いのちを与えるキリストによってつながる

   アガペー共同体としての教会
 
ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会 主管牧師 峯野龍弘


そもそもキリストのからだである教会は、「アガペー共同体」でなければなりません。アガペー共同体とは、“キリストの十字架の贖罪の「愛」(アガペー)によってアガペーされた者が、キリストのアガペーに倣って互いにアガペーし合い、さながら一人の人間のからだのごとく和合し、一体となることによって、そこにうるわしい聖なる共同体を形成し、あたかもアガペーの主であるキリストが、現代に生きて歩んでおられることを彷彿させるような、しかも主の御心に基づいて地の塩、世の光のように尊い社会的使命を果たして行く共同体”のことを言います。これは、天地創造の初めに神が創造された“エデンの園”の回復、つまり神を中心とした愛に満ちた平和で聖い人間世界の回復のわざであり、また使徒の働き2章における聖霊降臨直後に生み出された“初代教会”の現代的再現です。さらには、やがて来るべきキリスト再臨後に実現するうるわしき“新天新地”の生活の雛形的先取りでもあるのです。
ですから、アガペー共同体としての理想の教会の姿は、人間同士が人種、言語、国籍、風俗習慣、皮膚の色、階級、貧富、教育の程度、年齢、性別、賜物などの一切の相異性を越えて、天地の創造者である父なる神の御旨に従って、互いに愛し合い、仕え合いながら、美しい人間関係を結び、そこに神を中心とした聖き人間社会を形成していくところにあります。それゆえ教会は、人間社会から遊離してはならず、むしろその中に深く根ざし、美しい人間社会の形成の中核となり、真の人間関係と社会を生み出していく牽引力とならなければなりません。まさに教会は、理想的人間社会のモデルであり、苗床です。言い換えれば、神の天地創造時のビジョンであった地上の神の楽園化(エデン化)こそ、アガペー共同体としての教会のこの世における使命であり、存在目的であると言っても過言ではありません。
それゆえ真の教会形成とは、地上の神の楽園化への奉仕のわざであり、宣教とは、全世界のすべての人々に向かってなされる神の楽園、つまりアガペー共同体への招きのわざでもあり、同時に、その全地万民への拡大、浸透のわざを意味するのだと言えましょう。ここには教会形成と宣教の概念に対する“アガペー共同体”という観点からの抜本的見直しが、要請される必要があります。
ちなみに、先に述べた使徒の働きの2章ならびに4章に出てくるペンテコステ時の聖霊の傾注と充満の結果として実現された初代教会の姿の中には、まさに見事なアガペー共同体の開花があり、エデンの園的人間社会の実現が証明されています(使 2:43~47;4:32~37)。この事実は、今日、どれほど大きな希望と確信を約束してくれることでしょう。アガペー共同体としての教会と理想の人間社会の到来と実現は、決して不可能ではないのです。約束の聖霊がその到来を待ち望む一人一人の上に下るとき、一人一人は力を受け(使 1:8)、人間の知恵や力によっては到底実現不可能と思われていたこの夢を、見事に実現可能なものにしてくださるのです。実に聖霊こそ“アガペーの御霊”であって、その聖霊ご自身を内に宿し、かつ満たしていただくとき、これまで私たちを支配し、互いにアガペーに生きることを不可能にしていた一切の罪の力、つまり“自己中心性”(かたくなに自己とその欲求に執着する憎いエゴイズム)の力から解放され、私たちは真にアガペーし合うことができるようになるのです。それで使徒パウロは、「霊の結ぶ実は愛(アガペー)」(ガラ 5:22、新共同訳)だと明言しました。したがって、聖徒は常に聖霊に満たされて歩むことが必要なのです。そのとき、私たちは、アガペーに敵対する“自己中心性”という恐るべき内心の強敵を、聖霊により、キリストの十字架の血潮による聖めの恵みによって克服し、時々刻々アガペーに生きることができるのです。
では、私たちがかくまでしてアガペーに生き、さらにアガペー共同体を形成していくべき理由と動機は、どこから来るのでしょうか。それは言うまでもなく、主イエスご自身が示された絶大なご愛、つまり「アガペー」と、そのご生涯の模範とによるのです。主はこう言われました。「あなたがたに新しい掟を与える。互いに愛(アガペー)し合いなさい。わたしがあなたがたを愛(アガペー)したように、あなたがたも互いに愛(アガペー)し合いなさい。互いに愛(アガペー)し合うならば、それによってあなたがたがわたしの弟子であることを、皆が知るようになる」(ヨハ 13:34~35、新共同訳)からであると。これを主は「新しい掟」と呼ばれましたが、小僕はこれをマタイの福音書22章37~40節と共に「アガペー共同体の原理」と呼んでいます。ここにこそ、お互いがアガペー共同体を形成しなければならない究極の理由と動機が明示されているのです。ですから、何としても私たちは、日々ひたすら「アガペー共同体」形成に努めようではありませんか!


峯野龍弘
1939年8月10日、横浜生まれ。1962年、日本大学法学部法律学科卒業。1965年、東京聖書学校卒業。2006年、米国アズベリー神学校、2008年、韓国トーチ・トリニティー神学大学より名誉神学博士号を授与。1965~68年、日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会。1968年より現在までウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会の牧会にあたるとともに、各地のブランチ教会を司る主管牧師でもある。

 

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