愛の交響曲⑥

   成熟した愛
 

成熟した愛

ハ・ヨンジョ

オンヌリ教会主任牧師

今月は、「成熟した愛」について考えてみましょう。成熟するという単語には、「完全に熟す」という意味があります。大きな満月のように、はちきれんばかりに満ちることを言います。成熟した人と話していると、謙遜を感じることでしょう。また、謙遜だけでなく、知恵と洞察力も感じます。そのためすべてのことが明確になります。成熟した人のところによく行きたくなるものです。
成熟していない人とはどのような人でしょうか。まずその人と話すと、とてももどかしく感じます。同じことを何度も繰り返して言わなければならず、物事が行き詰まり、実りがありません。子どもの特徴は、未熟さです。私たちの愛は、誤ったものではなく未熟なものです。未熟なために他人を傷つけ、失敗することが多いのです。
完全な愛が神に属するものであり、不完全な愛が人間に属すものであるならば、成熟した愛は人に徳を与え、未熟な愛は人を不自由にさせます。この2つの愛について考えてみましょう。

子どもの愛、未熟さ
成熟した愛と未熟な愛について、たとえを3つ挙げてみます。1つ目は子どもとおとなのたとえ、2つ目は鏡に映るものと顔と顔とを合わせて見ることのたとえ、3つ目は一部分を知ることと完全に知ることのたとえです。
まず、子どもとおとなのたとえから見てみましょう。
「私が子どもであったときには、子どもとして話し、子どもとして考え、子どもとして論じましたが、おとなになったときには、子どものことをやめました」(Ⅰコリ 13:11)。
一般的に、子どものときは分別がなく、知恵も足りません。本文では、子どもであったときには子どもとして話したとあります。子どもとはどのようなものでしょうか。子どもはいつも甘えて他人への配慮を知りません。駄々をこねてわがままを繰り返します。小さなことですぐに怒り、大声でわめきます。また、語彙力に欠けるので自分の言葉のレベルに合わない話は理解できません。
次に、子どもとして考えたとあります。子どもの世界観はとても単純です。単純に理解し、単純に考え、単純に話します。子どもの世界は自己中心的です。自分が経験した世界しか知りません。大人になってもこのように生きる人たちはたくさんいます。いつも自己中心で駄々をこね、自分の主張ばかりで他人の立場を思いやらないのに、愛が生まれるでしょうか。愛は愛でも、人を悩ませる愛です。
最後に、子どもとして論じたとあります。言葉は理解を生み、理解は考えを生みます。子どもは知恵と洞察力がなく、考えに深さや広さ、高さがありません。前後の状況も考えずに感じるまま、思いのままに話します。使徒パウロは、未熟な愛は子どもの愛と同じだと表現しています。

おとなの愛、配慮と傾聴
では、成熟した愛はどのようなものでしょうか。それは子どもではなく、おとなの愛を指します。ここでのおとなとは、成熟し、よく訓練された人のことです。
成熟した人はおとなの話し方で話します。おとなは言うべきことと言うべきでないことをよく区別します。表現力が豊かで、コミュニケーションの方法を知っています。声に出す言葉だけでなく、言葉にしない想像力まで添えて伝えられます。それが詩など、さまざまな形で表現されるのです。
他人への配慮もおとなの特徴です。他人を配慮しない人は、いつも自分の分だけ持って行ってしまいます。そして、自分への愛を強要し、相手に必要な愛を分け与えようとはしません。また、おとなは他人の話をよく聞きます。他人の話を最後まで聞いてあげる愛、これも成熟した愛の姿です。
イエスはどれほど私たちを配慮してくださっているでしょうか。イエスは弱い者、病人、力のない者たちを配慮し、また私たちの話をよく聞いてくださいます。つまり、他人の面倒をよくみてあげることが愛なのです。神学校時代、耳にたこができるほど言われた言葉が、「人のために人生を生きよ」「人を愛せ」でした。これが成熟した愛です。
成熟した人はおとなの理解力を持っています。道理をわきまえ、深い意味まで汲み取ります。相手の言葉よりも思いを理解し、相手の思いよりも意図を知ろうとします。おとなは些細なことにこだわりません、些細なことで争いもしません。理解力が豊かだからです。
成熟した人はおとなの考え方をします。成熟した思考は人を生かし、人を理解します。思いは思想を生み、思想は行動を作ります。成熟した人はどんなこともおろそかにせず、無礼なことをせず、迷惑をかけない愛し方をします。パウロは、成熟したクリスチャンは不完全な自分の愛ではなく、神の全き愛に拠り頼むと言っています。
顔と顔とを合わせて見る愛
次に、2つ目のたとえについて見てみましょう。「今、私たちは鏡にぼんやり映るものを見ていますが、その時には顔と顔とを合わせて見ることになります」(Ⅰコリ 13:12a)。
「未熟な愛は鏡で自分の顔を見るようなもの」と説明しています。初代教会の時代には技術が発達していなかったので、銅や金で鏡を作っていましたが、今の鏡のようにはっきりと顔を映すことができず、ぼやけていました。未熟な愛はピントのずれた映像と同じです。しかし、成熟した愛は顔と顔とを合わせて見るような感動があると言っています。それはどのような愛でしょうか。絶対者であられる神が私たちにくださる愛です。神の御顔と顔を合わせて見る、その愛です。太陽でさえもまぶしく感じるのに、神の御顔は私たちの目にどれほどまぶしいことでしょう。私たちにその愛があれば、赦せないことはなく、理解できないことはなく、受け入れられない人はいません。
迷惑をかける人やつきあいにくい人とは、なるべく会わないように避けようとしますが、そのような人こそ抱きしめ、ともに泣き、理解し、思いやってあげなければなりません。神の愛のクライマックスは、イエス・キリストです。主がなさったように私たちもすることです。

完全に知る愛
最後に3つ目の、一部分しか知らないことと、完全に知ることのたとえです。「今、私は一部分しか知りませんが、その時には、私が完全に知られているのと同じように、私も完全に知ることになります」(Ⅰコリ 13:12b)。
部分的に知っているということは、完全な知識ではないということです。私が自分を理解するのも、私の愛もみな部分的なものです。全体を見たことがないからです。皆さん、神の救いのドラマ全体を見たことがありますか。私の救いは神の救いのドラマのほんの一部に過ぎません。私たちは、神の御国と終末の世界、ヨハネの黙示録とそのあとの天上の世界について聖書的な知識が足りません。そのため、驚くべき神の救いの計画について、とても単純に理解しているのです。未来を知らないために、現在争っているのです。未来を知り、終末を理解するなら、現在の救いが確実にあらわれます。

不足のない満ちた愛
私たちは、未熟な愛と成熟した愛について、使徒パウロの3つの説明を見てきました。このなかで成熟した愛に該当するものは、「おとなの愛」「顔と顔とを合わせる愛」「完全に知る愛」です。この3つの愛にどのような意味があるでしょうか。3つの意味が考えられます。
1つ目、成熟した愛は「私は、乏しいことがありません」というダビデの告白のように、不足のない愛です。人間の愛には傷や欠点があり、不足があります。しかし、神の愛には傷も欠点もなく、足りないこともありません。「主は私の羊飼い。私は、乏しいことがありません」(詩 23:1)。「たくさんある」というより、「乏しいことがない」という概念が重要です。満ち足りるというのは、いっぱいに満ちていることを意味します。これ以上不足のない状態です。神の豊かさが私たちの不足をすべて満たしてくださるのです。

回復といやし、力ある愛
2つ目、成熟した愛は回復といやしを意味します。病み、傷ついた弱い者たちをいやし、強める力がここにあります。「イエスのうわさはシリヤ全体に広まった。それで人々は、さまざまな病気や痛みに苦しむ病人、悪霊につかれた人、てんかんの人、中風の人などをみな、みもとに連れてきた。イエスは彼らをいやされた」(マタ 4:24)。イエスはどんなに忙しくても病をいやしてくださいました。
3つ目、成熟した愛には力があります。成熟した愛には柔らかな力があります。人を理解し、心を和らげて心の扉を開かせる愛の力があります。絶望を希望に変え、敗北を勝利に変える赦しの力があるのです。
「愛は寛容であり、愛は親切です。また人をねたみません。愛は自慢せず、高慢になりません。礼儀に反することをせず、自分の利益を求めず、怒らず、人のした悪を思わず、不正を喜ばずに真理を喜びます。すべてをがまんし、すべてを信じ、すべてを期待し、すべてを耐え忍びます。愛は決して絶えることがありません。預言の賜物ならばすたれます。異言ならばやみます。知識ならばすたれます」(Ⅰコリ 13:4~8)。とても重要な聖書個所です。
イエスの愛は完全な愛です。成熟した愛です。その愛をイエスが私たちに注いでくださいました。それを信じ、その愛を生かすことができるように祈りましょう。すでに皆さんの中に、その愛は与えられているのです。そのことを信じて、それを用いてください。人を生かし、助けることができるのです。皆さん、人を思いやり、話を聞いてあげてください。その人の問題点が見え始めるでしょう。私たちが成熟した愛によって、いやす者となれるように祈りましょう。


 

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