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いのちを与えるキリストによってつながる
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「愛する」を実行に移す |
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日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団 中央聖書神学校 理事長 細井 眞
2011年3月11日の東日本大震災から5年の歳月が流れました。当時、私たちのグループは、「宣教力UP!」の標語を掲げて、宣教の力を受けること、宣教のために聖書を学ぶこと、実践力を鍛えることなど、宣教のためになることは、どんなことでもチャレンジし、質的向上を図り、人々に福音を語ろうとしていました。そのような中でのこの歴史的な大惨事は、人々を取り囲む政治的、経済的、社会的環境を大きく変え、同時に私たちの福音の本質的理解と宣教に対する姿勢を変えてしまいました。被災地への復興祈祷、支援献金、救済支援活動は、イエス・キリストご自身が私たちにチャレンジされた「神を愛すること」と「隣人を自分自身のように愛すること」が重要課題であることを再確認させられたのです。私たちの宣教が効率的、機械的になり、いつの間にか形骸化、義務化してきてしまっていたことに気づかずにいたのです。人々は愛を必要としていました。 ルカの福音書10章25節以下には、イエス様が律法の専門家から質問を受けられ、それに答えられる場面が描かれています。イエス様は、人が永遠のいのちを得るためには「愛する」ことを実行に移さなければならないと語られました。続けて、隣人とはだれかという質問については、あの有名な「サマリヤ人のたとえ」をもって答えられました。ある人が旅の途中で強盗に襲われ、身ぐるみ剥がされて瀕死の状態になった人を助けたのは、祭司やレビ人のように神の教えと実践を学んでいた人たちではなく、当時、見下されていたサマリヤ人でした。彼は、危険や犠牲や立場をいとわずにこの者を助け、関わりを持ち続けました。イエス様は、だれが隣人であるかと問われ、「その人にあわれみをかけてやった人です」と答えた律法の専門家に、「あなたも行って同じようにしなさい」とチャレンジされました。 「愛する」を実行に移すということは、助けを必要としている人に犠牲を払って手を差し伸べること、すなわち、「与える」ことだと教えられました。ヨハネの福音書3章16節には、神様の私たちに対する偉大なメッセージが語られています。「神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。」 神様は「愛する」を実行に移すために、ひとり子であるイエス様を私たちに「与え」られました。イエス様は、神の子としてのあり方を捨てて、人として私たちのところに来られ、福音を語り、人々にいやしと解放を与えられ、十字架への道を忠実に歩まれ、ついには、私たちのためにご自身のいのちまでも与えられました。この十字架の死後、イエス様は三日目によみがえられ、多くの弟子たち、及び500人以上の人々に現れて、復活の希望を与えられました。イエス様が昇天される前、弟子たちに大宣教命令を与えられ、「都にとどまって、まず聖霊を受けるように」と語られました。それは、かつてイエス様が十二弟子を派遣したときのように、力と権威を弟子たちに与えるためでした。弟子たちは、聖霊を受けて力が与えられ、人々にイエス様の十字架と復活の福音を語り、いやしと解放を与えました。聖霊様と弟子たちによって福音は広められていきました。私たちは、ただ福音を語るのではなく、助けを必要としている人に犠牲を払って手を差し伸べること、「与える」こと、すなわち、「愛する」を実行に移すことを通して福音を広げていく必要があります。 私たちのグループでは、2012年に標語を「宣教力UP!」から「御霊による輪、愛の広がり」に替えて歩み始めました。神様の愛が広められていくことが、御国の拡大につながっていくことだと、大震災を通して示されたからです。今も釜石市と東松島市に支援センターを設け、福島にも拠点を設けて活動し続けています。東京北区にある私の属する教会でも、月に一度ですが、釜石市の中心部にある釜石AG支援センターを中心に、また、大槌町にある大槌ジョイフルハウスとの協力の中で、仮設住宅などを回り、支援活動を継続しています。そこでは「愛する」を実行に移すことを通して、キリストに出会う人たちが与えられてきています。 私たちは「与える」ことに躊躇することが多いのではないでしょうか。すぐに計算をして、見返りを求めます。一般書籍の中には『The Go-Giver あたえる人があたえられる』とか『Give&Take 与える人こそ成功する時代』などという本が出ていて、それがいかにビジネスにつながっていったかが語られています。しかし、私たちの主は、見返りを求めることなく、最後まで与え続けられた方です。神様がイエス様を通して与えてくださった「愛する」は無償の愛で、今も聖霊様を通して私たちに与え続けておられます。ですから、私たちも力を受けて、弟子たちの宣教を導かれた聖霊様とともに、この「愛する」を躊躇することなく実行に移していく者となりましょう。
細井 眞(ほそい まこと) 日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団 中央聖書神学校卒業。米国オクラホマ・シティ大学留学。1981年より十条キリスト教会にて伝道活動に従事。1995年より十条キリスト教会主任牧師に就任、現在に至る。アッセンブリー教団の音楽委員長、青少年伝道委員長、関東北東教区長、総務局長、そして理事長を歴任。現在、中央聖書神学校理事長、日本ペンテコステ・ネットワーク代表。
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