教会成長のための牧会戦略

   神に生きるために
 
福音伝道教団前橋キリスト教会 牧師 荒川雅夫


「しかし私は、神に生きるために、律法によって律法に死にました。私はキリストとともに十字架につけられました。もはや私が生きているのではなく、キリストが私のうちに生きておられるのです。いま私が肉にあって生きているのは、私を愛し私のためにご自身をお捨てになった神の御子を信じる信仰によっているのです」(ガラ 2:19~20)。

聖への渇き
A・W・トウザーは『神への渇き』という素晴らしい書で、クリスチャンが生涯をかけて霊の渇きを覚えるなら、その人の人生は祝福で満たされるという内容を記しています。また、主は十字架上で「わたしは渇く」(ヨハ 19:28)と叫ばれましたが、それは肉体の十字架上の渇きよりも、すべての人が滅びのただ中にいることをご覧になり、救いのために祈られたという事実と重なります。
主イエス・キリストは、ルカの福音書19章で、この世に来られた目的を「失われた人を救うためである」(10節)と明らかにされています。ザアカイは、堕落していた取税人であり、罪人と肩を並べておりました。しかし、この人への神の愛は、偉大な救いの事実を通して示されました。
ザアカイは主を見たいという切実さにより前方に走り出て、木に登り、渇きを表わします。一方、主は木の下に立ち、ザアカイを呼ばれ「今夜、あなたの家に泊まる」と語られます。ザアカイは、木から落下するかのような勢いで主のもとに立ち、主を迎え入れました。ザアカイの家に主が入られ、一緒に食事をされている間に、ザアカイの上に奇跡が生れました。第一に、取税人としての罪を率直に告白し、悔い改めます。第二に、貧しい人々への愛の施しを表わし、約束します。第三に、彼は生涯をかけて主の後をついて行くのです。主が来られて、失われた人ザアカイが、本来の「きよい」という名の意味を取り戻し、神の栄光のために変えられたのです。人の渇きと神の渇きが一つになったのです。
パウロが「主は御霊です。そして、主の御霊のあるところには自由があります。私たちはみな、顔のおおいを取りのけられて、鏡のように主の栄光を反映させながら、栄光から栄光へと、主と同じかたちに姿を変えられて行きます。これはまさに、御霊なる主の働きによるのです」(Ⅱコリ 3:17~18)と記したように、「私たちはみな」栄光から栄光へと、主と同じかたちに変えられるのです。何という栄光に満ちた救いでしょう。そのためパウロは、「ですから、私は決勝点がどこかわからないような走り方はしていません。空を打つような拳闘もしてはいません」(Ⅰコリ 9:26)と述べ、神の栄光を反映させつつ歩むという、はっきりとした目標をめざして進むことを勧めたのです。
主は、天からこの世に来られて、天を反映させています。天の御国のことばを語り、天の御国の祝福を明らかにされました。祈られている主の御姿を見た弟子たちは、天を垣間見たに違いありません。それで「主よ。私たちに祈ることを教えて下さい」と切に願ったのです。主は、「おまえたちには、わたしのような祈りは、とてもできるはずがない。わたしは神の御子なのだから」とはおっしゃいません。それどころか、「あなたがたは、こう祈りなさい。天にいますわたしたちの父よ」と主の祈りを示してくださったのです。主が、「アバ父」と祈る世界に弟子たちを招かれ、「さあ、わたしの祈りの世界を教えよう。わたしと一緒に御名によって祈ろう」と祈りを作ってくださいました。力ある愛と恵みと世界中への偉大な祈りは、ガリラヤ湖畔の漁師たちも、同じようにすることができます。父なる神と親しく交わり、豊かなすばらしい御国の喜びを日々経験されていたイエス様は、祈りと共に、弟子たちとすべてを合わせてくださるのです。貧しい私たちの祈りは、三位一体の父なる神と、祈られる主と同じ立場、同じ祝福を受けていることを知る通路となります。イエス様のいのちが私たちの中に躍動されているのです。
罪ある者が、神の目的にかなうように備えられている恩寵に驚きを覚える個所が、ローマ人への手紙11章32節から12章2節です。神はすべての人と「あわれみ」によって関わられるために、「すべての人を不従順のうちに閉じ込められた」と記されています。罪の中に閉じ込められている、絶望に満ちた私たちは、神との関わりを失ったかのように見えます。そのため私たちは、神からの無限の「あわれみ」を知ることによって解放され、自由にされるのです。この「あわれみ」を知った者のみが、自分自身を生ける神への供え物とする動機を持ち、それが力となり、目的となり、霊的に礼拝するようになります。自分の罪、底なしの自我を主張してやまない暗黒のサタンの奴隷状況を自覚することなくして、全き聖化への道筋は見えてきません。一方、底なしの罪の自覚こそ、主の栄光の姿への希望なのです。パウロは、「私は罪人のかしら」と告白し、「私は、ほんとうにみじめな人間です。だれがこの死のからだから救い出してくれるでしょうか」と叫ぶゆえに、人知をはるかに超えたキリストの愛の「広さ、長さ、高さ、深さ」を知りたいと熱望し、満たされたのです(エペ 3:16~18)。
福音伝道教団創立者のM・A・バーネットは、聖会のおりに、古い自己を「罪のからだ」と語り続け、聖化を信仰の根幹にすえて導かれました。そして、聖霊に満たされることによって罪の原理から解放され、いのちの御霊によってキリストが私のうちに生きてくださるという恵みを教えたのです。バーネットは、生涯の聖めを経験されたので、キリストにある勝利ある生涯を伝えるために世界宣教への情熱が生まれたのだと思います。
この自我との闘争と勝利を経験する歩みについて、ガラテヤ人への手紙2章後半の個所から、もう少し学びましょう。パウロは、神に生きるために律法によって律法に死ぬ、という事実を明らかにします。律法は良いことをすることを命じています。ですから律法にかなう信仰は極めて重要です。しかし、律法に従うことができない自己は、十字架によって死ぬのです。もはや私が生きるのではなく、キリストが私の内に生きてくださる事実を後に知ることとなります。
私は、東京電力を辞し、前橋市にある小さな中央日本聖書学塾という神学校で学びました。しかし、訓練を受けていた二年目に献身者として行き詰まり、前に進めなくなりました。奉仕は休みました。そのとき、聖書を深く熟読しながら、『死にてよみがえりしキリスト者』というウリアム・デル著の小冊子に出会いました。そこには、長い間、苦闘した自分に対する神の恩寵が明瞭に記されていたのです。懸命に、よりよき信仰者として生きようとしていたのに、疲れ果ててしまったのは、結局、自分の力でしようとしていたためだと悟らされました。
よいことをしたいという動機や情熱は、悪いことではなく、むしろ推奨されることです。しかし、絶えず自己が生き続ける闘争には、望ましくなれば慢心し、高慢になります。うまく行かないと自己を責めます。たましいの奥底にしっかりと生きていたのは、自我だったのです。この巣に根を張っていた古い自分がキリストと共に十字架につけられ、葬られたことを知ったのです。これはギリシャ語の語法によれば不定過去であり、一度起これば、ずっと継続することを意味します。結婚した人が、結婚しているかも知れないし、していないかも知れないというように、あやふやな状態ではなく、一度結婚すればずっと夫婦であるのと同様です。自己との闘争から解放されたその日を境に、私の中で、キリストが私の中で息づく、キリストと共に生きる新たな生活が始りました。キリストが私の中で語り、愛し、祈ってくださり、私たちが希望に輝いて歩めるようにしてくださったのです。これこそ、神の恵みを無駄にしない道でした。あれから、どれほど数多くのの悩めるたましいの傍らに立ちつつ、主の恵みを共有したことでしょうか。
苦闘して勝利した経験は、ヤコブがヤボク川のほとりで、神と格闘してついに勝利を得た経験に似ています(創32章)。神が「あなたの名は何というのか」と尋ねられたとき、彼は、「ヤコブです」と答えます。これまで、胎内にいるときからずっと兄弟と争い、結婚後も家族と争い、人を押しのけるような性格であったため、ヤコブ(押しのける者)と言わなければならなかったのです。しかしあの瞬間、彼は長い間心に秘めていた自我と決別をする勝利の人生へと変えられたのです。そのとき以来、ヤコブは足を引きずりながら歩くようになります。しかし、そのみっともない姿を人にも、神にも見せつつ歩き続けるヤコブにとっては、安息と喜びを物語る日々となったのです。
海外宣教の先駆けとなり、中国奥地で伝道をしていたハドソン・テーラーは、中国の現地で疲れ果て、その自我を神に明け渡すことによって、深い安息を経験しました。この経験を英国にいる妹への手紙で「取り替えられた信仰」として残しています。
城主である武士が、敵に居城を明け渡すことは屈辱のように見えます。しかし、クリスチャンにとっては、新たに入城されるお方はイエス・キリストです。この方に場所を明け渡すことこそ、私たちができるよいこと、いいえ、最善な道なのです。時に、このようなきよめへの道筋には、挫折や失敗という道程が用意されているかもしれません。しかし、よい牧者である主イエス様は、「狭い門から入りなさい」(マタ 7:13)、「わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠のいのちの水がわき出ます」(ヨハ 4:14;7:38参照)と約束しています。「いのち」とは単に生きていることではなく、「あふれ出る」いのちなのです。主は、「だれでも渇いているなら、わたしのもとに来て飲みなさい」と大声を上げて叫んでいます。主を信じる者は、どんなに困難な状況にあったとしても、それに関係なく、生けるいのちの水が心の奥底から流れ出るようになるという神の約束です。神への誠実こそ、豊かな祝福への道となるのです。


荒川雅夫
福音伝道教団前橋キリスト教会牧師
前日本福音同盟(JEA)社会委員会委員長
ラブ・ソナタ群馬実行委員長

 

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