働き手の育成
日本CGNTV「特別座談会」より
CGNTVでは「神学のある牧会、健康な教会」というテーマで座談会を行いました。一部に続き、二部でも、国分寺バプテスト教会牧師の米内宏明先生を司会にお迎えし、東京聖書学校副校長の深谷春男先生、東京基督教大学学長の小林高徳先生、神戸改革派神学校前校長の市川康則先生、中央聖書神学校校長の北野耕一先生からお話を伺いました。
働き手の育成 小林先生 今の若い人たちは、他者との関係作りに非常に苦労していて、ソーシャルネットワークを通じて人々との関係を持っている世代です。しかし、他者との関わりを持つことは大切だと思います。通信教育もありますが、同じ世代の同じビジョンを持つ人たちと、互いに励まし合って教会を形成し、宣教することが必要になります。ですから、どのように若者たちに訴えかけるかというのが私たちの課題です。 市川先生 神学校は本来、牧師・伝道師の養成機関ですが、多くの信徒が学ぶことも大切です。もっとよく聖書を学びたいと思っている信徒の方たちも大勢います。ですから、神学校のカリキュラムを多様化し、さまざまなやり方で学んでいただきたいと思います。
神学校と教会との連携に関して 深谷先生 日本基督教団は1700ほどの教会のうち、無牧の教会が300以上あります。そして自分の教会を持たない牧師・伝道師が500人ほどいます。これらの牧師・伝道師が、無牧教会に行ったらいいと思いますが、そうはうまくいきません。日本基督教団は、さまざまな宗派の教会が集まっている教団なので、なかなかうまくいかないというのが現状です。
通信制の神学校ではどのように学んでいるか 北野先生 2008年に通信科を設立し、現在39名が学んでいます。授業は本科と同じで、学ぶだけではなくインターンシップをします。人間関係を深めるという意味で、母教会以外の教会に派遣しています。また、年に一度は本科生とともにスクーリングをします。同時に、一人一人にメンターがついて、1~2週間に一度はコンタクトを取り、直接会えないというデメリットを埋めようとしています。すでに14名が卒業し、それぞれの教会で伝道師や信徒伝道者として働いています。
東京基督教大学では、どのような学びをしているか小林先生 私たちは宣教を包括的に捉え、社会においてキリストに仕える人たちを養成するため、国際キリスト教福祉学科を作りました。日本の高齢化する社会に備え、介護福祉のリーダーの養成に取り組んでいます。
以前の神学校と今の神学校の違い 深谷先生 東京聖書学校では、朝6時から始まる早天祈祷は必ず出るようにし、みんなでいっしょに1時間祈ります。また、学問的な学びのほかに、人間関係の学びも強調しています。牧会に出て行く時には、人との関わり方がとても大事だと思うからです。 小林先生 これまでのような一国一城型の牧師ではなく、いろいろな人の意見に耳を傾け、協力することができる牧師にならなければなりません。もう一つは、教団・教派を超えて宣教のために協力することも必要だと思います。日本の教会の中にも多国籍、多文化の方たちが来られるようになりました。ですから、異文化を理解して受け入れ、互いの文化の壁を超えてともに礼拝をささげていく働きが必要なのではないでしょうか。 神学校が目指す方向性と役割 深谷先生 私たちの原点は、聖書の信仰に立つということです。十字架の贖いをはっきりと信じることと、主権を神様に明け渡して、聖化される恵みの中で歩み抜くことに、私たちの人生のすべてがかかっています。ですから、福音的教会を形成し続けていくことが重要であると考えています。 小林先生 私たちは他の領域に出て行く働き手を養成しています。そのこともあって、一人一人の学生を、神の似姿に造られた尊い人格として、キリストに似た人格に成長することを目指しています。 市川先生 有神的世界観、つまり、聖所を基準として世を見る思考の訓練を大事にしています。また、信徒にできる一番近道の宣教は、教会に連れて来ることですが、そのためには「説教がわかる」ということが大前提になります。ですから、聞いて慰められ、励まされるように福音を語る説教者を作ることに重きを置いています。 北野先生 神学教育によって知性の筋肉をつけることは重要ですが、福音を伝える者の足の筋肉もつけなくてはいけません。そのため実践訓練に力を入れ、宣教スピリットを学生たちに植えつけなければなりません。それは、神学という理念だけではなく、実際に出て行き、現場を経験することによって身に着けることができます。実践的な教育を通して伝道者として霊が向上することこそ、今の神学生に求められていると思います。
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