物語批評による聖書解釈

   QTと信仰 8
 
イ・ギフン  オンヌリ教会 一対一弟子養育 責任牧師


物語批評の特徴
物語批評は、構造主義批評とともに本文を中心に研究する解釈方法です。物語批評には、以下のような特徴があります。
第一に、本文を中心に解釈します。物語批評は、歴史批評のように、著者と著者の世界に焦点を当てず、書かれた本文の内容だけを研究します。ですから、物語批評には、本文に対する歴史的な情報が十分でない場合も、本文を解釈できるという長所があります。
第二に、内包著者(仮想著者)が内包読者(仮想読者)に伝えようとしている意味を明らかにすることを目的とします。物語批評は、本文の中に暗示されている内包著者を認識して聖書を解釈しようとします。
第三に、聖書のうち、物語で構成された本文を解釈するのに的確な方法です。聖書は、物語形式と詩形式で構成されている書です。創世記からエステル記まで、そして四福音書と使徒の働きは、ほとんど物語中心に記されています。物語批評は、詩歌書と預言書を除いた残りの聖書を解釈するのに効果的です。聖書から発見できる多くの話の歴史的な背景や編さんの歴史、または著者や編集者の意図などに関心を傾けず、物語自体を研究することに関心を傾けます。
第四に、物語の中の出来事の背景や登場人物、筋書きを土台に聖書を解釈します。聖書本文の中で起こった出来事の背景は、三つに区分して調べます。空間的背景と時間的背景、社会的背景がそれです。本文の意味は背景によって変わりうるので、背景を正しく理解することは、本文解釈において重要です。物語の中で、登場人物の言行を理解することも重要です。筋書きを見るときは、物語の展開過程、つまり出来事が起こり、発展し、結論に至る全過程の中からメッセージを発見して解釈します。

物語批評とQT
以上、見てきたように、物語批評の方法とQTの方法には深い関連があります。物語批評とQTを比べて説明してみましょう。
第一に、QTは本文を中心に黙想します。QTの最高の長所は、物語批評が本文をありのままに解釈しようと試みるように、聖書本文をありのままに黙想するのです。QTをする人の中には、神学的な知識が多い人と少ない人、全くない人もいます。しかし、神学的な知識が足りなくても、みことばを黙想することはできます。聖書の知識量とは関係ないからです。なぜなら、QTは、本文を分析したり研究したりすることではなく、みことばの中で神様を体験し、信仰の成熟を図るためのものだからです。
第二に、QTをする人は、内包された読者になって本文の中に入り、本文を黙想します。これは、話の中に暗示されている仮想的な読者を念頭に置く物語批評と一致します。イエス様は内包された読者になられ、人間に代わって詩篇をもって父なる神様に祈られました。詩篇は、神様のみことばであると同時に、私たちの祈りでもあります。神様のみことばが神様にささげられる祈りだということです。詩篇は、イエス・キリストの祈りの書です。私たちに代わってささげるキリストの祈りです。イエス様は、神でありながら人となられ、人の心情で父なる神様に祈りをささげられました。
QTは、先に本文を何度か読み返します。読む過程の中で、聖書の物語の中に入り、登場人物になってみることもあります。また、物語の外に抜け出して、第三者の立場から本文を見たり、登場人物の行為を評価したりもします。登場人物の言行に対して多様な疑問点を抱きながら、自らその答えを探していくのです。
第三に、QTは、物語批評を活用して聖書の物語を黙想するのに有益です。物語中心の本文は、いつも出来事が展開されます。その出来事には登場人物がいます。聖書を黙想するとき、彼らの行動が信仰的によるものであったかどうかを探ります。そして、それぞれの行動がどんな結果をもたらしたかを調べます。神様がその出来事の結論をどのように評価し、どのように導かれたのかを調べます。神様は、私たちに出来事の結果を通して語られることも、登場人物の行動を通して語られることもあります。その出来事が処理される過程で、神様がどんな方であるかが示されることもあります。
第四に、QTは、聖書本文を通して神様の御声を聞かせてくれます。物語批評は、物語のジャンルに属さない聖書本文を理解するのに、特に役に立たない傾向があります。しかし、QTは物語批評が持っている限界を超えることができます。基本的にQTは、あらゆるジャンルの聖書のみことばを、神様からのメッセージだと認識します。QTは物語以外の本文の黙想にも適用できます。預言書を黙想するときは、読者が預言者になり、みことばを伝える者の心情で本文を黙想することもあれば、反対にみことばを聞く民の心情で黙想することもあります。詩篇の場合は、読者が賛美する者、感謝する者、嘆願する者になり、神様に賛美と感謝と祈りをささげることができます。
QTは、聖書解釈法に忠実であり、一歩進んで、聖書解釈法が持つ限界を補うものです。QTをする人が聖書本文と解釈学に対する学問的な知識がなくても、そのような過程を尊重し、従っているということがわかります。

 

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