マタイの福音書の恵み71[ マタイの福音書 12章38~45節 ]

   キリストのまことのしるしを受けなさい
 
オンヌリ教会 前主任牧師 故 ハ・ヨンジョ


そのとき、律法学者、パリサイ人たちのうちのある者がイエスに答えて言った。
「先生。私たちは、あなたからしるしを見せていただきたいのです。」
しかし、イエスは答えて言われた。「悪い、姦淫の時代はしるしを求めています。
だが預言者ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません」(マタ 12:38~39)。


「悪い、姦淫の時代はしるしを求めています」(マタ 12:39)というみことばで注目すべきことは、主は、パリサイ人や律法学者たちの霊的状態と、その時代の精神を同一視されているという点です。しるしを見せてほしいと言ったのは、その当時のすべての人々ではなく、パリサイ人と律法学者たちでしたが、イエス様は「悪い、姦淫の時代」と表現されたのです。このみことばは、悪い、姦淫なもので世を汚染させた張本人は、パリサイ人と律法学者だということを表しています。
ここから私たちは、誤った指導者、特に誤った霊的指導者が、その時代に与える影響力がどれほど大きいかがわかります。誤った霊的指導者に会えば、教会は嵐の中でさまよう船のようになってしまいますが、真の指導者のいる教会は、平安で、勝利する生活へと導かれます。当時、莫大な影響力を与えていたパリサイ人と律法学者たちが悪く淫乱だったために、その時代のすべての民が悪く淫乱になったのです。それでイエス様は、悪い、姦淫の時代と言われたのです。
クリスチャンと教会は、世を悪く言う資格がありません。なぜなら、究極的な責任はクリスチャンと教会にあるからです。私たちが誤った影響を及ぼしているのです。
イエス様は、パリサイ人と律法学者たちの質問に対して、三つの内容で答えられました。第一に、ヨナのしるしのほかには、しるしはないと言われました。ヨナのしるしとは何でしょうか。多様な意味がこのことばの中に含まれていますが、最も重要な意味は、ヨナがみことばに従わず大きな魚の腹の中に3日間入って出てきたように、主は私たちの罪のために十字架で死なれましたが、3日後に再びよみがえられるということです。
「ヨナは三日三晩大魚の腹の中にいましたが、同様に、人の子も三日三晩、地の中にいるからです」(マタ 12:40)。これがまさに、イエス様が見せてくださるしるしです。「わたしがあなたに見せてあげるしるしは、ヨナが魚の腹に入ったように、奇蹟ではなく、死の道、つまり、十字架のしるしです」という意味です。「あなたがたように、悪しく、淫乱で、かたくなな時代に見せてあげるしるしは、わたしが死ぬ道しかない」という意味なのです。
復活のように、完全で究極的なものはありません。今まで、イエス様は病の者をいやし、自然を治め、悪霊を追い出し、死んだ者を生き返らせる超自然的な奇蹟を見せられましたが、このようなすべてのことは、復活に比べれば、影にすぎません。クリスチャンの最大のしるしは、復活を信じることです。まぼろしを見、異言を語り、預言し、奇蹟を起こす程度ではありません。それらも重要なしるしになりえますが、究極的なしるしは、見たことのないイエス様を信じ、最後の勝利を得ることです。
第二に、まことのしるしを持たない人たちが受けるさばきについて説明されました。「ニネベの人々が、さばきのときに、今の時代の人々とともに立って、この人々を罪に定めます。なぜなら、ニネベの人々はヨナの説教で悔い改めたからです。しかし、見なさい。ここにヨナよりもまさった者がいるのです」(マタ 12:41)。最後のさばきのとき、ニネベの人々がユダヤ人を罪に定めるというのです。イエス様とは比べものにならない人物であるヨナが行った説教、それも、喜んでではなく、仕方なく行った説教を聞いても、選ばれた民ではないニネベの人々は悔い改めました。王から民にいたるまで、さらに家畜、すなわち牛や羊にいたるまで断食を命じて、悔い改めたのです。ところが、ヨナよりも偉大なイエス様が、選ばれたイスラエルの民に直接、救いと福音を宣言されたのに、彼らは信じませんでした。
「南の女王が、さばきのときに、今の時代の人々とともに立って、この人々を罪に定めます。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果てから来たからです。しかし、見なさい。ここにソロモンよりもまさった者がいるのです」(マタ 12:42)。ここで、南の女王とは、当時、アラビア半島南部にあったとされるシェバの女王を指します。ソロモンは、神様から知恵を授けられた王でした。シェバの女王は、ソロモンの知恵についての名声を聞き、地の果てから訪れて来て、知恵を得ようとしました。ところが、ソロモンと比べることもできない神の御子イエス・キリストが来られて、みことばを語られたのに聞かないなら、さばきのときにシェバの女王が来て罪に定めるというのです。
悪く姦淫の時代は、さばきのときに罪に定められます。このみことばは、彼らのためだけでなく、私たちのためのみことばでもあります。最近、私たちは、どれだけ多くの説教を聞いているでしょうか。インターネットを開けば、聖書の学び、説教、リバイバル集会などをいくらでも聞くことができます。信仰書もたくさんあります。それにもかかわらず、私たちの霊的な状態は、地を這い回っているようです。
このように、今の時代はすべてのものが便利になりましたが、私たちは何が変わったのでしょうか。私たちの霊性は深まるどころか、ますますレベルが低くなっています。100年前の信仰者の信仰と、今の私たちの信仰は、比べものになりません。彼らは、いのちがけの信仰でした。しかし、私たちは、実に怠惰な信仰生活を送っています。
第三に、イエス様は偽りのしるしを求める者たちに、これから起こる霊的な現象について話されました。「汚れた霊が人から出て行って、水のない地をさまよいながら休み場を捜しますが、見つかりません。そこで、『出て来た自分の家に帰ろう』と言って、帰って見ると、家はあいていて、掃除してきちんとかたづいていました。そこで、出かけて行って、自分よりも悪いほかの霊を七つ連れて来て、みな入り込んでそこに住みつくのです。そうなると、その人の後の状態は、初めよりもさらに悪くなります。邪悪なこの時代もまた、そういうことになるのです」(マタ 12:43~45)。
汚れた霊は、イエス様がおられる間は力を行使できず、結局泣きながら去っていきます。悪霊は決してイエス様に勝つことができません。イエス様が行かれる所はどこでも、悪霊は敗北して去っていきました。病、絶望、死は、イエス様のおられる間は力を働かせることができません。しかし、悪霊は必ず戻ってくるということを知らなければなりません。
悪霊が出たからといって喜んではなりません。なぜなら、その悪霊は、必ず戻って来るからです。悪霊は、水のない地、つまり荒野に追い出されます。しかし、荒野では休み場が見つからないので、堕落した人間のもとに戻って来るのです。
悪霊は、祈らない人、堕落した人のたましいに宿ることを最も好みます。どんなに家をきれいに片づけ、修理したとしても、その家があいていれば、必ず悪霊によって占領されてしまうのです。ここで、家は人間の心を意味します。イエス様を信じ、教会に通い、悪い習慣もすべて捨てたとしたら、その人はだれが見ても良い人に見えますが、その人の心に主人がいなくてあいていれば、それが問題になるのです。
イエス様を信じればそれでいいという考えは、間違っています。「イエス様の御名によって命じる。悪霊よ、出て行け!」と言えば、悪霊は泣きながら出て行き、病気も治ります。しかし、その後、心の中にイエス・キリストを主人としてお迎えしなければ、悪霊はさらに悪い霊を連れて来て、私たちをさらに悪い状態にさせるでしょう。
悪霊が出て行ったという事実よりも重要なことは、悪霊が戻って来ることができないようにすることです。イエス様を主人としてお迎えし、悪霊が獅子のように襲い掛かってきたとしても、私たちのうちに入って来られないようにすることが、勝利の秘訣です。イエス様を、きょうだけではなく、いつまでも私たちの主人、また王としてお迎えし、仕えながら生きる道だけが生きる道なのです。

 

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