ディアスポラ日本人

   主とともにどこまでも
 
● 松浦紀子


私は、16歳の高校生の時、近所の宣教師宅であった集会に誘われ、私が捜し求めていた方がイエス・キリストだとわかり、救い主として信じました。そして、その1年後洗礼を受けました。その数年後、「主が望まれるなら、海外までもお従いします。そして、私自身を主におささげします」と祈りました。実際に海外に派遣されたのは、その後35年たってからでした。
その35年の間、準備の時として、小学校の教師として働きと証しの場所を与えてくださいました。また、東京のある市の教育委員会から市の言語障害の子どもたちのクラスを発足するようにと、再び学びの機会も与えられました。この働きは、私にとって喜びの働きとなりました。その後、海外でも学びの機会が与えられました。その当時、どうしてこんなに学ばなければならないのか、と思ったこともありましたが。しかし、後から考えてみると、それは、現在の働きの準備であったことがわかりました。
神学校で学んでいた頃、ある宣教団から招きがありましたが、卒業する頃になってもそちらに行く平安はありませんでした。聖約キリスト教団から招きがあり、海外宣教の重荷があることを告げました。もしそれが御心ならばこの教団から送り出しましょうということで、招聘を感謝して受けました。そして、広島県の福山市にある福山聖約キリスト教会で、主任牧師の下に教会に仕えることになりました。
その後、私はイギリスで1年間の研修を受け、そして1996年に南アジアに派遣されました。今年の5月で丸15年になります。この南アジアで教えられたことのいくつかを述べてみたいと思います。

1.そこにいる人を愛さなければ、どんなすばらしい働きをしても意味がない
山の村にいたある朝、みことばを読み、祈っていた時、神様は「あなたはどんな良い働きをしたとしても、人々を愛していなければ、意味がない」と語られました。その頃の私は、村の人々のために働くのは大好きでした。でも、私は、この村の人々の生活、特に非衛生的な習慣や時間の考え方などを日本の文化と比較して、心の中で批判していました。働きは大好きでしたが、心から人々を愛する気持ちはあまりありませんでした。その私の心の深いところを神様は探り、気づかせてくださいました。
神様に「人々を愛さなければ意味がない」と言われて、「神様、ごめんなさい、私はこの村の人々を愛していません。主よ、私は人を愛することが難しいです」と話しました。主は、「そうですね、あなたは、わたしを離れては何一つ実を結ぶことはできません。人をも愛することができません。わたし愛のうちに留まりなさい、そうすれば、愛することができます」と、ヨハネの福音書15章9節のみことばを示してくださいました。
その日、朝食を村の家の方々と取っていると、ご主人が「あなたは、この貧しい村に、二度も来てくださった。こんな貧しい村に二度も来てくれる人はいません。あなたは、私たちを愛していてくださるので、あなたに『愛の花』という名前をあげましょう」と言われました。村の人が、よそ者に名前をつけてあげるのは、あなたを受け入れましたという意味です。私は、神様の戒めを思い出させていただくためだと思って、その名前をいただきました。

2.問題ばかり見ないで、私を見上げなさい
山の村を訪問するためには、1日8時間ぐらい歩かなければならないことがあります。その日は、現地のアシスタントとポーターと出発しました。目的の村に着く前に夕方になってしまいました。その日はすでに8時間以上歩いていました。ふと見ると大きな岩があって、道がなくなっていました。私は、遅れがちに歩いていたので、アシスタントもポーターも先に行ってしまい、私一人でした。私は非常に疲れて、そこに座り込んでしまいました。暗やみの中、遠くに川の流れる音が聞こえるだけで、ほかの音は何も聞こえずに静かでした。「神様、どうしましょうか。道がわかりません。」するとその時、「見上げなさい」と教えてくださいました。そこで、立ち上がって山の傾斜を見ると、月明かりに、細い道が下の方に見えました。私は大きい岩の横を通ってその下の細い道にたどり着き、その夜、村に着くことができました。
その道々、神様は「あなたは、今、いろんな問題に直面し、悩んでいますね。でも、問題ばかりを見るのではなく、わたしを見上げなさい」と教えてくださいました。その頃、私は、問題の多さに圧倒されていました。どれも解決の糸口が見えませんでした。私は神様に、「すみません。自分だけで、ああでもない、こうでもないと悩んでいました。私は今、あなたを見上げます。この問題をあなたにゆだねます」と祈った時、問題は何一つ解決されていませんでしたが、主からのすばらしい平安をいただきました。そして、あれほど問題だらけだと思っていたことが、神様の目にはどうやら問題ではないらしいことがわかってきました。

3.イエスの御名によって祈る
教師養成研修会で奉仕していた時のことです。教師となる人々が楽しい雰囲気の中で、とても熱心に学んでいました。今までで、一番良い教師養成研修会だと思いました。そして、そのことを感謝しましたが、何か足りないものを感じ、それが祈りだと気づかされました。いつもなら、スタッフと、スタッフ・ミーテイングの時ばかりでなく、必要だと思うときに祈っていました。しかしこの時は、外部から来られるいろんな宗教を信じている方々を配慮して、スタッフだけで祈ることはしませんでした。
しかし、その時、私はスタッフの祈りによって私が支えられていたことに気づかされました。あるスタッフが、「『ふたりまたは三人でも、わたしの名において集まるところには、わたしもいる』と約束していてくださり、『あなたがたが、わたしの名によって何かをわたしに、求めるなら、わたしは、それをしましょう』と約束していてくださることを感謝します」と祈ったことを思い出しました。
イエス様の御名によって兄弟姉妹とともに祈ることは、なんという特権でしょうか。その中心にイエス様がいてくださるのです。そして、海外にいる私に、現地の方々と一緒に祈る喜びを与えてくださいました。母国でも、イエスの御名によって祈っていてくださることは、なんという励ましでしょうか。祈りをしなくても働きはできます。しかし、祈りなくしては、主の望まれる実を結ぶことは難しいのです。なぜなら、それは、自己満足の働きになるからです。海外に遣わされている者が、現地の人々と主の御名によって祈るとき、そして、母国の人々がイエスの御名によって祈るとき、ともに主のお望みになる実を結ぶことができるのだと思います。

4.主はいつもともにいてくださる
私たちがまったく知らない海外の地で働こうとするとき、不安があります。だれも知らない人たちの中で、そして、自分には働きにふさわしい力はないように思える時があります。人々は私を受け入れてくれるだろうかと心配になるのです。
ある時、このようなみことばをいただきました。「わたしはあなたとともにいる。これがあなたのためのしるしである」(出 3:12)。私たちは、自分でがんばって何か良い働きをしようとしている時があります。しかし、主がともに行ってくだるということは、主がその地でなそうとされることをするのです。主が語ろうとしておられることを語るのです。時には、人は受け入れてくれないかもしれません、しかし、その結果は主にゆだねればいいのです。主は働きに必要な力、恵みを与えてくださいます。主がともにいてくださることは、なんと幸いなことでしょうか。

5.世界宣教は、すべての人が加わることに よって前進する
私が、南アジアに遣わされて、さまざまな人々、いろんな国から来られた人々とともに働き出して気がついたことは、働きの種類の多さでした。そして、その働きなしには、世界宣教は進めていくのは難しいのです。そして、それらの働きが日本でも普通になされているものなのです。ただ違うことは、主に自分自身をささげているかどうか、人にではなく主のためにその働きをささげているかどうかです。
働きといえば、牧師だけが自分自身を主にささげて、教会員は特にそのようなことを考えてないことが多いものです。しかし、教会はさまざまな働きから成り立っていて、牧師だけでは働きを進めていくことはできませんし、神様もそれを望まれないのです。教会員の働きがなければ、その教会は成り立っていきません。そして、そのような働きが世界宣教でも必要とされているのです。そこで、クリスチャンとなった私たちすべてが、神様の愛に応えて、自分自身を主におささげするのです。
もし私たちが自分自身を主にささげ、与えられている働きをとおして、主に仕えていこうとするときに、日本の宣教は前進していくでしょう。そして、ある人は海外へ遣わされるかもしれません。今の世界宣教は語る人だけでは、前進は遅いのです。目を上げて、世界の畑を見て欲しいのです。この畑には日本も含まれていますが、世界の畑はありとあらゆる種類の働きを必要としています。
献身は牧師だけの特権ではありません。私たち、すべてのクリスチャンは献身することによって、主の恵みと力を経験することができます。会社員であっても、主婦であっても、学生であってもです。私たちを主におささげするならば、まず、私たちの目を開けてくださり、身近なところにある、働きをさせてくださり、証しの機会を与えてくださいます。語ることだけが証しではありません。主によって置かれた所で、喜んで生きていくときに、主は用いてくださり、働きに必要な力も与えてくださいます。また、必要に応じて、学ぶ機会も与えてくださいます。
皆さんに、主とともに歩む恵みを味わい知っていただきたいです。


 

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