マタイの福音書の恵み29

   さばいてはなりません②
 
オンヌリ教会 前主任牧師 ● 故 ハ・ヨンジョ


愛するために召された者
神は、人を罪に定め、さばき、地獄に落とすことを望まれません。ヨハネの福音書3章17節を見ると、さばくという概念は、神の愛が入ることができない状態だとわかります。つまり、神の救いに入れないことが地獄であり、さばきなのです。神は、たとえ死んで当然の罪人であっても、その人を赦し、神の子どもとすることを願っておられます。私たちは、この神の思いのゆえに生きているのです。私たちが神の義にしたがって扱われ、さばかれるのならば、生き残る人はいません。
神は、さばかないために、ご自分の御子イエスを犠牲にし、死にまで至らせました。そして、「イエスを信じなさい。そうすれば、さばかれません」と言われ、最後まで機会を与えてくださいます。私たちは、このような神の心を知らなければなりません。
神は、私たちを、愛するために世に送ってくださいました。私たちは愛するために召されました。夫、妻、子どもはさばきではなく、愛の対象です。だれも神になることはできません。ですから、神のように行動しないでください。だれにもさばく資格はなく、さばくことはできません。不正や腐敗が見えたとき、残念な思いで嘆くのがクリスチャンです。これが山上の垂訓の、「悲しむ者の幸い」です。さばきは、究極的に神がされることです。では、ここで人間の責任は何かという問題が生じます。ただ傍観すればよいというわけではありません。福音を持つ者は、罪や不義に妥協することができません。しかし、同時に、自分がさばく者となってはいけないのです。
目に見える隣人を愛せない者が、どのようにして目に見えない神を愛することができるでしょうか。人の弱点は、さばくためではなく、それをあなたが補うために神が見せてくださるものです。たとえば、教会で、経済的な困難にいる家族を助けるに当たって、金持ちが自分にできることを考えもせず、ただ献金を少しだけしたり、人が献金をしないことや助けないことを責めたりします。自分が神になっているのです。また、教会でごみが山積みになっているのを見た人が、だれの責任だと大騒ぎします。しかし、それはそのように騒ぐためではなく、その人が片付けるように見せられたものなのです。さばくためではなく、間違いに気がついた人が正すようにと見せられたのです。人に関係なく、自分のことは自分がすればよいのです。神は、このようにすることで、全体的な美や秩序、調和を導いてくださいます。

さばく者は人からさばかれる
イエスがさばいてはならないと言われた二つめの理由は、「あなたがたがさばくとおりに、あなたがたもさばかれ…」(マタ 7:2)とあるように、私たちが人をさばけば、さばかれた人が私たちを同じようにさばくためです。
このみことばは、ある人がさばいたときに用いた内容や基準にしたがって、自分もさばかれるという意味です。自分は人よりまさっておらず、自分の中にもさばかれる要素があるということです。ですから、パウロは次のように言いました。「ですから、すべて他人をさばく人よ。あなたに弁解の余地はありません。あなたは、他人をさばくことによって、自分自身を罪に定めています。さばくあなたが、それと同じことを行っているからです」(ロマ 2:1)。
普段からよくうそをついている人は、ほかの人がうそをつこうとする時にすぐにわかり、普段から人のものを盗む人は、ほかの人の動き一つで、その人が盗もうとしているかどうかがわかるそうです。普段、淫乱な考えでいっぱいの人は、それがばれないように静かにしていて、ほかの人がスキャンダルになれば大騒ぎします。その内容の詳細に至るまで、あちこちで言いふらして楽しみます。また、自分に失敗や欠点が多く、罪深い人であるほど、ほかの人を攻撃します。非難する人ほど、賢いふりや罪を犯していないふりをします。しかし、さばかれない人は、いつでも赦し、寛容で、相手の失敗と弱点を理解します。その人はいつでも人を慰め、励まし、祝福します。イエスは、いたんだ葦を折ることも、くすぶる灯心を消すこともされない心で、罪人、取税人、遊女、捨てられた人々に会い、彼らを慰め、いやされました。それだけでなく、ご自分を十字架につけた人々までも、罪に定めず、さばかれませんでした。
人は自分自身については無知なもの
イエスがさばいてはならないと言われた三つめの理由は、「なぜあなたは、兄弟の目の中のちりに目をつけるが、自分の目の中の梁には気がつかないのですか」(マタ 7:3)です。原語を見ると、ちりとはおがくず一つという意味であり、梁とは丸太のことです。ですから、このみことばは、兄弟の目の中のおがくず一つは、自分の目の中の丸太に匹敵するということです。
私たちは、ほかの人は一生懸命観察しますが、自分自身については見えません。自分については最も無知で、自分の罪と咎については何も知りません。霊的な鏡をもって、心の中をよくのぞいてください。自分自身がどんなにみにくく、幼稚で、高慢で、偉そうで、厚かましく、よこしまか、知っていますか。汚水のような罪や悪臭のするものを、これ以上隠さず、表に出して、きれいに掃除しなければなりません。自分自身を鉄面皮の中に隠して、ほかの人を撃ってはなりません。

まず自分の目から梁を取りのけなさい
「兄弟に向かって、『あなたの目のちりを取らせてください』などとどうして言うのですか。見なさい、自分の目には梁があるではありませんか」(マタ 7:4)。
兄弟の目の中のちりが姦淫の罪だとすると、自分の目の梁はそれを姦淫だと罪に定める罪だと解釈する人もいます。それをあわれに思い、愛の目で見ることができず、罪に定めているのです。
続く5節で、結論を出しています。「偽善者よ。まず自分の目から梁を取りのけなさい。そうすれば、はっきり見えて、兄弟の目からも、ちりを取り除くことができます。」
生きていると、私たちの目にちりが入ることがあります。そのままでは痛いのですが、ちりを取り除くのも痛いものです。無理に動かして、ちりが取れるように息を吹きかけたり、清潔な綿で拭き取らなければなりません。ほかの人の罪を直すというのは、このように大変で難しいことなのです。さばくことでは、人は決して悔い改めません。感情的になるだけです。ですから、みことばのように、人のちりばかりを考えるのではなく、まず自分の目から梁を取り除かなければなりません。梁は丸太のようなものですから、見つけやすく、取り除きやすいのです。私たちの中にある梁を取り除けば、ちりのために苦労する隣りの兄弟姉妹が感動して涙を流すでしょう。それによって、自然にちりが涙とともに流れ出るのです。問題は、「私自身」にあります。まず、私が反省すれば、相手も変わるというのが、イエスの言われる原理です。
間違いがあってもさばかず、その人を励まし、助けてください。その人がそこまで追いつめられていたことを残念に思い、その人のために祈ってください。そうすれば、その人は変わります。自分の中の梁を見つければ、兄弟のちりはあらではなく、愛の対象であることがわかるでしょう。

写真:イ・ナムス、ジョン・ファヨン

 

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