環境を越えた喜び③

   
 
カン・ジュンミン ● ニュー・ライフ・ビジョン教会 主任牧師


幸せは、心から生まれます。一般的に、人は環境の奴隷になりやすいものですが、知恵のある人は環境に適応する方法と難しい環境を用います。また、苦しみを最小限に受ける方法も知らなければなりません。先月は、その一つである、人生には苦しみがあるものだと認めることについて取り扱いました。では、次のものを見てみましょう。

苦しみを最小に受ける方法
苦しみを表現する
パウロは、自分の感情や直面した問題を書き記すことで表現しました。彼は、自分を苦しめる人がいる、自分が苦しみを受けるのを喜ぶ人がいると言いました。自分の苦しみを知り、それを直視して表現できる人は、知恵のある人です。
苦しい感情を治めるには、感情を認知しなければなりません。強い人とは、自分の感情を治めることができる人です。自分の感情を治めることができてこそ、ほかの人の感情を動かすことができるのです。
苦しい感情を記したものは、多くの人々をいやします。苦しみが、苦しみをいやすのです。獄中で生きなければならなかった数多くの義人たちは、パウロの獄中書簡から慰めを得ました。
苦しみを表現すると、その苦しみは力を失います。これは、苦しみの神秘でもあります。隠そうとすれば、苦しみはさらに恐ろしい攻撃を加えます。しかし、苦しみを直視し、表現すると、苦しみはあわてふためきます。人の苦しみに関する文章を読むと、いやされます。
ダビデの書いた詩を読んで、ダビデが味わった苦しみに触れることができます。自分を苦しめる敵から来る困難を、神に吐露する詩です。「神よ。私の嘆くとき、その声を聞いてください。恐るべき敵から、私のいのちを守ってください。悪を行う者どものはかりごとから、不法を行う者らの騒ぎから、私をかくまってください。彼らは、その舌を剣のように、とぎすまし、苦いことばの矢を放っています。全き人に向けて、隠れた所から射掛け、不意に射て恐れません。彼らは悪事に凝っています。語り合ってひそかにわなをかけ、『だれに、見破ることができよう』と言っています。彼らは不正をたくらみ、『たくらんだ策略がうまくいった』と言っています。人の内側のものと心とは、深いものです。しかし神は、矢を彼らに射掛けられるので、彼らは、不意に傷つきましょう。彼らは、おのれの舌を、みずからのつまずきとしたのです。彼らを見る者はみな、頭を振ってあざけります」(詩 64:1~8)。敵の非難や批判のために、ダビデがどんなに苦しんだかを教えてくれる詩です。人のひどいことばのせいで苦しむ人々に、時代を越えて慰めを与える詩です。

固執しているものを手離す
私たちを苦しめる人は、私たちが固執しているものを通して攻撃をし、そのために私たちは苦しみ、傷は深くなります。愛着しているものや固執しているものがなければ、傷つくことはありません。
たいてい男性は、自分の実力や能力が認められないと傷つきます。容貌で傷つく男性はそれほどいません。仕事に関係することに傷つきます。ですから、無能だと言われると傷つくのです。仕事は男性のプライドでもあります。最善を尽くした仕事が認められないと傷つきます。自殺をする人もいます。
一方、女性は顔や外見に固執するので、そのことを言われると傷つきます。また、人間関係も大切にするので、そこに問題が生じれば、つらい思いをします。捨てられたり、拒絶されたりすると、深く傷つきます。
人は傷つかずに生きることはできませんが、損をするのは傷ついた人です。傷は、人生に大きな影響を及ぼします。それを間違って扱えば、傷は膿み、腐臭が漂います。ですから、きちんと取り扱わなければなりません。できれば、傷をより少なく受けるのがよいのです。そのためにも、愛着や固執を手離すことです。
パウロは、愛着や固執を手離しました。「私にとって得であったこのようなものをみな、私はキリストのゆえに、損と思うようになりました」(ピリ 3:7)。
パウロのように、キリストのゆえに、愛着のあったものを損と思うようになってください。いのちまでも手離してください。パウロはいのちも、人間的な自慢もすべて手離し、ちりあくたと思いました。プライドを傷つけるものは、すべて手離し、自由になりました。ですから、だれも彼を傷つけることはできなくなりました。パウロは、傷を越えたクリスチャンとなったからです。
愛着を手離すのは、たやすいことではありません。人から非難されたり、否定的なことばを言われて傷ついたのならば、それは自分が大切に思っているものを攻撃された可能性が高いのです。静かな時間を作って、主の御前に出て、黙想してください。自分が大切にしているものは何か、自分を苦しめ、不安にさせているものは何か、深く考えてください。
そして、それらを一つずつ手離して、主にゆだねてください。主にゆだねることが、最も安全です。何かに固執していた心を空にして、そこをイエス・キリストで満たしてください。イエス・キリストの愛、知恵、知識で満たしてください。主の中には、私たちが固執していたものとは比べられない宝があふれています。

苦しみの中でも働きを続ける
パウロは、どのような環境においても、あきらめなかったことがあります。それは、福音宣教でした。それは、パウロに任された働きでした。パウロは、環境や問題にしたがってではなく、ただ使命にしたがって生きました。彼は、目的志向の人でした。環境を喜びの条件とせず、キリストが伝えられることを喜びの条件としました。「すると、どういうことになりますか。つまり、見せかけであろうとも、真実であろうとも、あらゆるしかたで、キリストが宣べ伝えられているのであって、このことを私は喜んでいます。そうです、今からも喜ぶことでしょう」(ピリ 1:18)。
喜びは、副産物です。親切な心を持ったり、親切なことをしたりする場合に伴うものです。スイスの法学者でありクリスチャンであるカール・ヒルティは、このように言いました。「喜びを追い求めてはならない。正しく生きるときに、喜びは訪れる。」喜びは、追い求めるから得られるのではなく、私たちが正しいことをすれば、自然に伴うものなのです。主の教えを思い出してください。「神の国とその義とをまず第一に求めなさい。そうすれば、それに加えて、これらのものはすべて与えられます」(マタ 6:33)。
「立ち止まってはならない。おお、人間よ。あなたが弱くても強くても、休んではならない。孤独な苦闘を止めてはならない。続けなさい。休むことなく。世は難しくなる。あなたは明かりを灯さなければならない。困難を追い払わなければならない。おお、人間よ。人生があなたを踏みにじっても、立ち止まってはならない」(マハトマ・ガンジー)。
苦しみを乗り越える愛の力を求める
愛は、環境を乗り越えることができる力です。愛する人がいれば、どのような環境も乗り越えることができます。愛があれば、耐え忍ぶこともできます。コリント人への手紙第一13章4~7節は、愛とは何かを定義しています。その最初と最後に、寛容と耐え忍ぶことを強調しています。
「愛は寛容であり…すべてを耐え忍びます」(Ⅰコリ 13:4~7)。
パウロは監獄にいましたが、愛の中にいました。ピリピの教会に送った手紙は、愛の手紙でした。「私が、キリスト・イエスの愛の心をもって、どんなにあなたがたすべてを慕っているか、その証しをしてくださるのは神です」(ピリ 1:8)。
パウロのそばには、愛するたましいの息子テモテがいました。愛すれば、喜びで満ちあふれ、苦しみは問題ではなくなります。問題は、苦しみよりも大きい喜びや愛を経験できないことです。愛すれば、それに夢中になるものです。愛することに集中すれば、環境や自分自身を乗り越えることができます。愛は、人に配慮し、その人のために考えることです。
パウロは、キリストを愛し、キリストのゆえに生きました。喜びに満たされた人生を歩むためには、永遠なる現在、つまり永遠なる神の愛の中に生きなければなりません。聖アウグスティヌスは「過去は主のあわれみ、現在は主の愛、未来は主の摂理に任せよ」と言いました。
環境を乗り越え、喜びを味わってください。喜びの条件を、しっかりと選択してください。残っているものを、数えてください。環境を用いてください。苦しみは、できるだけ少なく受けてください。必要でない傷を受けて生きることがないようにしてください。必要な傷ならば、それを真珠に作り変えてください。
環境は重要ですが、環境の奴隷にならないでください。必要ならば、環境に従い、適応してください。環境に適応するよりも重要なことは、すべての関係を機会とすることです。難しい環境を良いことに用いるのは、最高の知恵です。それよりも偉大なことは、環境を美しく作り変えることです。私たちのいる場所を、さらに美しいものとすることなのです。
パウロは、自分がいた監獄を天国に作り変えました。愛の場所、祈りの場所、愛の手紙を書く場所、天の福音を伝える場所としました。何よりも、愛してください。愛する場所は、天の御国となります。どのような困難も愛の力で乗り越えることができます。神の愛は、限りがなく、豊かで、力そのものです。
皆さんが、神の愛で環境を乗り越える喜びを味わうことを願います。

 

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