霊的に目ざめる日本の教会

   十字架と血潮、復活にこめられた福音の意味
 
キリスト品川教会主任牧師 吉村和雄


主イエスの十字架は二つの事実を私たちに語っています。一つは、私たち人間の罪が主イエスを十字架につけて殺したということです。もう一つは、主イエスは神さまのみこころに従って、私たちの罪が赦されるように、十字架で贖いの死を遂げてくださったということです。

主イエスの死は、ユダヤ人の指導者たちが主をねたんだことから始まります。そして、弟子の一人のイスカリオテ・ユダが裏切り、主が捕らえられると、ほかの弟子たちも主を見捨てて逃げてしまいます。裁判の席で、ローマ総督ピラトは主イエスに罪がないことを知って、何とか主を放免しようとしますが、群衆の声に押し切られて十字架刑を宣告してしまいます。群衆に暴動を起こされて、総督としての自分の経歴に傷がつくことを恐れたのです。そして群衆は、指導者たちに扇動されて、「十字架につけろ」と叫んだのでした。周囲の動きに流されやすい人間の弱さがそこに見えます。
ピラトの裁判の後に、兵士たちは皆で主イエスを嘲弄しました。また、十字架上の主に対しても、周囲の人々はあざけりました。彼らが主をあざけった理由は、主が「ユダヤ人の王」であったからです。王である者が王としての姿を示せなくなったとき、その人はあざけりの対象になります。それは私たちの中に、無意識のうちに、自分の上に立つ者の存在を認めたくないという思いがあることを示しています。ハイデルベルク信仰問答で言われているとおり、私たちは生まれつき、神と人とを憎む傾向にあるのです。これが、十字架が明らかにしている私たちの悲惨な姿なのです。
このような罪を目の前にしながら、それに対して主は、一切抵抗することをなさいませんでした。裁判の中で、偽証人が立って偽りの証言をしても、ピラトが自分の信念を曲げて死刑の判決を下しても、あるいは兵士たちに嘲弄されても、一切反論されませんでした。それはイザヤ書53章7節にある主のしもべの姿そのものです。しかしながら、そのように主が無抵抗を貫かれたために、人間のあらゆる罪と弱さが主の前に明らかになりました。主イエスは、あらゆる人間の罪と弱さを引きずり出すようにして、十字架にかかられたのです。
しかしそれは、私たちが持っているそれらの罪と弱さを糾弾するためではありません。主は、そのようにして、私たちがどこから救われているのかを明らかにされたのです。ですから私たちは、自分たちの罪がどれほど深く、その悲惨さがどれほど大きくても、望みを失うことはありません。

主は十字架の上で血を流されました。その血について、主は弟子たちとなさった過越の食事の席で、「これは、わたしの契約の血です。罪を赦すために多くの人のために流されるものです」(マタ 26:28)と言っておられます。契約の血とは、出エジプト記24章において、イスラエルが神と契約を結んだ時に、モーセが民と祭壇に振りかけたものです。主イエスは、ご自分の血によって、この契約を新しく結び直してくださったのです。それは全能の神が私たちの神となってくださり、私たちがその民となるという契約です。主イエスを信じ、洗礼を受けて主イエスに従う者は、この契約の中に入れていただけるのです。
さらに主はその時、ご自分のからだであるパンを食べると同時に、ご自分の血であるぶどう酒を飲むように弟子たちに言われました。主イエスと私たちの結びつきは、単なる知識や言葉による理解を超えたものです。それは、ご自分を食べさせてでも私たちを永遠のいのちに生かしたいという主の願いによるのです。この願いに従って、私たちは主のからだを食べ、その血を飲むのです。食べたものは必ずこの私の血となり肉となります。主イエスはそこまで深く、私たちと結びついてくださるのです。

そのような主イエスのわざは、完全に父なる神さまのみこころによるものです。それを示しているのが主の復活です。主は十字架の死に至るまで完全に神さまに服従されました。神さまは、そのような主イエスを、陰府の中に捨てておくことをなさいせんでした。このように、主イエスをみこころにかなう者として愛される神さまの愛が、主イエスの復活という出来事を起こしたのです。
そのことは、私たちの復活の根拠でもあります。復活があるかどうかという問答の中で、主は「わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である」という神さまの言葉を引用されました(マタ 22:32)。地上的にはすでに死んでいなくなった人でも、神さまが「わたしは○○の神である」と言われるなら、その人は死んではいないと言われたのです。神さまがそう言われるほどに、その人との間に愛の結びつきを持っていてくださるなら、その人は滅びることなく、必ず復活させていただけます。ここに私たちの復活の確かさがあるのです。


吉村和雄
1949年福島県生まれ。
東京大学工学部精密機械工学科卒業後、民間企業のエンジニアを経て、1983年、東京神学大学修士課程を修了した後、キリスト品川教会副牧師に就任。1990年より主任牧師として現在に至る。

 

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