日本バプテスト教会連合 御園バプテスト教会 牧師 ● 丸山悟司
交わりから生まれる広がり 日本プロテスタント宣教150周年を迎え、それを記念して様々なイベントが各地で繰り広げられている。ことに昨年7月、横浜で開催された「日本プロテスタント宣教150周年記念大会」は、日本の福音派、聖霊派、社会派、さらにはカトリックからも参加者が詰めかけ、盛況を極めた。日本のプロテスタント教会史においても、福音派、聖霊派、社会派の三者が一堂に会して共に集会を組織したことは画期的といわなくてはならない。しかしまた、その陰で、三つの派の各代表が、長い時間をかけ、地道に個人的な交わりを築き上げてきたであろうことが推測できる。それでなければ、大会当日にあれだけの一体感を醸し出せるはずはない。個人レベルでの交わりの深さが、教派を越えた広がりを生んだといえよう。 個人的にも、交わりが生む広がりの尊さを感じさせられている。私が牧師を務める御園バプテスト教会は福音派に属するが、つい先日、聖霊派を代表する賛美チームのひとつを私たちの教会に迎え、チャーチ・ライブを開催した。その前日、教会の中心メンバーでもあった一人の教会員が突然、天に召されるという衝撃的な出来事があり、牧師である私もうろたえていた。チャーチ・ライブ自体、開催すべきか選択を迫られる局面であったが、予定通り実施した。内容はすばらしいものであった。賛美チームの面々も、前日に教会に走った悲しみを考慮し、実に配慮された選曲とMCトークであった。バンド・メンバーの証しで語られたことだが、彼らの知人の牧師が天に召されて深い憂いの中にあったとき、同じくその死を憂いていた二人の牧師が同時に同じ夢を見たそうだ。その夢とは、亡くなった牧師が天に凱旋し、御使いたちの喜びの大合唱に迎えられていた…というものであった。私たち福音派は、あまり「夢」とか「幻」をふだん強調しないが、その真心のこもった証しに力づけられ、励ましを受けた。 実は、そうした聖霊派の賛美チームを迎えるきっかけとなったのは、やはり個人レベルでのつながりである。私はそのバンドのボーカルを務められる代表のT氏のお父様から、かつて中学生のとき、バプテスマを受けている。T氏とは一緒に山奥に入って祈ったこともある。食事を共にしたこともある(今回はチャーチ・ライブ開演前に一緒に教会でカレー・ライスを食した)。しかし私が二十歳すぎ、アメリカに留学をしたことを機に、いささか個人的な交わりは途絶えていた。帰国して私は福音派の群れに所属することになり、一方、T氏は聖霊派路線を歩んでいた。気づいてみたらT氏は聖霊派、私は福音派ということになっていた。しかし、それだからこそ、すでに与えられている個人レベルでの交わりを再び回復させ、なおそれを深めていくことにより、幾分でも教派の壁を越えていくことができるのではないかと、お互いの思いが一致したのである。この話を持ちかけてくれたT氏には感謝したい。 一概に教派の壁を超えるとは言っても、なかなかそれは容易ではないだろう。何もないところから漠然と何かを創りだそうとしても思うようにはいかないことが多い。しかし、すでに与えられている交わりを、あるときは掘り起こし、より深めていくことにより、そこに結果として良い広がりが生まれてくるのではないだろうか。主が与えてくださる機会を見過ごしにすることなく、大切にしたい。
神ご自身の働きの広がり 最近よく、イスラム圏に住むイスラム教徒たちが、「夢」とか「幻」をとおしてキリスト教に改宗したという話が伝えられる。彼らはいわば、イエス・キリストの福音に関する知識を持たず、クリスチャンとのコンタクトもないゆえに、そのような方法でしかキリスト教に接する機会がない。たとえば次のような話である。クリスチャンやユダヤ人を軽蔑していた、ある急進的なエジプト人イスラム教徒に、“救い主”が夢の中で現れ、彼の魂に触れ、その生涯が変えられたということ。イラン人のティーンエイジャーが、幻の中でイエスが御手を彼に差しのべられたとき、電流が体全体を何度も流れるかのようで、心は喜びにあふれ、子どもの時以来、初めて涙を流したということ。また、父親を信仰に導くのに先立って、自らイエスについて七つの夢を見たという北ナイジェリアに住むイスラム教徒の男性の話…などである。 このように、夢や幻の中にイエスが現れるという事例は、福音派のクリスチャンには相容れないものがあるかもしれない。しかし現に、それより多くのイスラム教徒たちが回心し、人生が変えられていることを思うとき、決してそれらを間違った体験として葬ってしまうわけにはいかない。むしろ、神という方を自分の範疇で、型に収まるように矮小化し、自らの神学で神の働きを限定してしまわないように気をつけたい。神ご自身の働きの広がりを認め、教派の壁を乗り越え、私たち自身の交わりをもなお広げていきたい。
丸山悟司 1965年静岡県生まれ。中学三年生で受洗。中学卒業後、就職。定時制高校、大検を経て二十歳すぎに米国に留学。ウィットワース大学、ベテル神学校卒業。帰国後、日本バプテスト教会連合・緑キリスト教会副牧師を経て、現在、御園バプテスト教会牧師。
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