マタイの福音書の恵み 153

   不義の前に屈しない信仰を持て
 
マタイの福音書の恵み 153

不義の前に屈しない信仰を持て
[ マタイの福音書26章57~68節 ]

ハ・ヨンジョ オンヌリ教会 前主任牧師


不当な裁判
イエス様は始めから終わりまで不当な裁判を受けられました。サンヘドリンの法廷は、日が昇っているうちに裁判を行い、過越の期間には裁判を行いません。有罪判決を下したり、極刑を言い渡したりする場合、すぐに執行せず、その人が控訴できる時間の猶予を与えます。特に死刑宣告をするときは、証人がいなければなりません。決定的な証拠なしに死刑を宣告することはできないのです。しかし、彼らはイエス様を夜逮捕し、そのままカヤパの法廷に連れて行きました。
「人々はイエスを捕らえると、大祭司カヤパのところに連れて行った。そこには律法学者たち、長老たちが集まっていた」(マタ 26:57)。
その夜、すでに律法学者たちと長老たちがカヤパの家に集まっていました。明らかにイエス様を処刑するための陰謀が企てられていたことが分かります。
「さて、祭司長たちと最高法院全体は、イエスを死刑にするためにイエスに不利な偽証を得ようとした。多くの偽証人が出て来たが、証拠は得られなかった。しかし、最後に二人の者が進み出て、こう言った。『この人は、「わたしは神の神殿を壊して、それを三日で建て直すことができる」と言いました』」(マタ 26:59~61)。
イエス様が最初の裁判を受けられたとき、証人がたくさんいましたが、いざ話を聞いてみると、一つも証拠と言えるものはありませんでした。彼らはイエス様を殺したいと思っていましたが、イエス様を殺すだけの理由を見出すことはできませんでした。

罪のない救い主
イエス様に敵対する者たちは、罪を見出すことができませんでした。これは、実に驚くべきことです。ほとんどの人は、ある面では正しく明るくても、別の面では悪く暗い部分があります。しかし、イエス様には暗い部分が見つかりませんでした。イエス様を殺そうとする人々はイエス様の公生涯の3年間の行いを調べましたが、処刑することができる証拠を見出せなかったのです。大祭司は、執拗にイエス様に質問を続けました。
「そこで大祭司が立ち上がり、イエスに言った。『何も答えないのか。この人たちがおまえに不利な証言をしているのは、どういうことか』」(マタ 26:62)。
これは、イエス様に偽証を認めよと強要しているのです。このような大祭司の強い圧力に対し、イエス様はどうされたでしょうか。
「しかし、イエスは黙っておられた」(マタ 26:63)。
イエス様の答えは、沈黙でした。偽証に対して自己弁明したり論争したりせず、ただ聞いておられました。
真のクリスチャンは、この悪しき世で生きる中で、様々な困難にあいます。嘘や不義を強要されることもあります。光の子どもたちが闇の世の中で生きなければならないからです。そんなとき、私たちはどうするべきでしょうか。イエス様は、そのような数々の質問攻めの前で沈黙されました。イエス様の沈黙は、最大の発言でした。不正と不義を告発する言葉でした。正当で良心的な判断が期待できない状況で、イエス様はすでにご自分のことを殺すと決めている人々と論争されませんでした。論争をしても、何の価値もなかったからです。それで、沈黙することによってその現実を受け止められたのです。

死の前で超然とした王の宣言
「そこで大祭司はイエスに言った。『私は生ける神によっておまえに命じる。おまえは神の子キリストなのか、答えよ』」(マタ 26:63)。
黙っておられるイエス・キリストの前で、大祭司はどうすることもできませんでした。それで、さらに狡猾な方法を使い始めました。イエス様に、神の子キリストではないと言うよう命じたのです。これは、イエス様ご自身を罠にはめようとする方法です。イエス様はご自分がキリストだという真理の前で何と答えられたでしょうか。
「イエスは彼に言われた。『あなたが言ったとおりです。しかし、わたしはあなたがたに言います。あながたは今から後に、人の子が力ある方の右の座に着き、そして天の雲とともに来るのを見ることになります』」(マタ 26:64)。
イエス様は、単純明快に「あなたが言ったとおりです」と答えられました。イエス様には恐れがありませんでした。沈黙が弁明や逃げではないことを示されたのです。
それからイエス様は驚くべき預言をされました。「人の子が力ある方の右の座に着く」という預言です。イエス様の死は、それで終わりではなく、勝利で終わるというのです。右の座に着くとは、統治者の座に着くという意味です。それだけでなく、天の雲とともに再びこの世のさばき主、勝利の主として来ると言われました。それを聞いた大祭司の反応はどうだったででしょうか。
「すると、大祭司は自分の衣を引き裂いて言った。『この男は神を冒瀆した。なぜこれ以上、証人が必要か。なんと、あなたがたは今、神を冒瀆することばを聞いたのだ』」(マタ 26:65)。
ついに大祭司は聞きたかったことばを聞くことができました。衣を引き裂き、怒りを爆発させながら、神への冒瀆だと言いました。イエス様が死刑に相当することを言ったというのです。彼が適用したのは「主の御名を汚す者は必ず殺されなければならない」(レビ 24:16)という律法です。彼は、「あなたが言ったとおりです」と言って、イエス様が神の子キリストであることを認めたことを、決定的な根拠としてつかみました。大祭司は「『どう思うか。』すると彼らは『彼は死に値する』と答えた」(マタ 26:66)と周りの仲間たちの同意を求めました。

私たちのために苦難にあわれたイエス様
彼らはイエス様を死刑に処することを決定しただけでなく、神の御名を冒瀆したという事実の前でイエス様をののしり、唾をかけ、殴り、嘲り始めました。これが、イエス様に対する拷問の始まりでした。
「それから彼らはイエスの顔に唾をかけ、拳で殴った。また、ある者たちはイエスを平手で打って、『当ててみろ、キリスト。おまえを打ったのはだれだ』と言った」(マタ 26:67~68)。
イエス様は、屠り場に連れて行かれる牛のように、毛を刈る者の前でじっとしている羊のように、黙って殴られたり唾をかけられたり、されるがままの状態でその場におられました。そして同時に、謙遜と柔和と死を恐れない超然とした姿を見せられました。
私たちクリスチャンも、世の中で人々から苦しめられることがあります。しかし、悔しい目にあいながらも悪口を言わず、反抗せず、ただ黙っている人を見るとき、だれもが衝撃を受けます。報復することを放棄し、一方的に恥をかかされるとき、そこから奇跡が起こります。多くの人が不当な目にあいながらも力が現れないのは、復讐するからです。
イエス様は、反射的に悪口を発したりせず、怒りを爆発させず、恨まず、黙って不当な裁判を受けられました。私たちも悔しい目にあうことがあります。あるときは沈黙し、あるときは祈り、あるときは愛によってそのようなことに耐え忍ばなければなりません。

水と御霊によって生まれる
最後にもう一つの出来事を見ましょう。
「ペテロは、遠くからイエスの後について、大祭司の家の中庭まで行った。そして中に入り、成り行きを見ようと下役たちと一緒に座った」(マタ 26:58)。
以前「たとえ皆があなたにつまずいても、私は決してつまずきません」と告白したペテロが、決定的な瞬間に、イエス様から遠く離れてついて行きました。なぜ遠く離れていたのでしょうか。近くでついて行く勇気がなかったからです。逃げることはできず、だからといってイエス様の前に立って守ることもできないペテロ。これは、ほとんどのクリスチャンの姿でもあります。
クリスチャンがたくさんいても世が変わらないのは、私たちがグレーゾーンにいるクリスチャンだからです。熱心に正しいことを語っても、実際にそのように生きられない卑屈な私たちの信仰の良心のゆえです。私たちが人間ペテロの信仰のようならば、後にイエス様を裏切るところまでいくでしょう。ペテロにあったのは、愛よりも強い好奇心でした。ペテロが遠くからイエス様について行ったのは、イエス様を守るためではなく、裁判の結果を見たかったからです。もしイエス様が無事であったなら「主よ、ここに私がいます」と言い、危険であれば逃げようと思っていたのでしょう。卑怯な信仰であり、聖霊を受けていない信仰です。
ペテロは、生まれ変わらなければ、人間ペテロのままです。十字架を見ても、復活されたイエス様を見ても、彼は変わりませんでした。ところが、イエス様の昇天後、五旬節の日に聖霊体験をし、その後、彼は180度変わりました。このペテロのような変化が私たちにもあることを願います。私たちがどんなに変わろうとしても、人間の力ではできません。しかし霊によって生まれれば、どんな不毛の地にひとり投げ出されても、豊かな実を結ぶことができるのです。

祈り
父なる神様、不当な裁判の中でも沈黙し、はっきりと答え、預言されたイエス様の姿を見上げます。私たちにもこのように天の御国を見上げる信仰を与えてくださり、罪に満ちたこの世で、イエス様のように沈黙と祈りと愛によって生きさせてください。私たちが主に仕えるとき、人間ペテロのようにではなく、五旬節の聖霊降臨を経験したペテロのように歩ませてください。イエス様の御名によって祈ります。アーメン。

 

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