています。地球温暖化等の環境破壊はもはや修復不可能と思えるほどで、この環境破壊の究極の原因は、人間のむさぼりの罪です。終末の前兆とも言うべき巨大地震、洪水等の自然災害が頻発しています。東日本大震災に伴う福島原発事故はまぎれもない未曾有の人災であり、現在も復興は途上にあります。
② 日本社会における危機
社会のベースとなるべき家庭の崩壊からくる諸問題が続発し、社会を揺るがしています。夫婦・親子間の虐待、学校におけるいじめ、薬物の乱用や衝動的な殺傷事件が絶えず、ストレス社会の中で自分の怒りや欲望を制御できない人々が増えています。
今、日本の政治はますます右傾化しており、その波により、憲法や教育、マスコミ、治安など、国家と個人の関係や社会秩序をめぐる問題も、どんどん個人の権利や自由が制限され、代わりに国家の権限が拡張されてきました。
③ 教会における危機
日本のプロテスタント人口は61万人とされますが、現在、礼拝や祈祷会の出席者は18万人にとどまります。また、少子高齢化の波は教会にも押し寄せ、青少年の減少、教職・信徒の高齢化により、これまで教会の諸活動を支えてきた団塊の世代が一線を退きつつあり、献身者が減少し、無牧・兼牧の教会が増えています。
かつて日本の信徒は、そのモラルの高さで周りの尊敬を集め、社会の諸分野で「地の塩、世の光」の役割を果たしましたが、近年は、教職者・指導的信徒の中でパワハラ・セクハラなどのスキャンダルが続発しています。日本の教会全体を見ると、この結果、教会の宣教的エネルギーが低下し、教会の関心が内側に向かい、守りやさばき合いに向きがちです。

2. これからの課題と展望
① 信仰を喜びつつ、御国に至るまで保つ
まず何よりも、救われた信徒が、その信仰を御国に至るまで生涯守り続けることです(ヘブ 12:1, 2)。せっかく信仰を持っても、就職・結婚等のハードルにぶつかり、信仰を捨ててしまう人々が多くいます。日本人は周りに左右されやすいため、人ではなくイエス・キリストを一心に見つめて歩むことができるよう、信仰教育にしっかりと取り組みましょう。
② 信仰を次世代に継承する
与えられた信仰を次世代にしっかり継承することが日本宣教の鍵です。そのためにクリスチャンホームの育成がとても大切で、「父の学校」、「母の学校」や各種家庭セミナーに参加し、崩れた家庭を回復する上で、教会の役割は重要です。諸外国と比べると日本の子どもたちのセルフイメージは際立って低いです。親が神様からの愛をいただき、子どもを無条件に愛し、受け入れるとき、子どもは生きる自信が与えられ、人生の指針を得ることができます。家庭の再建こそ、教会の再建、社会の再建の土台です。
③ 福音を日本人が受容しやすいように発信
パウロは福音を伝える際、「ユダヤ人にはユダヤ人のように」伝えるべきことを教えました。従来の日本宣教は、欧米発の宣教や方策で、日本の宗教・文化・習慣に対決姿勢が強く、実を結ばなかったのではないでしょうか。この点で私たちは、日本への適応主義を採用したキリシタン時代の宣教方策から学ぶ点が多くあると思います。最近私は、冠婚葬祭等の通過儀礼の福音化を目指して良き働きをしておられる土浦めぐみ教会の清野勝男子牧師の提唱と実践に注目しています。

私たち一人ひとりは、主の財産の管理を委ねられたしもべです(マタ 25:14~23)。この時代に、自分の置かれた場所で、忠実にその役割を果たしていきたいと思います。私自身は、献身した際、生涯を地方伝道・郷里伝道にささげるよう導かれ、生きてきました。私たちの人生の目標は、成功でも自己実現でもなく、主のしもべとして忠実に生き抜くことです。


中村 敏
1949年、新潟県生まれ。16歳の時、入信。岩手大学、聖書神学舎、米国トリニティ神学校卒業。1975年より、郷里の新潟県で牧会・伝道と神学教育に携わる。現在、新潟聖書学院院長、聖書宣教会講師。

 

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