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霊的に目ざめる日本の教会
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終末的時代における 教会の使命と覚醒 |
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ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会 主管牧師 峯野龍弘
今や現代社会は、苦悩に満ちた終末的時代を迎えています。特に日本社会は、外見上の華やいだ笑顔の背後に、悲しみや不安に満ちた心が隠されています。それは、さながら私生活の中の悲しみに堪えて、ひたすら観客の前でおどけて演技するサーカス一座のピエロのようです。このような時代の真っ只中に遣わされている教会とクリスチャンは、どうしたらよいのでしょうか。その果たすべきミッションは何なのでしょうか! それは、この醜いまでに人間関係が崩壊しつつある21世紀社会に向けて、キリストの愛の奥義を明白に宣証することによって、そこに真に美しい人間関係と社会を回復していくこと、いや、新創造していくことではないでしょうか。そこには三つの重要な内容と働きとが含まれています。それは、① キリストの愛による美しい人間性の回復、② キリストの愛による美しい人間関係の再構築、③キリストの愛による美しい共同体(社会)の新形成です。これは、強烈な表現を許していただくならば、キリストの愛によって変革を可能にする「愛による一大文化革命」と言えます。ここにこそ、究極の教会とクリスチャンの使命と責任があります。 ちなみに、教会とクリスチャンが果たすべき宣教の究極的な目的は何でしょうか。その真の宣教の目的は、この恐ろしいほどに愛の冷え切った終末的現代社会と世界に向けて、主イエスが命じているとおりに、「全世界に出て行き、すべての造られた者に、福音を宣べ伝え」(マコ 16:15)ることにより、「地の果てにまで」(使 1:8)、いわゆる「全地」、「全人類」が、遂にキリストの愛の内にあって、みな一つになり、そこに愛と平和と義の実に満ちあふれた一大「愛の共同体」としての「地球大の愛の新世界」を実現することです。ここにこそ、主の宣教派遣命令の究極的な目的があります。まさしく使徒パウロがエペソ人への手紙において展開した教会論とキリスト者論は、まぎれもなくこの愛の一大共同体としての“キリストにある新世界”を展望し、その実現を目指したものでした(エペ 1:10;2:13~22;4:1~17等参照)。 さて、そこで主より一人一人に要請されているこの尊い究極の使命・目的を達成するためには、具体的にいかなるアプローチが必要なのでしょうか。それは「愛の文化」の発信を通してです。そのためには、教会は常に「愛の文化」の「殿堂」とならなければなりませんん。そして、お互い個々のクリスチャンは、キリストの「愛の文化」の「担い手」です。 ここで言う「愛の文化」とは、「キリストの愛を基に、その上に築かれていく、美しい人間性と人間関係、さらに共同体を生み出していくために必要な、日常生活の中に生きて働く心と生活上の祝福に満ちたすべての諸要素」です。 キリストにある「愛の文化」にはおおむね以下のような素晴らしい「改変力」があります。 ① 慰めと安息を与える(平安) ② いやし、新しく生きる力を与える(治癒) ③ 聖く生き抜く力を与える(聖化) a. あらゆる試練・困難を克服する力(忍耐) b. 無から有を生み出す力(創造) c. 犠牲を甘受し他者に仕える力(献身) ④ 愛と受容の力を与える(隣人愛) ⑤ 神には栄光、人には祝福をもたらすことができる(神の栄光) かくして今日、世にある教会とクリスチャンは、どこにいても、あらゆる領域でこの改変力を持つ「愛の文化」を発信・提供し、そこに「愛の文化」を生み出していかなければなりません。そのとき、人々は大きな慰めと安息、いやしと聖く生きる力を受け、そして愛に満たされた美しい人間性と人間関係を修復し、さらには美しい愛による共同体としての共生社会を実現していくことができるのです。 さて、以上のように考えてくるとき、今は亡きハ・ヨンジョ師が地上に残された「ラブ・ソナタ」宣教が、まさにキリストの「愛の文化」を発信し、苦悩する現代社会のすべての人々に「愛の文化」のもたらす偉大な改変力を見事に実証し、眼前に鮮やかに映し出して見せてくれた一大スペクタクルであったことに気づかされます。そこに身を置く者はだれもがキリストの愛の懐の中に抱かれました。男も女も、大人も子どもも、老人も若者も、そしていかなる地域差も、更には国籍言語・風俗習慣をも超えて「みな、キリスト・イエスにあって、一つ」(ガラ 3:28)になることができました。そこに働く「キリストの愛」が、お互いを一つにしてくれたからです。そこは慰めと平安、いやしと力、労苦と犠牲を惜しまぬ献身、相互受容と愛の交わり、神の栄光が満ちあふれました。まさに「愛の共同体」の実現であり、「愛の新世界」の到来でした。筆者はここに、苦悩する終末的現代社会への真の教会とクリスチャンの使命とその究極的存在目的を見る思いがしました。現代教会とクリスチャンよ、今こそ、この使命に目覚めようではありませんか!
峯野龍弘 1939年8月10日、横浜生まれ。1962年、日本大学法学部法律学科卒業。1965年、東京聖書学校卒業。2006年、米国アズベリー神学校、2008年、韓国トーチ・トリニティー神学大学より名誉神学博士号を授与。1965~68年、日本基督教団桜ヶ丘教会で牧会。1968年より現在までウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会の牧会にあたるとともに、各地のブランチ教会を司る主管牧師でもある。
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