教会成長のための牧会戦略

   世界宣教とイスラム“暗やみに光を”
 
合同神学大学院 宣教学教授 チャン・マタイ


この100年間の世界の人口とムスリムの人口増加状況を見ると、1900年から2050年にかけて世界人口が約6倍に成長し、ムスリムは12倍以上、2億から25億人に増加するものと予想されています。また、ムスリム人口が全人口の26.4%になるとも言われています。
今日、私たちは、特に日本や韓国などの東アジアのクリスチャンたちは、ムスリムとの正しい関係と宣教のために、正しい聖書的レンズをかけ、この先、私たちが進むべき正しい方向性を探さなければなりません。

1.健全な聖書的理解が必要です
私たちは聖書を通してムスリムとの関係と宣教について、斬新に再発見する必要があります。ちょうどマタイの福音書5章で、イエスが「…と言われたのを、あなたがたは聞いています。しかし、わたしはあなたがたに言います」と言って、弟子たちに旧約を再解釈されたようにです。
1)イエスの手本に倣いましょう
ルカの福音書2章46~47節では、イエスが働きを始める前、12歳の時からどのようにご自身を準備されたかがよく表れています。イエスが現地の人たちと共に座り、聞き、質問し、また、その当時の話題や神学的思想について理解し、適切に答えられたように、私たちも、イエスの手本に倣ってイスラム教とムスリムについてよく理解しなければなりません。今日、ムスリムの顔は非常に多様です。迷信を信じるグループ、宣教するグループ、政治的なグループ、武装テロをするグループ、進歩的なグループなど、非常に多様です。事実、武装テロのムスリムは、全ムスリム人口の0.02%にもならないほどですが、この少数のムスリムが世を騒がしているのです。
2)ムスリムを人として尊重しましょう
ユダヤ人のペテロが、異邦人のコルネリオを訪れ、初めて会ったときに言った最初のひとことは何でしたか。「私もひとりの人間です」と言いました。人種の偏見は、明らかな罪であることにペテロは気づきました。私たちもムスリムに「私もあなたも同じ人間です」と言えなければなりません。神の許しのもと多様な人種があることを信じ、ムスリムをひとつの仲間として尊重しなければなりません。「何事でも、自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい」(マタ 7:12)。
3)ムスリムという隣人を愛しましょう
「あなたの隣人を愛しなさい」という命令よりも、「あなたの在留異国人を愛しなさい(しいたげてはならない)」という命令のほうが、聖書にはより多く出てきます(出 22:21;23:9;24:17;27:19、レビ 19:33,34、申 10:19参照)。神は「在留異国人を愛してこれに食物と着物を与えられる」(申 10:18)と言われました。
4)役割をよく理解しましょう
ムスリムを祝福することに、教会と政府の役割を区分するのはとても重要です。政府はテロや戦争を防ぐ役割をせねばならず、教会は敵をも愛する神の国の道具としての使命を担わなければなりません。このような役割に対する誤解のために、ヨーロッパの教会で十字軍戦争が起こり、教会自ら大きな罪を犯したのです。
5)多重文化のチャレンジを超えましょう
ムスリムと良い関係を結ぶためには、さまざまな障壁を超えなければなりません。イエスは、真昼間にサマリヤの女に会いました。真昼間に異邦人の女と私的な対話をするために、イエスは当時の性差別の壁を超えられました。ユダヤ人として異邦人に会うのも難しいことですが、民族の壁も喜んで超えられました。誤解される危険を甘受し、深刻な宗教と民族の壁を超えて、ユダヤ人がサマリヤ人の女に会ったのです。イエスは、サマリヤの女の個人的問題を救いの対話へと発展させ、彼女を神の国(真の信仰)へと導かれました。このように、イエスが多文化の壁を克服された姿を通して(ヨハ 4:1~42)、私たちも知恵と愛によりムスリムに近づかなければなりません。

2. 常識的にすべきことと特別な恵みの領域ですべきこと
私たちは、一般の恵みの領域と、特別な恵みの領域を区分して、ムスリムに対する態度を理解しなければなりません。もちろん、それぞれの領域で教会と政府の役割は違います。
1)一般常識の領域で
この1400年間、ユダヤ人、クリスチャン、ムスリムは、それぞれの宗教的な確信をもって、どれほど徹底して恐ろしい悪を行ってきたことでしょうか。今や私たちは、宗教の名によって悪を行うことをやめ、常識的なことからもう一度始めなければなりません。
ドイツ政府が人口調査中に、ドイツ内のムスリムに最も必要なものは何かと聞いたとき、「ドイツの家庭に私たちを招いてほしい」という回答が最も高い割合を占めました。慣れない外国で、寂しく、無視されながら生きてきたので、人としての待遇を受けたいというのが彼らの心情です。私たちも周りにいるムスリムに、心から仕えなければなりません。
アジア国内にムスリムのテロリストが入って来て活動するおそれがあります。私たちはそのような犯罪が起こらないよう予防し、政府と協力しなければなりません。国内のムスリムの子どもたちの学校給食のために、ムスリムの伝統に従うムスリムの食事をどのように提供するのか。ムスリムの女子学生が学校で頭を覆うヒジャブを使えるか。モスクからアザーンの音(祈りの合図の音)が鳴ったとき、祈りを許すのか。そのようなことを話し合いながら、さまざまなチャレンジを互いに克服していかなければなりません。
2)特別な恵みの領域で
基本的なことは必ず覚えて実践しましょう。神がムスリムも創造され、彼らのためにイエス・キリストが十字架で血を流され、墓からよみがえられたということを覚えなければなりません。ムスリムが不法だと思う食事(特に豚肉、酒など)を勧めないなど、基本的な文化をよく理解し、尊重しなければなりません。「三位一体」や「神の御子」などの用語の使用に気をつけなければなりません。そして、神の愛と力が現れた福音にある勝利を確信し、彼らを愛する心を持てるよう備えることが最も重要です。彼らに会うとき、恐れる心を持たないようにしなければなりません。彼らを尊重して愛するとき、彼らも心を開いて友だちになり、互いに学び合う中で、福音を分かち合うことができます。多くの敬虔なムスリムたちは聖書を持ちたがるので、その国の言葉で訳されたきれいな聖書を準備して丁重に渡すなら、何よりも良いプレゼントになるでしょう。いったん彼らが聖書を読み始めるなら、みわざが起こります。特に、敵を愛しなさいという山上の垂訓は、ムスリムのたましいにとって霊的なオアシスになります。律法に染まった彼らのたましいが、永遠のいのちの水に出会い、大きく感動するのです。
教会の聖徒たちをよく準備させましょう。最近、世界の40カ国でイエス・キリストを受け入れたムスリム回心者650人を対象に、「回心において最も大きな影響を及ぼしたこと」を調査した結果、「クリスチャンたちの親切な生き方」が最も多かったことにとても励まされました。「愛には恐れがありません。全き愛は恐れを締め出します」(Ⅰヨハ 4:18)。一杯のお茶、温かい言葉、家にムスリムを招いたこと、彼らの失敗を受け入れる小さな親切などが、彼らをイエスへと導いたのです。そして、ムスリムを理解し、福音を伝えるために、適切な訓練を受けなければなりません。地域教会が「ムスリムを愛する学び会」を開いて、関心のある人たちを訓練し、少しずつ実を結んでいます。訓練を受けた聖徒を中心にチームを組み、ムスリムに具体的に仕えられるよう助けなければなりません。そして、仕えているムスリムの名前と状況を具体的に、そして継続的に祈るとき、奇蹟が起こります。
多文化の働きに積極的に加わりましょう。牧会者と地域教会の聖徒が、教会で多文化センターを運営したり、政府が運営する多文化センターに積極的に協力しましょう。その国の言葉のイエスの映画、聖書、トラクトを彼らに適切に伝えるなら、彼らが福音を知るのに大きな助けとなります。
海外のムスリム宣教のために、次世代と現地人たちを備えさせましょう。1世紀が過ぎた今日、イスラム宣教に多くの発展と実があることを、父なる神と先に歩まれた先達たちの労苦や犠牲に心から感謝します。しかし、21世紀はまた違う時代です。新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れなければなりません(マタ 9:17参照)。福音を過去の古いやり方ではなく、21世紀の環境に合った器に入れて伝えなければなりません。それに伴い、正しく適切な宣教師の選抜と訓練と準備が必要です。最も重要なのは、世界の次世代の若者と、現地クリスチャンを備えさせることです。
若者たちに、ムスリム宣教の新しい方向性を示すことが至急です。ムスリムの国に行く長期宣教師、短期宣教師、その他の専門家(社会人、ビジネスマン、外交官など)たちをよく判別して、それぞれの役割と状況に合わせて、適切な訓練をしなければなりません。
2030年にはムスリムが世界の人口の26.4%になるとすれば、ムスリムが最も大きな未伝道種族グループになるでしょう。そうなれば、世界のクリスチャンのほとんどが生活する地域、すなわちアフリカ、アジアの教会がある所に90%以上のムスリムが生活することになります。したがって、このようなアフリカとアジアの教会によく仕え、彼らの隣人であるムスリムたちに近づくよう助けることが、最優先事項となるべきです。宣教師と宣教師を送る国の教会の役割も足並みをそろえて戦略的に新しく再調節しなければなりません。先駆けて宣教してきた西欧と現地人リーダーと共に、アジアの教会リーダーたちが謙遜に仕え、協力すれば、肯定的な実を結ぶことでしょう。
ムスリム宣教の専門団体、研究所などを積極的に支援しましょう。上記に挙げたさまざまな専門的課題、すなわちムスリム宣教教育、訓練などは、だれにでもできる領域ではありません。ですから、このような働きを担当する専門団体を励まし、支援する必要があります。21世紀に必要な研究と出版が持続的に行われなければなりません。
「ムスリムのためにあなたたちは何をしましたか」と神が問われるとき、「知りません。私は彼らの番人なのでしょうか」(創 4:9参照)と言い訳をすることができるでしょうか。暗やみに光を、腹をすかせた人にパンを、病んだ所に薬を持って行く働き人が必要です。彼らのために「だれが、われわれのために行くだろう」という神の召しに、それぞれがいる場所で、恐れることなく喜んで答えられるよう祈ります。


チャン・マタイ
合同神学大学院 宣教学教授
イスラム・パートナーシップ代表

 

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