QTを実践に結びつけるために

   QTと信仰 11
 
イ・ギフン  オンヌリ教会 一対一弟子養育 責任牧師


1.実践神学としてのQT
解放神学や民衆神学、公共神学の理論や方法論とQTを比べてみると、QTは実践神学としても十分に通用するキリスト教の霊性の一つであるということがわかります。

人生の問題の解答を見いだすQT
解放神学や民衆神学の聖書解釈は、解放に焦点を置いた偏狭な方法ですが、人生の中で発生する問題を聖書的に解釈しようと試みるものでした。QTは根本的に、神様との人格的な出会いと交わりを前提としますが、その中で、自分が直面している人生の問題の解答を主のみことばの中から見いだします。
神様は、聖書の中に私たちが必要とする問題の解答を記しておかれました。それで私たちは、QTを通して神様が示しておられる解答を見いだすことができるのです。聖書は、人の内面を含め、あらゆる人生のマニュアルのようなものです。解放神学者や民衆神学者、公共神学者たちが社会の根本問題を分析し、その結果を聖書に照らして解答を見いだすように、QTも同じ過程を歩むのです。
真理を通して真の解放を追求するQT
西欧の現代神学は、啓蒙主義の影響により、あらゆる外的な権威からの解放、すなわち理性の自由を追求し、解放神学と民衆神学は、経済的、政治的な自由を追求しました。しかし、QTは、語られる神と語られるイエス・キリスト、そして、聖書の著者である聖霊を通して人生の真の自由を追求します。QTは、真理である主のみことばを通して人間の根本的な問題である罪と、罪がもたらした苦しみからの真の解放を追求します。QTは「真理はあなたがたを自由にします」(ヨハ 8:32)というイエス様のことばを成就させることです。人は、主のことばから独立するとき、抑圧を受けますが、主のことばと一つになるとき、真の自由を得るのです。

黙想と適用のバランス
西欧の現代神学は、神学の認識を知的な作業を通して成し遂げようとして理論を強調し、解放神学と民衆神学、公共神学は神学の認識を実践することを通して成し遂げようとし、実践を強調しました。先の三つの神学は、当面の問題の解答を聖書から見いだそうとしながらも、実践を理論よりも強調することにより、理論と実践が総合される霊性を追求します。しかし、QTは、「理論」と「実践」を「黙想」と「適用」によって表現するために、両者のバランスを保とうと努力します。QTでは、真の黙想があってこそ正しい適用をすることができ、正しい適用があってこそ真の黙想になると考えます。黙想のない適用は意味がなく、適用のない黙想も意味がありません。QTの力は、適用にあるからです。

解釈学的循環過程を通るQT
解放神学で解釈学的な循環過程を用いているように、QTも解釈学的な循環過程を用います。解釈学的な循環とは、まず自身が直面した状況を分析し、その結果を主のことばに照らし、聖書が示した方法どおりに実践する過程です。QTは、自身はもちろん、自身が置かれている現実を主のことばに照らし、それによって得た結論、つまり、神様の御声を聞いて、それを生活の中で実践します。QTをする人々は、適用を通して神様とみことばの力を体験し、再びみことばの前に進み出るという循環過程を踏みながら歩みます。

社会問題に観点を持つQT
QTをする人と解放神学の支持者は、それぞれ自分なりに個人の霊性を持っています。そして、その霊性は、社会問題に関心を持つよう導きます。個人の霊性なくして社会問題に関心を持つことはできません。ある人は、QTは個人の霊性の成長にだけ関心を持ち、解放神学と民衆神学、公共神学は社会問題だけに関心を持っていると考えます。しかし、QTは、本来、社会参加に関心を持っています。主と交わるということは、隣人のために具体的で、創造的に奉仕と献身をする生活をすることです。QTの根本精神は、この世で隣人愛と正義を実践することなので、QTをすると、しいたげられている者や貧しい者、弱者に対する関心を持たざるをえません(イザ 58:6~7、詩 82:3~4)。韓国で福音主義に分類されるいくつかの大教会が、慈善活動を通して社会参加をしていることが、この事実を裏付けています。解放神学や民衆神学は、貧しい者やしいたげられている者など弱者が生まれる原因を取り除くために、政治と社会制度の変革を追求しますが、そのことは個人的にすることができないので、共同体を形成して社会に参加し、実践しようとします。しかし、QTは、社会参加を通して制度の変革を追求するよりは、社会制度の矛盾によって発生した弱者に仕えることにより、その制度が作り出した現実の問題を解決することに関心を持っています。QTは、個人が教会や社会を動かすようにさせ、社会参加へと導きます。

このように、QTは、理論中心、つまり黙想中心の霊性を追求するのではなく、実践、つまり適用を通して黙想を全きものにする霊性を追求する方法です。解放神学と民衆神学がしいたげられた人々の真の解放を実現させるために努力し、公共神学が社会参加を強調するように、QTは黙想と適用を通して人間に真の解放を実現させてくれる霊性を追求するための方法なのです。

2.深いQTのための二つの提案
QTは伝統的に「読む・黙想する・適用する」という順序で進められてきましたが、より深いQTのために、新しい提案をしましょう。

質問する
聖書には、私たちがどのように信じるべきか、そして、どのように生きるべきかについてのみことばが記されています。神様は、平凡なきょう一日の生活について語られるだけでなく、未来の歩みについても語られます。そして、現在私たちが直面している問題に対する神様の考えや、その問題の意味、あるいは解決法についても語られます。ですから、次のような質問を心に留めて本文を読めば、神様の御声をよく聞くことができるようになります。
① 「神様はきょう一日をどのように歩むよう語っておられるのか」 これは、きょう一日のための質問です。QTは、黙想を通して、日々与えられるみことばを握って生きていくことです。ですから、QTをする人は、この質問に対する答えを聖書から見いだすことにより、毎日みことばによって神様の導きを受けながら生きるようになります。これは「私は、あなたの戒めに思いを潜め、あなたの道に私の目を留めます」(詩 119:15)と告白した詩篇の作者の生き方でもあります。QTをする人は、一日一日をみことばに従って生きます。
②「神様はこれからどのように生きるべきだと言われるか」 これは、未来のための質問です。QTは、毎日の生活について、みことばによって導きを受けることですが、同時に未来についても導きを受けながら生きることです。ですから、明日のために聖書から知恵を探り、人生のビジョンを見いださなければなりません。QTをする人が未来の計画を立てても、結局それを成し遂げられる方は神様だということを(箴 16:1, 9)信じるからです。
③「神様は、今直面している問題を、どのように解決するようにと語られるか」 私たちは、生活の中で望んでも望まなくても多様な状況に直面しますが、QTはそのような状況を主のみことばに従って解決しようと努力することです。そのためには、まず、自分自身を分析することが求められます。これは、人間的な判断、すなわち自分の経験や主観を手放し、主のみことばに注目することです。自分の考えと神様の考えは違うかもしれず、自分が置かれている状況に対する見方も自分と神様とは違うかもしれないので(イザ 55:8~9)、決して自分の経験がみことばよりも先立ってはなりません。
聖書的に考える
私たちは、人生の中でさまざまな状況や困難に直面します。ある人々は、過去の経験のために心が傷つき、現在の歩みに影響を与えていることもあり、またある人々は、過去の出来事に縛られたまま生きています。私たちは、自分が経験した、そしてこれから直面するであろう、さまざまなことに対する霊的な意味を見いだしてこそ、健全な信仰者として生きていくことができます。苦難の中に置かれた霊的な意味、つまり神様の意図を知ることができなければ、人生は苦しくなるばかりです。ですから、QTを通して聖書的に考える訓練を自らすることは、成熟するための近道です。聖書的に考える5ステップを紹介しましょう。

ステップ1:焦点を合わせる  
きょうの私の生活の中で、どんな形であっても影響を与えている過去の出来事や、現在直面している状況について探ります。そして、その中で聖書的に考えるべきことを選択します。
ステップ2:内容整理 
ステップ1で、聖書的に考えるために選択した問題や出来事に対する内容を書き記します。そして、それについての自分の考えや気持ち、または気づいたことを記しましょう。このとき、自分の考えを十分に表現することが大切です。なぜなら、次のステップで、それらの考えが聖書によって照らされるからです。
ステップ3:結びつきを探る
ステップ2で選択し、書き記した考えなどと関連のある聖書のみことばを探してみます。つまり、直面している出来事や、それに対する考えなどを具体的に聖書と結びつけてみるのです。聖書との結びつきは、以前黙想したみことばや、きょう、または明日黙想する内容から見いだすことができるかもしれません。このステップは、聖書的な考えをするために大切です。なぜなら、出来事や自分の考えを聖書で照らして初めて、状況や問題に対する霊的な意味を探すことができるからです。
ステップ4:振り返る
ここでは、問題や出来事について聖書的に考えてみます。すなわち、自分が考えていたことと、聖書が語っている内容を比べ、整理してみるのです。そして、そこから得た新しい結論をもって、出来事に再び戻り、新しい見方、つまり聖書的な観点で再検討することにより、個人の誤った主観的な判断や偏見、問題点などを発見し、真の霊的な意味を得るのです。
ステップ5:適用
ステップ4で得た結論を、具体的に行動に移す過程です。もし自分の考えや判断、または行動が聖書的でないということを認識したなら、これからは、その出来事に対する新しい考えや判断をもって、以前とは違う意味を見いだし、行動を新しくするのです。これにより、聖書から根本的な解答を見いだすのです。

 

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