新しい時代に向けた新しい牧会を

   ラブソナタから世界宣教へ
 
オンヌリ教会牧師(宣教本部長) ド・ユクファン


中国の茶馬古道に関するドキュメンタリー番組を見たことがあります。その番組は、四川省からチベットのラサに聖地巡礼に向かう巡礼客たちを紹介していました。巡礼者は2,100kmの長い道のりを歩きます。ただ歩くのではなく、五体投地で三歩一拝をし、修行をするものです。三歩歩くたびにからだの五つの部分を完全に地に付けてひれ伏すこの巡礼儀式は、見ているだけでも苦しいものです。厚い松の板で作られた手の保護具はすぐに擦り減り、膝を保護する皮の布もぞうきんのようにぼろぼろになります。このようにして一日中歩くと約6km歩くことができます。ラサまで到着するにはなんと満9ヶ月もかかります。
休憩時間に記者が尋ねました。「なぜこのようにつらい苦行の道を歩むのですか。」彼らの答えは単純で、あっけにとられるものでした。戦争の罪を洗うためだと言うのです。別の人は次の世でもっとよい身分で生まれたいからだと言いました。信仰によって救われた私たちが見るとき、彼らの苦行があまりにも無意味なものに見えませんか。救いは、私たちの功労や修行、禁欲や努力ではなく、神の恵みによって値なしに与えられる贈り物だからです。
それならなぜ、このような単純で確実な救いの道を彼らは知らずにいるのでしょうか。それは、だれも伝えなかったからです。ローマ人への手紙10章14節~15節のみことばと同じです。「しかし、信じたことのない方を、どうして呼び求めることができるでしょう。聞いたことのない方を、どうして信じることができるでしょう。宣べ伝える人がなくて、どうして聞くことができるでしょう。遣わされなくては、どうして宣べ伝えることができるでしょう。」この四つのうち、どれかが抜けると、この喜びの知らせは伝わりません。「『主の御名を呼び求める者は、だれでも救われる』のです」(ロマ 10:13)。主の御名を呼び求めさえすれば救われるのに、なぜ人々は、つらくて苦しい道を歩むのでしょうか。信じていない方を呼び求めることができるでしょうか。聞いたこともない方を信じることができるでしょうか。だれも伝えていないのに、聞くことができるでしょうか。遣わされていないのに、伝えることができるでしょうか。
今日、私たちクリスチャンの利己心のせいで、教会は世が罪と死によって滅んでゆくことに対して無関心なので、今も福音なく死んでゆく人々が大勢います。福音を教会の中に留めてはいけません。「あなたたちの天国」だと言わせてはいけません。教会は世のために存在します。福音はすべての人のために与えられたもので、世と断絶した瞬間、教会と福音は存在価値を失います。宣教は特定の人に与えられた使命ではなく、すべてのクリスチャンに与えられた使命です。
ハ・ヨンジョ牧師によって始まったラブソナタは日本への神の愛の歌でした。オンヌリ教会は2007年以降7年に渡って17の地域で18回のラブソナタを開催してきました。その間ラブソナタに参加した日本人はなんと5万3170人にも上り、集会を通してイエスを受け入れた人が2500人を越えました。何より驚くべきことは、ラブソナタに賛同してくれた教会が1900あまりに及んだことです。日韓の教会がともに奏でる愛の歌になったのです。
トーチトリニティ神学大学院の宣教学教授である高見沢栄子牧師は、「日本のリバイバルを妨害する原因の一つはクリスチャンたちの自信と情熱の欠如です。しかし、オンヌリ教会の情熱とリードによって、多くの未信者を集会に招待でき、いくつかの教会は信徒数の何倍もの未信者を招待できました。このことから『やればできる』という望みを持てるようになったと思います」と評価しています。
ラブソナタでの実をこのようにまとめてみました。一つめは、多くの未信者たちが信仰の決心をしたことです。慎重で責任感の強い日本人の未信者たちが、自ら信仰を決断したことには、とても大きな意味があります。二つめは、日本の教会が伝道への自信を持ち、リバイバルへの望みを抱くきっかけとなったことです。三つめは、教団、教派間の一致を図ることができたことです。日本の教会のリバイバルを慕い求める教会と教派がラブソナタのために喜んで協力してくれたそうです。それ以降、CGNTVを通してさらに堅固な関係を築いています。淀橋教会の峯野達弘牧師は「ラブソナタを通して今までになかった大きなことが起こっています。教団、教派を超えて教会が手をつないでリバイバルのために働くという新しいリバイバルへのチャレンジが与えられました」と言っています。四つめは、日本の聖徒たちの信仰生活に大なり小なり変化が与えられたことです。ラブソナタ以降に実施したあるアンケート調査によると、67%の人が礼拝出席が増えたと答え、伝道を熱心にするようになったと答えた人も26%に上りました。五つめは、日韓教会の結束を強めることで、民間外交にも影響がありました。まだ相変わらず緊張関係が続いているように見えますが、すべての理解を超えて一つになるのは、キリストにあってのみ可能です。ラブソナタは日本に向けた韓国の教会の変わらない愛を示しています。
2007年、東京ラブソナタの期間中、洗礼を受けて「知性を追い求めていた人生から、霊性を追い求める人生へ」と変えられたイ・オリョン前文化部長官は、集会の感想をこのように記しています。「日本の人たちは『冬のソナタ』の韓流ではなく、『ラブソナタ』の天流を見ました。暗やみの中でライトを揺らし、ハレルヤを賛美する感動の中では、年齢も、性別も、国籍もありませんでした。かつてこのようなことは見たことも、想像したこともありませんでした。一言で言えば、これは人間の力では不可能なイベントだったのです。」
ハ・ヨンジョ牧師は2008年4月、オンヌリ教会の1000人目の宣教師派遣礼拝で、日本宣教への投資と関心を広げることを明らかにしました。「ラブソナタはただ数カ国に宣教師を派遣したという水平的な意味を越え、一つの民族と国家を伝道する戦略的宣教のモデルとなります。ラブソナタを通して7000の日本の教会を1万に増やし、牧師がいない700の教会には宣教師を送ります。そして日本の教会は世界宣教のパートナーとなるでしょう。」ラブソナタを始めたハ牧師は、日本を、韓国の教会が仕えるべき宣教地を超え、ともに世界宣教を担う同労者として見ていました。
実際に初期のラブソナタは行事の準備やプログラム、財政に至るまで韓国の教会によって行われましたが、徐々に日本の教会が伝道に積極的に参加し、財政の一部まで分担しています。文化伝道戦略を活用した独自の集会を開催する都市も出てきました。ラブソナタは日本の福音化のための両国の教会の働きとなっているのです。それだけでなく、オンヌリ教会は、北京に住む日本人伝道のために、日本人を宣教師として派遣しました。
最後に、日本の教会とともに担うべき宣教の四つの方向について分かち合いたいと思います。一つめは、前方開拓宣教です。ラルフ・ウィンター博士は未伝道部族に出て行くことが私たちの一番の優先順位だと言っています。宣教戦略で念頭に置くべき重要な単語は「機会」です。福音を聞いたり、クリスチャンに出会う機会がほとんどない地域に優先的に宣教師を派遣しようというのです。そこの環境が重要なのではなく、そこに福音から疎外された人がいるかに注目すべきです。限られた資源と人力、財政を運用し、残った時間に力量を集中させるなら、自然に未伝道部族宣教という結論を得るでしょう。
二つめは、多元化宣教です。今は収益が生じるところに沿って企業も人も動いています。新遊牧民時代には多様な次元の宣教戦略が必要です。日本にも2010年末を基準に213万人に上る外国人が在留しているそうです。地の果ての移住者のための福音とあわれみの働きが活発に展開される必要があります。またSNSとインターネット上には新種のグループと言える多くの国家と民族の背景を持った人々が集まります。海外に出なくても日本で働く機会が開かれているのです。
三つめは、総体的宣教です。福音には、個人のたましいの救いを超え、地域社会を変革して国家を新しくする力があります。NGOなどのような多様な方法で宣教の地境を広げていくことができます。日本は多くの財政と人力で世界の貧困と疾病の緩和のために努力していますが、まことのキリストの愛だけが世をいやすことができると信じます。現在2500人の団員が活動しているJAICAのような国際ボランティア機構を通して、さらに多くのクリスチャンが世界中に仕えることを期待しています。それから、韓国国際協力団であるKOICAの団員たちの60%近くがクリスチャンであるという統計を見たことがあります。直接的、間接的に御国のために仕えることができるよい機会となるでしょう。
四つめに、グローバルサウス時代の宣教に対する負担です。約100年前、キリスト教は西欧の宗教でした。アジアやアフリカのクリスチャンの数は全体の15%にも及びませんでしたが、今は全体のクリスチャンの60%が南半球に属する国に住んでいます。特にアジアは被宣教地でありながらも強力な宣教国として浮上している地域です。西欧の教会から受けた祝福を継承しつつもアジア型宣教の開発にも力を注ぐべき時になりました。日本の教会も宣教150年が過ぎ、世界宣教のためにさらに多くのベンチャー宣教が起こることを期待します。
日本の教会が世界宣教の使命を担うためには、母国の教会の持続的な成長とリバイバルがなければなりません。みことばと祈りに専念し、新しいリバイバルを慕い求め、教会が都市ごとに起こるよう祈ります。世が恐れるほどの霊的権威と謙遜な奉仕とによって教会が霊的自信で満たされ、使命を新たにし、新しい時代を開くことができるように期待します。
インドの貧民街で貧しい人々の母として仕えていたマザー・テレサはこう言いました。「この世には飢えている人々がたくさんいます。パンがないからではありません。持っているパンを分け与えないからです。」なぜ世にはキリストなしに死んで行くたましいが存在するのでしょうか。それは、福音を分け与えようとしないからでしょう。毎日数多くの人々が福音を待ち望みつつ死んでゆきます。世にはキリストが必要です。この唯一のいのちをもった日本と韓国の教会が小さいことから分け与え始めるとき、神の御心が天でなされるように地でもなされるのです。「ラブソナタ」から始まった神の愛の歌が日本の教会を通して世界中に響き渡ることを願います。


ド・ユクファン
オンヌリ教会宣教本部長。
ツラノ海外宣教会(TIM)本部長。
フラー神学大学、宣教牧会学博士。
前スリランカ宣教師。

 

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