マタイの福音書の恵み 154

   鶏の鳴き声ととともに始まる弟子の人生
 
マタイの福音書の恵み 154

鶏の鳴き声ととともに始まる弟子の人生
[マタイの福音書26章69~75節]

ハ・ヨンジョ オンヌリ教会 前主任牧師


危機的な状況に追いやる人間的な信仰
ペテロには、2つの姿がありました。1つは生まれ変わっていない「人間的な姿」で、もう1つは聖霊によって生まれ変わった後の「霊的な姿」です。私たちは、今日のみことばから人間ペテロの姿を見てみたいと思います。どんなに努力しても、結局真理に至ることができなかったペテロ、飢え渇いたペテロ、その人間ペテロのクライマックスが、今日の本文に表れています。
「ペテロは外の中庭に座っていた。すると召使いの女が一人近づいて来て言った。『あなたもガリラヤ人イエスと一緒にいましたね』」(マタ 26:69)。
ここから分かることが2つあります。その1つは、ペテロが大祭司カヤパの家の庭まで来たことです。そこは、ペテロが行きたくない場所でした。そこまでついて来たペテロは、神様を信じていましたが、神様に拠り頼んではいませんでした。また、イエス様に従ってはいましたが、イエス様に信頼してはいませんでした。彼は、自分の経験や意志、方法やプライドを通してイエス様に仕えようとした人間ペテロでした。
彼は、ある面では誠実な人でした。そしてよく大言壮語しました。自分が死ぬことになったとしても、主を見捨てることはないと断言しました。彼は「決して」という表現をよく使いました。また、彼は行動派でした。ほかの人々がためらっているときでも、彼は先立って行動しました。しかし、すべての面で彼は失敗しました。彼の人間的な誠実さが実を結んだことは一度もありませんでした。彼の人間的な献身が成功したことも一度もありませんでした。私たちは、カヤパの家の中庭で、召使いの女たちと一緒に座っているペテロを通して、人間的な信仰は、いつも私たちを危機的な状況に追いやるということを教えられます。

ペテロの3度の否定
69節のみことばから分かるもう1つのことは、ペテロがカヤパの家で働いている召使いの女から嘲られているということです。この召使いの質問は、何かの証拠があるわけでも、特別な意図があるわけでもなく、単に「あなたはイエスの仲間ではないですか」と聞いただけでした。しかし、ペテロはその質問を聞いた瞬間、恐れ戸惑いました。
「ペテロは皆の前で否定し、『何を言っているのか、私には分からない』と言った」(マタ 26:70)。
ペテロは、皆の前で公然と答えてしまいました。その召使いにだけ一言答えればよかったのに、あまりにも戸惑い、苦しかったため、多くの人の前で答えてしまったのです。彼の答えはイエス様を否定する内容でした。
人間的な信仰は、自分が思ってもみないようなことを言わせます。いつも自分の心に不正直な発言をするようにさせます。ペテロがイエス様の弟子であることは、当時、すべての人が知っていることでした。しかし、ペテロは嘘をつこうとしたのではなく、瞬間的な衝動でそのように言ってしまったのです。これが、生まれ変わっていない信仰の属性です。人間的な信仰は、些細な出来事で簡単に崩れます。むしろ、ペテロが拷問されたり、殉教したりするような状況でイエス様を否定したなら、まだよかったかもしれません。同情の余地があるからです。しかし、一人の召使いの女からの何気ない質問の前で、ペテロはこのような大きな失敗をしてしまいました。
しかし、状況はこれで終わりません。危機的な状況は、いつも一度で終わらず、何度も繰り返されるものです。
「そして入り口まで出て行くと、別の召使いの女が彼を見て、そこにいる人たちに言った。『この人はナザレ人イエスと一緒にいました』」(マタ 26:71)。
ペテロは、イエスを裏切ることばを発し、恥ずかしさと恐れのあまり、その場から逃げ出そうとしていました。しかし、入り口まで行くと、別の召使いの女がペテロに追い打ちをかけます。「この人はナザレ人イエスと一緒にいました」と言ったのです。
実際、「あなたはイエスに従っていた人でしょう。イエスの仲間でしょう」と言われたとしたら、それほど光栄なことはないのではないでしょうか。しかし、ペテロは頑なにそれを否定しました。イエス様を信じる人からはイエス様の香りがするべきであり、どこに行っても、それを誇りに思うべきです。ところが、ペテロはどうだったでしょうか。ペテロの2度目の答えを聞いてみましょう。
「ペテロは誓って、『そんな人は知らない』と再び否定した」(マタ 26:72)。
1度目の質問に対しては、単にイエス様を否定しただけでしたが、2度目は、誓ってまで否定しました。しかし、問題はここで終わりませんでした。3度目に、その横にいた人がペテロに声をかけます。
「しばらくすると、立っていた人たちがペテロに近寄って来て言った。『確かに、あなたもあの人たちの仲間だ。ことばのなまりで分かる』」(マタ 26:73)。
むしろ、ペテロが沈黙していたなら、このような恥をかかなかったかもしれません。彼が口を開いたために、さらに事態はこじれていきました。問題を収拾しようとすればするほど、さらに事態はこじれていきます。人間的な方法、人間的な信仰は、事態をさらに悪化させるのです。
周りにいた人たちが「ことばのなまりで分かる」と言いました。ペテロのなまりが、イエス様の弟子たちと同じだというのです。同じ方言を使っているからといって、どうして仲間だと言えるでしょうか。しかし、ペテロはすっかりおびえてしまい、何を聞いても気になります。判断力もなくなりました。それで彼は、自分では思ってもみないようなことをもう一度口にしてしまいます。
「するとペテロは、噓ならのろわれてもよいと誓い始め、『そんな人は知らない』と言った。すると、すぐに鶏が鳴いた」(マタ 26:74)。
ペテロは3度目に、一言で簡単にイエス様を知らないと否定しただけではなく、「のろわれてもよい」と誓いすらしました。たとえ知らなかったとしても、そんな誓いをする必要があったでしょうか。ペテロがそこまでして否定するほどの状況でしょうか。それは、ペテロの本心ではありませんでした。それなのに、そのように言ってしまったのです。これが人間的な信仰であり、生まれ変わっていない信仰です。このような信仰が、自分が思ってもみないことを言うようにさせ、思ってもみない行動をするようにさせ、思ってもみない結果へと向かわせるのです。

激しく泣いたペテロ
ペテロはどうにもできない絶望的な状況に陥りました。するとその時、どこからか鶏の鳴き声が聞こえてきました。これは、驚くべき神様の摂理です。絶妙なタイミングです。鶏が鳴いたということは、神様が鶏を用いてご自分のメッセージを伝えられたという意味です。またそれは、前日の夜、イエス様が語られた預言の成就を意味しています。
その瞬間、ペテロはすべてをはっきりと悟りました。自分自身に対して目が開かれ始めました。ペテロは、今まで自分は正しく、立派だと思っていました。失敗したときにも言い訳がありました。ほかの人を恨み、批判しました。自分が間違っていると思ったことは一度もありませんでした。自分の過ちを認めませんでした。2度目に鶏が鳴いた時も、過ちを認めませんでした。ところが、3度目に鶏が鳴いた時、彼は酔いが冷めた人のように目が覚めました。聖霊が彼を強く打たれ、主の預言のみことばが彼の心を深く刺したのです。鶏が鳴いた時、ペテロは新しく生まれ変わりました。
「ペテロは、『鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言います』と言われたイエスのことばを思い出した。そして、外に出て行って激しく泣いた」(マタ 26:75)。
鶏の鳴き声を聞いたペテロは、激しく泣きました。霊的に粉々になった瞬間です。イエス様が語られたことばを思い出し、長い間待っておられたイエス様の愛を感じました。自分が裏切り者であり、偽善者であると気づき、自分の真の姿が見えてきたのです。そのように砕かれた瞬間、サタンが彼から離れました。ペテロの深い絶望には、ペテロの希望がありました。それが、ペテロの祝福です。
私たちにも、このようなペテロの祝福があることを願います。聖霊に強く打たれて、神様の御声を聞き、このような告白をするように願います。「主よ、私は偽者でした。偽善者でした。私は人間的な信仰で装って生きてきました。私は霊的ではなく、神様の御声を聞いたこともありません。これまで何もかも人間的に判断し、人間的に語ってきました。主よ、私を目覚めさせてください」
伝説によれば、ペテロはその後も鶏の声を聞くたびに身震いしたと言われています。私たちを覚醒させる声が必要です。私たちのたましいを目覚めさせる声、自分自身を見つめさせる声、神様の御声が必要なのです。私たちが最も祝福される道は、謙遜に自らをへりくだらせることです。胸を打ち叩いて涙を流しながら、自分の足りなさを悟って「主よ、あなたがおられなければ、私は生きられません。私をあわれんでください」と告白する祝福がありますように祈ります。

祈り
父なる神様、鶏の鳴き声を聞いたペテロは、聖霊に強く打たれて良心が刺され、激しく泣きました。それは、ペテロが新しく生まれる時間であったと信じます。彼は、このような葛藤と悩みを経て、五旬節を経験しました。主よ、私たちの人間的な信仰を地に埋めさせてください。人間の意志、知性、知識、経験に拠り頼んで生きてきたことを赦してください。そして、私たちの肉を死なせ、新しく生まれさせてください。イエス様の御名によって祈ります。アーメン。

 

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