ニューコミュニティ(キリスト兄弟団西宮教会) 主任牧師 ● 小平牧生
日本の教会の多くは、今、先輩の牧師から若い牧師へとリーダーシップと責任が引き継がれて行く途上にあります。プロテスタント宣教150年を迎えた日本の教会は、将来に向かって大きな変化を求められています。そして、ある人たちは革新的な働きに召されています。しかしその背後には、伝統的な働きをしっかり受け継いでいく人も必要です。何もない荒れた地を耕して種を蒔くことは言うまでもなく大変な働きですが、その芽を養い育てていくことは、また異なる知恵と力と上からの忍耐を必要とする務めです。 私自身も、教会の土台を据えた初代開拓牧師からバトンを受け継いだ牧師として約25年間奉仕してきました。この期間は、私だけではなく、前任牧師にとっても教会全体にとっても祝福の時であるとともに、それぞれの立場で信仰と従順が求められる時であったと思います。新しい働きに進みたいと思うことも何度かありました。何にも縛られずに革新的な働きに挑戦している友人をうらやましく思うこともありました。しかし、そのような中で私はいつもヨシュアの姿に自分を重ねて、みことばに励まされて来ました。 「わたしはあなたに命じたではないか。強くあれ。雄々しくあれ。恐れてはならない。おののいてはならない」(ヨシ 1:9)。 ヨシュア記1章に記されていることがらを整理してみましょう。
時代は変わり、人は代わります イスラエルにとってモーセ以上の指導者はいません(申 34:10)。燃える柴の経験や出エジプトの経験に基づく言葉や行動には重みがあります。それは団体や教会の草創期の牧師にも同じことが言えます。しかし、そのような指導者も人も、やがて交代の時期を迎えます。モーセの死は、同時に社会や人々の変化を表しています。最初の時代の話にピンと来ない人が増え、以前は大切にされてきたあり方が軽んじられることも起こります。もはや、モーセのような指導者のカリスマをもって群れをまとめることはできなくなります。
しかし、神の約束は変わりません 偉大な指導者や最初のスピリットが失われた時、それでは何によって人々は一つになっていくのでしょうか。それは神の変わらないご計画と約束、すなわち神のみことばです。神様は新しい指導者ヨシュアに対して語られました。それは最初の指導者である「モーセに約束されたように約束の地を与えておられること」であり、「モーセとともにいたように神がともにいてくださること」です。日本における宣教の歴史には神の恵みが満ちています。それは神様の始められた御業であり、私たちに対するご計画は変わらず、その使命と約束は私たちに受け継がれているのです。
だから、神の民の歩みも変わりません 神様は、モーセによって与えられた使命を継続するために、「モーセが命じたすべての律法を変えてはならない」と語られたように、時代が変わっても変えてはならないことがあります。それは「私たちの信仰」です。時代や人が変わっても変わることのない信仰的なアイデンティティ、それが明確にされなければなりません。
けれども、神の民が変えなければならないこともあります リーダーが変わる時に求められたことは、ヨシュアがモーセのようになることではなく、神の民の一人一人が成熟することでした。私たち一人一人が信仰的にも人間的にも成熟し、おかれた立場や状況のそれぞれ異なるお互いを受け入れ、一つの目標に向かって進むことができるように。競争心や批判の目は一掃して互いに仕え合って愛し合う群れを築くことができるように。そのように自分自身を変えていくことが求められています。 モーセは偉大です。しかし、ヨシュアがいなければ、モーセの働きも全うされません。 日本宣教のために新しい働きを始める人が必要です。日本の教会の変えるべきものを変えていく人も重要です。しかし、主が始められた働きを受け継いで担い続ける人がいなければなりません。都市であっても地方であっても、大きな教会であっても小さな教会であっても、伝統的な働きを引き継いでいる多くの若い牧師や信徒の方々のために祈ります。あなたの個人的な夢は取り去られ、その生涯と働きは隠されたものであり続けるかもしれません。しかし、主がヨシュアのようにその働きに召しておられるのです。「強くあれ。雄々しくあれ。恐れてはならない。おののいてはならない。」主のからだである教会の一体性が美しく保たれることによって、かしらであるキリストの御名があがめられるように祈るものです。
小平牧生 1958年東京生まれ。青山学院大学、大阪神学院、キリスト兄弟団聖書学院に学ぶ。現在、ニューコミュニティ(キリスト兄弟団西宮教会)主任牧師。日本福音同盟副理事長。おもな働きは、人を育てることと、教会を増殖すること。恵夫人との間に3人の子どもが与えられている。
|