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日本の教会の未来を見つめて
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神が愛された国・日本 |
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神が愛された国・日本
保守バプテスト同盟 福島第一聖書バプテスト教会 牧師 ● 佐藤彰
北陸で 今年金沢を訪れた際、卯辰山の看板を目にしました。そこは江戸末期、九州の浦上から強制移民させられたキリシタンたちが開墾を命じられた強制労働の地です。その有様は過酷でしたが、彼らは互いに励まし合いながら、従事しました。その姿に感動した監視役の長尾八衛門奉行は、明治に移り、キリスト教禁教の高札が撤去されると、来日した宣教師ウィンのもとを訪ね、1年間のバイブルスタディーを経て洗礼に至ったのです。 後に次男、長尾巻は牧師となり、浄土真宗の強い北陸の大聖寺で壮絶な伝道を繰り広げることとなります。そして、そんな姿に触れて感動したのが、なんと後にこの国に大きな影響を与えることとなる、当時まだ19歳の賀川豊彦神学生でした。彼は時代をまたぐかたちで、明治から大正、昭和にかけて特別の器として用いられます。実に、彼の生涯における最後の主日メッセージは、在りし日の長尾牧師との出会いが、いかに人生に大きな影響を与えたかを物語るものでした。 江戸末期のキリシタンから、明治の長尾父子、さらに大正、昭和にかけて活躍した賀川豊彦に至るまで、宣教のバトンは受け継がれ、神の国の働きの系譜は、連綿として続いたのです。神は確かにこの国の土壌を耕し、歴史に介在し、愛してこられました。
東北でも 私が遣わされた地にも、主は第二次世界大戦前後から今日に至るまで、静かに時に激しく、働いてこられました。 昨年私はこの地で、6度目の献堂式を迎えました。今回は、厳しくなった建築基準法改正の影響もあって苦労しましたが、そこで不思議な体験をしました。私たちの教会は昨年ちょうど設立60周年。そのことを意識せず、突然降って湧いたような新会堂建設プランに、ただ慌ただしく着手していたのです。 私たちの教会は、戦争後間もなくアメリカからやってきた25歳の宣教師夫妻によって始められました。当時、東北の寒村における宣教は厳しく、宣教師夫人は日本で亡くなられました。しかし、宣教の働きは続行。次の日本人牧師は30年の長きに渡り、宣教のバトンを引き継がれました。そこは出稼ぎの村。想像を絶する苦労があったようです。集会記録を見ると、「礼拝3名」「今日は流れた」等の記録がつづられ、食べるのにも事欠く日もあったと聞いています。 そんな尊い足跡の上にこの教会は存在している。感動と共にスタートした私の牧師生活でしたが、昨年チャレンジした新会堂建設の際、新たに私たちの営みの一切が神の御手の中に握られていることを、体験したのです。というのは、私たちの教会の敷地は、そもそも60年前教会にささげられた梨畑で、鋭角三角形です。そこに、かつて来日した宣教師が、戦後アーリーアメリカン調の洒落た教会堂を建て、宣教の火ぶたを切ったのです。後にバトンを受け継いだ私たちは、少し背伸びをして、26年程前、思い切って合掌造りの天に向かうかたちをした礼拝堂を建てました。数年後、今度はその三角形の土地の頂点に、東北の根強い因習を考えて、鉄筋コンクリートを銅版で包む形のユニークな納骨堂を作りました。そして昨年、気がついたら宣教60周年の記念すべき年に、百年もつ建物をと願いつつ、この土地の形状に合った最終的な建物としての新会堂建設に取り組んでいたのです。気がつくと、一切の建物が納骨堂に向かっていました。60年前にささげられた、鋭角三角形の形状をした土地の頂点に立つ納骨堂に向い、26年前完成した天を仰ぐ形の合掌造りの礼拝堂が。また今回完成した、弧を描き、復活の信仰と地上における暖かい交流を表現した新会堂ホールも。 主は、私たちの喜びと忍耐の日々を混ぜこぜにし、すべてをのみ込むかたちで、御自身の御計画を、60年の歳月をかけて全うされたのだと思います。主こそ真の設計士。私たちはその大きな御手の中に包まれていました。
苦しみの向こうに祝福がある 海外に行くと、日本人が回心するパーセンテージが上がるという話を聞きます。周りに多くのクリスチャンがいて、肩身が狭い日本とは違うと。しかし、だからこそこの国で生きるクリスチャンと教会には、頭が下がる思いがします。私はこれまで、多くの教会を回らせていただき、各地でこの国を愛して止まない主の足跡を見てきました。イザヤ書37章31節に「ユダの家ののがれて残った者は、下に根を張り、上に実を結ぶ」とあります。神の国の働きには、順序があり、まずは根、次に実です。前後には、それまでの2年間は何も起こらないことが付記されています。新約聖書の「忍耐」には、「持ちこたえる」との意味合いがあります。「あきらめるな。その向こうに、実のなる季節が待っている」とも聞こえます。主は、各地に刻まれた足跡を浮き立たせ、「待ち望め」と私たちに呼びかけておられるのではないでしょうか。
佐藤彰 保守バプテスト同盟福島第一聖書バプテスト教会牧師。1957年山形市生まれ。1982年神学校卒業後、同教会着任。全国各地の教会などを巡回して、聖書のわかりやすい話をしている。著書は『教会員こころえ帖』、『マルコの福音書で学ぶ信仰生活入門』など。
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