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聖徒の敬虔訓練⑯
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夢(未来)と敬虔訓練 |
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ホン・インジョン ● 長老会神学大学 実践神学教授
新年を迎えたり、4月になると、新しい夢を見、新しい計画を立てるものです。それは、私たちが、この地と現実に安住せず、聖なる神のご性質にあずかるべく召された夢の人だからです。筆者である私は、敬虔訓練を「神に似た品性が自分の生活(人生)に与える影響力を拡大していく訓練」であると定義しています。 神に似た良い品性がいくら多くあったとしても、それを広げていくことを願う熱望や夢がなければ、神の人とは言えません。では、夢の人としてどのように人生を歩めばよいのでしょうか。
夢(未来)の三位一体の神 父なる神は、私たちに期待と計画を持っておられる「夢の神」です。ノアに虹を見せてくださり、もう二度と水でさばくことはしないと約束された未来志向的な神です(創 9:11~17)。また、神は、子どものない75歳のアブラハムを呼び、「わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる」(創 12:2)と、未来の計画と夢を語られました。神はイザヤを通して、民を救いに導くインマヌエルとして御子なるイエスが来られることを語られました。「それゆえ、主みずから、あなたがたに一つのしるしを与えられる。見よ。処女がみごもっている。そして男の子を産み、その名を『インマヌエル』と名づける」(イザ 7:14)。 御子なるイエスは、ペテロが自分を知らないと否定することを知っておられました。しかし、ペテロがやがて悔い改め、回復し、兄弟たちの救いのために用いられると宣言されました(ルカ 22:31~34)。イエスは、私たちの中に良いことを始められ、再び来られるその日までそれを成し遂げていかれるのです(ピリ 1:6)。イエスは、この地に再び来られることによって、救いを完成される「未来のイエス」であり、その中心であられます。 聖霊なる神は、弟子たちに臨まれ、イエスが語られた教会の夢を成就されました(使2章)。また、聖霊は、イエスのみことばどおりに、福音が広がるようにされました(使 1:8)。聖霊は、不義の世においても、私たちが未来の希望をもって生きていけるようにしてくださいます。ですから、パウロは、ローマにいる聖徒たちのために、「聖霊の力によって望みにあふれさせてくださいますように」(ロマ 15:13)と祈りました。聖霊は、現実を越え、夢を実現させる「希望の聖霊」であり、「夢の聖霊」です。ですから、聖霊の人は、預言をし、幻を見、夢を見るのです(使 2:17)。
聖書の中の夢の話 夢を通して警告される神 聖書には、夢と関連した多くの逸話があります。アブラハムは、死を恐れ、妻のサラを妹だと偽ります。しかし、サラを連れて行ったゲラルの王アビメレクは、神が見せた夢のために、アブラハムの妻サラに何もすることができませんでした(創20章)。神は、ご自分が選ばれた民が過ちを犯して、そのために恐れに捕らわれたとき、彼らを守るために夢を通して語り、警告してくださいます。
夢を通してなすべきことを教えてくださる神 神は、時として、夢を通して神の人々になすべきこと、行くべき方向を教えてくださいます。ヨセフは王の夢を解釈しながら、「神がなさろうとすることをパロに示されたのです」(創 41:28)と言いました。神は、夢を繰り返し見せることによって、はっきりと教えてくださることもあります。「夢が二度パロにくり返されたのは、このことが神によって定められ、神がすみやかにこれをなさるからです」(創 41:32)。星を見てイエスが降誕されたベツレヘムを訪ねて来た東方の博士たちは、夢でヘロデのもとには帰るなという指示を受けて、ほかの道を通って故郷に帰っていきました(マタ 2:12)。また、当時、神はヨセフにエジプトに身を避けるよう語られました(マタ 2:13)。ヨセフは、神のみことばの通りエジプトに出発し、これによって「わたしはエジプトから、わたしの子を呼び出した」(マタ 2:15)というみことばが成就しました。また、ヨセフは夢で神から戒めを受けて、幼子イエスを連れてガリラヤ地方に行き、これによって「この方はナザレ人と呼ばれる」(マタ 2:22~23)というみことばが成就しました。
夢を通して祝福し、約束してくださる神 父と兄をだまし、長子の権利を奪い取ったヤコブは、ハランに向けて旅をしている途中、石を取り、それを枕として眠りました。ヤコブは「はしごの夢」を通して、祝福し、守り、ともにいてくださり、再びこの地に帰らせてくださる神に出会いました(創 28:10~22)。神は、さびしい道を行くヤコブを訪ね、夢を通して約束し、父祖の神であられるだけでなく、現在と未来においてもみわざをなされる神であることを教えてくださいました。
夢を通してともにおられることを 証ししてくださる神 ヨセフの夢は、神が見せてくださったものです。ヨセフは、その夢を語ることによって兄弟たちに憎まれるようになりました(創 37:5~11)。そのため、ヨセフはエジプトに奴隷として売られ、牢に閉じ込められ、そこで夢の解き明かしをしました。そして、ヨセフはパロの夢を見事に解き明かし、エジプト全土を支配する権力者となりました。 パロがヨセフに、「あなたは夢を聞いて、それを解き明かすということだが」と言うと、ヨセフは「私ではありません。神がパロの家の繁栄を知らせてくださるのです」と答えました(創 41:15~16)。ヨセフの夢の解き明かしを聞いたパロは、ヨセフを「神の霊の宿っているこのような人」(創 41:38)と呼びました。さらに、ヨセフのようにさとくて知恵のある者はいないので「あなたは私の家を治めてくれ」と言いました(創 41:39~40)。神は、夢を通してヨセフとともにいることを証明され、ヨセフを高い地位につけるだけでなく、神は全能であることを全世界に知らせました。 バビロン捕囚時代に、ネブカデネザル王は、見た夢によって悩み、眠れないでいるときに、ダニエルを呼びました。彼は「私の国の知者たちはだれも、その解き明かしを私に知らせることができない。しかし、あなたにはできる。あなたには、聖なる神の霊があるからだ」(ダニ 4:18)と言いました。このように、神は夢を通して神の人に御心を教えてくださいます。
夢を通して福音を広げてくださる神 聖霊が臨むと、福音が証人たちを通してユダヤとサマリヤを越え、異邦人に伝えられました(使 1:8)。カイザリヤのイタリヤ隊という部隊の百人隊長であったコルネリオは異邦人でした。コルネリオとペテロは、幻の中で神のことばを聞きました(使10章)。秩序の神は、幻の中でそれぞれにみことばを語られることによって、一つの福音が地域や人種を越えて、異邦人にまで伝えられるというわざを成就されます。
荒唐無稽な夢への警告のみことば 一方、何の拠り所もない夢への警告のみことばもあります。伝道者の書の著者は「仕事が多いと夢を見る。ことばが多いと愚かな者の声となる」(伝 5:3)、「夢が多くなると、むなしいことばも多くなる。ただ神を恐れよ」(伝 5:7)と警告しています。 心に思い煩いや心配が多いと、現実逃避のための荒唐無稽な夢を見るというのです。また、エレミヤは「イスラエルの神、万軍の主は、こう仰せられる。『あなたがたのうちにいる預言者たちや、占い師たちにごまかされるな。あなたがたが夢を見させている、あなたがたの夢見る者の言うことを聞くな」(エレ29:8)と言いました。無分別な夢に対する迷信などは危険です。迷わせる者たちに対して警戒心を持ち、ただ神だけを恐れなければなりません。
日常で夢を見て生きる では、どのように日常生活の中で新しいビジョンを夢見て、夢の人として生きることができるでしょうか。 一つめに「夢のノート、夢の記録」を習慣にすることです。夢は、幻や寝ているときに見る夢だけではなく、神がくださる未来の計画、新しい考えなども含みます。ですから、神の御声を聞くたびに書き記すのです。 二つめに、夢とビジョン、未来への期待を、祈りに変えてください。夢の「祈りのノート」を作るのです。ただ書き留めるだけではなく、それが神の御心の通りになり、私の人生を通して成就するように祈るのです。 三つめに、夢やビジョン、未来に反するものに直面したときに失望しないように、みことばを暗唱してください。神の人は、真っ暗な夜道のように見えるときでも、明るさと輝きを増す人生を送らなければなりません(箴 4:18~19)。 四つめに、警告の夢を見たときに、罪がないかどうか心をさぐり、悔い改めてください。ダニエルは、ネブカデネザル王が見た夢の悲劇的な内容を解き明かしながら、「王さま、私の勧告を快く受け入れて、正しい行いによってあなたの罪を除き、貧しい者をあわれんであなたの咎を除いてください。そうすれば、あなたの繁栄は長く続くでしょう」(ダニ 4:27)と言いました。神がくださる警告の夢は、さばきではなく、悔い改めによって神の義を行うようにする、神の招きであることを覚えていなければなりません。 アメリカ大統領であったジミー・カーターは、「夢の代わりに後悔をするとき、その人生は老いを重ねる」と言いました。神や国のため、教会や家庭のため、そして神に似ていくため、夢を見ることをやめるならば、身体的年齢と関係なく、その人は老いた人なのです。気力も何もかも失って、夢を忘れている人はいませんか。もう一度、神がくださる夢を見ることができますように。
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