聖徒の敬虔訓練④

   希望と敬虔訓練
 

ホン・インジョン ● 長老会神学大学 実践神学教授

人間は、常に何か希望を持って生きています。つまり、いつかは自分が望む状況になるだろうという期待を持って生きているのです。これは、成長に対する欲求を持っているということです。人格、信仰、経済的に今よりもよくなることを期待するのは当然なことです。しかし、一瞬にして期待が落胆へと変わり、絶望の中に生きている人たちも増えています。
事実、人間の問題の中心には希望が存在します。これまでのカウンセラーとしての経験を通して、夫婦の不和問題の中心には「希望がない」ことがわかりました。離婚理由の大部分として、性格の不一致、経済的困難、浮気、家庭内暴力、賭博、各種薬物中毒、カルトにはまるなどがあげられます。しかし、これらはすべて外面的な理由に過ぎません。実は、問題解決のために努力したのにもかかわらず、状況と相手が変わることに希望が持てないと判断すると、離婚するのです。
アンドリュー・レスターは、「牧会神学的観点から見て、私たちは常に問題の根本に絶望が存在する可能性を念頭に置くべきである」と指摘します。では、希望を失ったこの時代に希望を持って生きていくためには、どのようにしたらよいのでしょう。
聖書の中の希望探し
預言者イザヤが活動していたのは暗やみの時代でした。ウジヤ王のために信仰は形ばかりになり、社会は腐敗しました。イザヤは、神に反逆した罪を悔い改めるよう民に叫びます。「あなたがたは、なおもどこを打たれようというのか。反逆に反逆を重ねて。頭は残すところなく病にかかり、心臓もすっかり弱り果てている。足の裏から頭まで・・・ 油で和らげてももらえない」(イザ 1:5~6)。
イザヤは、イスラエルの民が全身あざだらけで健全なところが一つもないと語りますが、希望も伝えます。「エッサイの根株から新芽が生え、その根から若枝が出て実を結ぶ」(イザ 11:1)。今イスラエルが苦難の中にあっても、回復し、彼らを通してすべての民が神に立ち返ると宣言します。また、パウロは、ローマにいる聖徒たちに送った手紙に、イザヤのこのことばを引用します。「エッサイの根が起こる。異邦人を治めるために立ち上がる方である。異邦人はこの方に望みをかける」(ロマ 15:12)。
事実、パウロがローマ人への手紙を書いた当時や、彼が引用したイザヤ11章が書かれた当時は暗やみでした。使徒の働き18章2節から3節には、AD 49年から50年にクラウデオ帝がローマからユダヤ人たちを追放したと書かれています。その結果、ユダヤ人たちは各国に散らばりました。その上、イスラエルは国を奪われ、キリスト教への迫害は少しずつ激しくなっていきました。しかし、使徒パウロはイザヤのことばを引用し、「どうか、望みの神が、あなたがたを信仰によるすべての喜びと平和をもって満たし、聖霊の力によって望みにあふれてくださいますように」(ロマ 15:13)と宣言します。神の人イザヤとパウロは、迫害を受け、国を奪われたときにも一筋の希望を見たのです。
三位一体の神は、希望そのものです。父なる神は希望の本質であり骨格です。「望みの神が、あなたがたを信仰によるすべての喜びと平和をもって満たし」てくださるのです。子なる神は希望の根であり、源です。「異邦人を治めるために立ち上がる方」であり「異邦人はこの方に望みをかける」ようにされます。イエスは全世界を治めることによって希望を与えられ、私たちはイエスに近づくとき希望を見い出すことができます。聖霊なる神は希望の実であり、力です。聖霊なる神は、希望の実を結ぶことができるように力を与えてくださいます。希望の三位一体の神に対する信仰は、パウロが働きを最後まで成し遂げることができるように導きました。
神の人々は希望の人々であり、どのような環境や障害の中でも希望を見出して歩みました。問題に直面したときに、希望が与えてくれるものについて説明した文が、チャールズ・スウィンドルの『ペテロの手紙講解Hope』で引用された「年老いた漁夫の手紙」です。
「不幸というトンネルに閉じ込められたとき、希望はそのトンネルの先で輝く光のようだ。疲れ果てたとき希望は新しい活力を与え、落胆したとき勇気を与える。やめてしまいたいという誘惑を受けるとき、希望は私たちが諦めないようにしてくれる。道に迷って動揺するとき、希望は恐怖心を鈍くしてくれる。長い間病気と闘っているとき、希望はその苦痛を耐えぬくことができるようにしてくれる。最悪の状況を恐れるとき、希望は神がなおも治めておられることを思い出させる。悪い決定によって引き起こされた結果に耐えなくてはならないとき、希望は私たちの回復を促進させる。職場を失ったとき、希望はまだ未来があると言ってくれる。座って待つしかないとき、希望は信じて待つことができるよう忍耐を与える。裏切られ見捨てられたと感じるとき、希望は私たちが一人ではなく、もう一度成功できることを思い出させる。愛する人に最期の別れの挨拶をするとき、天国の人生への希望が悲しみに打ち勝つようにしてくれる。」
では、日常生活において、どのように希望を持って生きていけばよいのでしょうか。

希望を生活化する
神のいない人生は、パウロの告白のように「私は、ほんとうにみじめな人間です。だれがこの死の、からだから、私を救い出してくれるのでしょうか」(ロマ 7:24)と嘆くしかありません。しかし、パウロはその告白の後に「こういうわけで、今は、キリスト・イエスにある者が罪に定められることは決してありません。なぜなら、キリスト・イエスにある、いのちの御霊の原理が、罪と死の原理から、あなたを解放したからです」(ロマ 8:1~2)と宣言します。
キリストにあって罪の問題を解決し、新しいいのちを受けたパウロは人生の数多くの危険と死の峠に直面しました。彼は石に打たれ、死にかけ、飢え、眠れず、ぼろをまといましたが、希望を失ったり恐怖に陥ったりせず、「死よ。おまえの勝利はどこにあるのか。死よ。おまえのとげはどこにあるのか」(Ⅰコリ 15:55)と語ります。そして「しかし、神に感謝すべきです。神は、私たちの主イエス・キリストによって、私たちに勝利を与えてくださいました。・・・堅く立って、動かされることなく、いつも主のわざに励みなさい。あなたがたは自分たちの労苦が、主にあってむだでないことを知っているのですから」(Ⅰコリ 15:57~58)と慰めます。
パウロが落胆しなかった理由は何でしょうか。コリント人への手紙第一15章で、一貫して展開する復活の望み(希望)に対する堅固な信仰のためです。パウロの復活に対する望みは、どのような状況や苦痛の中でも感謝できるように導きました。このように、復活の望みは人間の問題の核心を越えるのです。では、どのようにしたらキリストにあって希望ある存在であることを日々発見しながら生きられるのでしょうか。

希望はイエスの統治から
イザヤはイエスが来られることをこのように伝えます。「ひとりのみどりごが、私たちのために生まれる。・・・主権はその肩にあり、その名は『不思議な助言者、力ある神、永遠の父、平和の君』と呼ばれる」(イザ 9:6)。ここから希望を生活化するためのキーワードを探すことができます。希望はただイエスにあるということです。人間の問題は、自らの人生をコントロールすることができるという高慢にあります。私たちは創造主のもとに行くときにだけ、希望を見出すことができます。詩篇の著者は人生のむなしさを見て落胆しますが、主に希望があることを告白します。「主よ。お知らせください。私の終わり、私の齢が、どれだけなのか。私が、どんなに、はかないかを知ることができるように・・・主よ。今、私は何を待ち望みましょう。私の望み、それはあなたです」(詩 39:4~7)。

希望は昨日より少しよくなること
イザヤとパウロは、歴史の中でみどりごとして来られたイエスを通して人類と全世界のための救いの光を見ます。根株から新芽が生え、若枝が出て、実を結ぶたとえは、神の救いの計画に時期と過程があることを示しています。
人間は、困難に直面すると人生の逆転を夢見ます。しかし神が人類を救われる方法は、エッサイの家を選ばれ、一人のみどりごを通してなされることでした。このように、希望を生活化するためには小さな変化から始めるのです。ですから、私たちは「昨日より少しよくなる」ことを通して、日常において希望を発見することができます。三日坊主という言葉がありますが、三日間でも変化があるのならば大きな進展です。一日では、人格の成熟も習慣の変化も完成されません。昨日より少しよくなることで十分です。

心の喜びと舌の楽しみ
神の霊が臨在すると、変化が起こります。聖霊が臨んだとき、ペテロと弟子たちはもはや恐れることなくイエスがキリストだと堂々と叫びました(使 2:14~21)。ペテロはダビデの詩を引用し、希望に変えられた人生の姿を表現します。「それゆえ、私の心は楽しみ、私の舌は大いに喜んだ。さらに私の肉体も望みの中に安らう」(使 2:26)。イエスとともに歩む人生とは、心の喜びと舌の楽しみがあふれ、私たちの肉体も希望の中にあることを意味します。死につながれなかったイエスの復活を通して、心の喜びと舌の楽しみを回復してくださったことが希望の根拠であると弟子たちは告白します(使 2:24~28)。イエスは希望の源であり、聖霊はその力と希望をあふれさせてくださいます。私たちの人生を神の観点で見て、昨日よりきょう少しよくなることを期待し、心と舌の復活への希望があふれるとき、教会共同体と希望を分かち合う聖徒になります。「私のたましいは黙って、ただ神を待ち望む。私の望みは神から来るからだ」(詩 62:5)。




 

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