大切なことに目を開かれて 斎藤五十三 ● 日本同盟基督教団
はじめまして。台湾宣教師の斎藤五十三、千恵子です。子どもは結実(中学3年)、謙治(中学1年)、頌子(小学5年)、そして真依(小学1年)の全部で4人の6人家族です。私たちは、2004年4月に日本同盟基督教団の派遣宣教師として台湾にやって来ました。 第1期は2007年11月末まで、主に中国語の語学研修に取り組みました。そして2008年4月に再び来台、現在は第2期宣教に汗を流しているところです。 私たちのおもな働きは、開拓伝道を含めた教会形成の支援です。具体的には複数の教会と協力しつつ、台湾で人気の日本語クラスを開設して、地域の方々が教会に足を運ぶきっかけを作ったり、牧師のいない教会での礼拝奉仕、祈祷会、聖書研究の導きなどをしています。 台湾に来てからもう5年目を迎えましたが、これまでを振り返るときに、いろんな山や坂があったことを思い出します。言葉のできなかった当初は、生活上のさまざまな労苦がありました。また約3年にわたった語学研修のストレスも本当に大きなものでした。語学研修を終えた今もなお、語学力の限界を覚えることが日常的に度々あります。 そうした数々の苦労の中から、何か一つ特筆すべきものがあるとすれば、間違いなく病気の経験であろうと思います。度重なるさまざまなストレス、疲労が蓄積したのでしょうか。来台2年目の秋頃から胃に不快感を覚えるようになり、検査を受けてみると潰瘍になっているとのこと。それに加えて精神的には、いわゆる「燃え尽き」の状態になり、語学学校にすら通えなくなってしまいました。その後も状況は容易に改善せず、ついには2ヶ月ほどの帰国療養にまで及ぶなど、砂を噛むような日々を過ごしたことを今でもよく思い出します。あの頃は、連日のように妻の千恵子に向かい「宣教師をやめたい」ともらし続けました。実際、派遣母体の同盟基督教団には、何度、宣教師の退職を申請しようかと思ったか分かりません。 しかしながら、そうしたつらいトンネルのような日々を過ごす中で、私はそれまで気づかなかった大切なことに初めて目を開かれたのです。私の病気を案じて私のために熱い祈りをささげてくださった諸教会の皆さん、そして斎藤がまた帰って来るようにと待ち続けてくださった台湾の牧師、兄弟姉妹の皆さん。自分はこんなに多くの人に祈られ、愛されていたのかと。 そして、私のような弱い器のために、そのような多くの支援者を備えてくださった主の恵みに気づく中で、私の心身は徐々に回復していきました。もちろん身近で支えてくれた家族にも、感謝の思いが溢れるばかりです。ただ黙って私のそばに寄り添ってくれた妻の千恵子、また父を案じ、祈り支えてくれた子どもたちには、本当にありがとうと伝えたいと思います。 今静かに振り返ると、あの病気の経験は、確かにつらいものではあったのですけれど、そうしたつらさも不思議とどこか遠い彼方の記憶になってしまったようにも思えます。そして今はむしろ、あの病気の経験を通して小さく、弱くされ、今なおそれでも宣教師として立つことを許されている。そうした働きの日々に静かな幸せを感じ始めているのです。 「しかし、主は、『わたしの恵みは、あなたに十分である。というのは、わたしの力は、弱さのうちに完全に現れるからである』と言われたのです。」(Ⅱコリ 12:9) 皆さんは、台湾にどのような印象をお持ちでしょうか。マンゴ、ライチなどの果物の王国と言われる台湾です。昨今は年間100万人とも言われている日本人が訪れていますので、そうした観光のイメージを抱く方も多いかもしれません。 しかし、知っていただきたいのは台湾と日本との間に存在する歴史的な深い結びつきです。日本が第2次世界大戦に敗れるまで、台湾は50年にわたって日本の植民地でした。一般に台湾の人は日本に好意的であると言われますが、それは過去の植民地政策がよかったからではありません。日本が台湾を離れてから戦後30年もの間、新しく始まった独裁政治の中、多くの台湾人が苦労に苦労を重ねてきたからです。そうした戦後の苦しみの中、多くの人はいつしか日本を懐かしむ不思議な気持ちを持つようになったのだそうです。 台湾の人は一般に言われるような単純な親日ではありません。歴史を調べるなら、そこにはさまざまな植民地支配の傷跡もあるのです。そのような歴史を背負いながら台湾で福音を伝えています。いつも祈りによって支えてくださる皆様に本当に感謝しています。是非一度、台湾を訪れてください。皆様の祝福をお祈りしています。
¦ 祈りの課題 ¦ 1. 異文化の中で子どもたちが心身ともに健やかな成長を続けていくように。 2. 協力している二教会のために。 ① 竹子坑(ジューズケン)教会が新たに教会を生み出すことができるように。 ② 外埔(ワイプ)教会の自立と牧師招聘のため。 3. 日本の家族(両親、弟、祖母)の救いのため。
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