マタイの福音書の恵み ⑤

   キリストと律法Ⅰ①
 
オンヌリ教会主任牧師 ● ハ・ヨンジョ


イエスは外見に現れる行動よりも動機を大切に考えられました。つまり、山上の説教の一つめの重要な関心は、何をするかというよりもどのような者になるかということでした。二つめに、イエスの関心は、まことのクリスチャンが持つ影響力についてでした。家庭や職場、そのほかどこにいてもまことのクリスチャンとして生きるとき、ほかの人に影響力を与えるようにと言われました。そのようなクリスチャンの役割は、第一に腐敗していく世の中で塩のように防腐剤の役割をすること、第二に暗やみを照らす光の役割をすることでした。クリスチャンはこの世で塩の役割を通して社会参加し、光の役割を通して福音宣教をする人なのです。
そして三つめとして、イエスは、より本質的にクリスチャンの人生の糧について説明されました。では、一体このような影響力のある人が、罪や葛藤だらけの不条理なこの世でどのように生きるべきなのか、その具体的な指針はあるのでしょうか。みことばは、クリスチャンにはこの世で生きていく指針が明らかにあると語っています。

クリスチャンの人生の本質である「義」
第一に、クリスチャンの人生と行動様式は、「義」です。この「義」は、マタイの福音書5章6節と10節の八福の教えで二度も扱われました。今回のみことばである5章20節を見てみましょう。
「まことに、あなたがたに告げます。もしあなたがたの義が、律法学者やパリサイ人の義にまさるものでないなら、あなたがたは決して天の御国に、入れません」(マタ 5:20)。このみことばはイエスを長い間信じてきた私たちに、大きな衝撃を与えるかもしれません。なぜなら、多くのクリスチャンはまことのクリスチャンの人生の本質が「義」であると考えたことがほとんどないからです。私たちはイエスを信じると、善良に生きなくてはいけないとは知っていても、クリスチャンの人生の本質が「義」であるとは考えません。
神は私たちを選び、祝福され、罪を犯しても赦してくださり、御子を通して永遠のいのちと天の御国を与えてくださったため、私たちはイエスを信じるだけでいいと簡単に考えてきました。聖日を守り、献金をし、聖書勉強を熱心に行い、また天の御国の民のように善良に生きなさいというメッセージを聞いてきました。そして、慈善や奉仕、宣教をするなら、なかなか良いクリスチャンだと考えていました。
では、皆さんに二つの質問をします。まず、クリスチャンの人生の本質が義であると深刻に考えたことがありますか。もしそうだとしたら、皆さんの考えと言葉と行動は聖書で言う義に基づいて行われていますか。しかし、そのようにできていない人が多いはずです。正しく生きなくてはいけないことは知っていても、義が私たちの人生の本質であるという事実を私たちは避けてきました。信仰の要点は信仰によって義とされることにあります。
直接「私」にされた命令
第二に、クリスチャンが正しく生きなくてはならないという絶対的な命題は、イエスが直接「私」にされた命令です。これを八福の教えと比較してみると、より正確に理解することができます。
イエスがクリスチャンの性質である八福の教えを説明されたとき、三人称を使われました。マタイの福音書5章3節で、「心の貧しい者は幸いです。天の御国はその人たちのものだから」と言われましたが、これは天の御国の真理の客観性を示しています。誰であれ、心が貧しい者は天の御国を所有することができるのです。
そして、このみことばの後に続く、クリスチャンの影響力について語られるときには、二人称を使われています。「あなたがたは、地の塩です」(13節)「あなたがたは、世界の光です」(14節)と言われました。私たちの役割と位置について述べています。しかし、クリスチャンの人生の本質である義については、一人称で語られています。18節と20節には「まことに、あなたがたに告げます」と記されています。これはあなたがたが正しく生きなくてはならないと、イエスが直接「私」に個人的に語られているのです。ですから、クリスチャンが正しく生きなくてはならないというみことばは、第三者の立場で聞くみことばではなく、私たちがそうであるべきだというみことばではなく、命令のみことばです。命令は必ず守らなくてはならないものです。
イエスは昇天される前に大宣教命令を与えられました。(マタ 28:19~20)。この命令に従うために、教会は宣教に全力を尽くすべきです。教会は宣教師を派遣し、宣教師のために祈ることに力を注ぐべきです。教会が宣教に関する命令を与えられたのと同じように、私たち個人は「正しく生きなさい」という命令を与えられました。

律法を成就するために来られたイエス
本文は四つの部分から構成されています。この個所はクリスチャンが行わなくてはならない義を明確に説明しています。まず、17~18節は、主の教えが旧約聖書のすべてのみことばと完全に一致することを示しています。つまり、キリストと律法との関係です。19~20節はクリスチャンの人生とはまことの義の人生であることを教えています。つまり、クリスチャンと律法の関係です。続く21節から7章全体の山上の説教のすべてのみことばは、義についての実例であり、適用であることを示しています。では、17~18節のキリストと律法との関係を見ていきましょう。
「わたしが来たのは律法や預言者を廃棄するためだと思ってはなりません。廃棄するためにではなく、成就するために来たのです」(17節)。
当時、多くの宗教専門家は、イエスの教えと旧約聖書の教えは別のものだと考えました。ですから、四つの福音書を見ると、イエスとパリサイ人、律法学者の教えが旧約聖書の解釈において衝突しています。イエスのみことばが旧約聖書の教えと違うと何度も攻撃する彼らに、イエスはみことばが違うのではなく、彼らが旧約聖書の神のみことばについて間違った認識と偏見を持っているのだと指摘されました。
最近、韓国には教会に10年以上通っているのに、聖書を一度も読んだことのない人がいます。長く教会に通ったため、メッセージは数多く聞いたはずです。しかし、すべてが断片的な知識にすぎません。そのため、1年間メッセージを聞いても、何を聞いたのかわかりません。また、聖書を体系的に勉強したことがないため、信仰について、聖書について偏見があります。そして、その偏見が正しいと思っています。なんと恐ろしい独善でしょうか。これはまるで、この当時の人々が、自分たち以外に旧約聖書の専門家はいないと考え、イエスを死にまで追い込んだのと同じです。
たとえば、殺してはならないというみことばの前で、外見的に殺人をしなければ律法を守ったと彼らは解釈をしました。しかし、イエスは、心に憎しみや怒りがあるのならば、それは殺人を犯したのと同じであると言われました。律法のメッセージの本質を解釈されたのです。これはなんと大きな差でしょうか。このようなことは、その時代の律法学者たちだけが犯した過ちではなく、今日の、特にクリスチャンホームで育った人々が犯しがちな過ちです。実際に聖書を読まず、みことばを適当に聞いて、あいまいに知っている過ちなのです。




 

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