クリスチャン人生論 ⑪

   神論:神の愛 神は実に世を愛された
 
ユ・スンウォン デトロイト韓国人連合長老教会 主任牧師


神の本質、「聖」
キリスト教において聖書を代表する個所を一つ選ぶとしたら、それはヨハネの福音書3章16節でしょう。「神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである」
神学大学院を卒業して25年が経つ現在まで、この個所を何度も暗唱し、引用してきましたが、実際には、この個所を公同礼拝の説教の聖書個所にしたことがなかったことに、最近気がつきました。知っていて当然のみことばだと考え、神学と信仰の前提のように考えていたのでしょう。しかし、最も根本的かつ意味深いメッセージがここに込められています。このみことばを黙想してみましょう。

すべての主語、「神は」
この個所の主語は「神」です。しかし、神は、この文章だけの主語ではありません。すべての主語です。すべての存在の主語です(創 1:1)。時間と空間、そしてすべての霊的なものと物質的なものが、神から出ました(エペ 4:6)。神は私と皆さんの人生の主語です。神は私を造られ、私にいのちを与えてくださいました。すべてが神から来ました。人間が大口を叩いていたとしても、神が取り去られるなら、一瞬のうちに取るに足りないつまらないものになってしまいます。
また、歴史の主語も神です。「神である主、今いまし、昔いまし、後に来られる方、万物の支配者がこう言われる。『わたしはアルファであり、オメガである』」(黙 1:8)。ですから、私の人生の主語も神なのです。すべてが神にかかっています。「人の心には多くの計画がある。しかし主のはかりごとだけが成る」(箴 19:21)。「人は心に自分の道を思い巡らす。しかし、その人の歩みを確かなものにするのは主である」(箴 16:9)。
教会の主語は何でしょうか。牧師でも役員でも教会員でもありません。しかし、最近の教会の主体は、「教会に通っていない人」のようです。マスコミが教会の主語になりました。教会を嫌う人々が教会の主体のようです。教会に「ああしろ、こうしろ」と主張する人々は、教会を愛する人々ではありません。教会をあざける人文学者たち、神をあざける未信者たちが教会の主語のようになり、教会を牛耳ろうとしています。
韓国に「どのリズムに合わせて踊ればいいのか」ということわざがあります。私たちが戸惑うのは、自分に合わせよとわめく世のリズムが、あまりにも多いからです。人によって好みはさまざまで、ほかの人も自分と同じように感じるだろうという考えに、われ知らず執着しています。どうしたらよいのでしょうか。
神は私たちに「世の調子に合わせようとせず、わたしのリズムに合わせて踊りなさい」と言われます。教会の指揮者は神です。教会の主語も神です。神が教会を建てられました。教会は神の御心を知り、神が望まれることをしなければなりません。宗教改革500周年を迎えた教会の主語は神です。では、主語である神は、何をされたのでしょうか。

「世を愛された」
神がなさったのは、「愛すること」です。神が世を愛するのは、決して当然なことではありません。きれいで、親切で、正しく、聖く、愛らしいなら、愛するのは当然です。しかし、世は全く愛らしくありません。
世はカインの子孫で満ちています。怒りがこみ上げてくるほど邪悪です。ニュースを見てください。新聞を読んでみてください。周囲で起こっている出来事が、聖く、正しく、愛らしいでしょうか。全く違います。だれもかれも「邪悪な世」という点には同意するでしょう。うんざりするほどです。世は全く愛らしくなく醜い姿ばかりです。
そのように嘆きながら非難しますが、いざ自分の姿を、へりくだって正直にのぞいてみると、どうでしょうか。正しいことが何であるか知っているのに、実行してはいません。してはいけないことを知っているのに、そこから抜け出せず、犬が自分の吐いた物に帰ってくるように、それをくり返しています(箴 26:11、ロマ 7:15~25参照)。決して正直ではなく、周りの人たちが見ている私とは全くかけ離れた偽善的な自分の存在は、実に醜いものです。
うんざりするほど神のことばを聞き入れず、自分勝手な私たちは、かたくなで邪悪で汚れていて、不潔で醜くてずるい存在です。罰を受けて当然です。ですから、世に定められたのは、愛ではなくさばきです。神と世の関係において当然なのは、愛ではなく、義のさばきなのです。
しかし、さばきが当然である世を、神は愛されました。世はイエスのたとえに出てくる放蕩の限りを尽くした二番目の息子のようです(ルカ 15:11~32)。その息子は父親がまだしっかり生きているのに、自分の分の財産を要求します。当時のユダヤの相続法に基づけば、あり得ないことです。生きている父親を死んだ存在にする侮辱的な行為です。生きている父親に自分の分の財産について話せる根拠はどこにもありません。これは、父親は自分に必要ないと宣言し、自分の分の財産を要求するという、事実上、父のものをゆすり取るような行為です。
そのようにして父親から財産を奪っていき、それを遊女にすべて使い果たし、父をはずかしめた厚かましい子どもが、二番目の息子です。愛される資格が全くありません。むちで打って牢に入れられて当然の親不孝者です。二番目の息子はさばきの対象であり、愛される資格は全くありません。しかし、父は、プライド、権威、正義の原則をすべて放棄し、長男の恨みを受けながらも、二番目の息子のありのままの姿を受け入れました。それが神が世に注がれた愛です。
イエスの別のたとえを挙げてみると、主人に1万タラントを帳消しにしてもらったしもべが受けた恵みと同様です(マタ 18:23~35)。1万タラントは、円に換算すると、1000億を越えるほどの非常に大きな額です。到底返済することのできない額の借金です。家族と自分を全部売っても返すことができません。一般の人には返済不可能な天文学的な金額の借金です。しかし、それを「なかったことにしよう」と、何の条件もつけずに帳消しにするというのが、神が世を愛する方法です。
神の愛は当然なものではありません。到底愛される資格のない人を愛することに決めた驚くべきものです。「神は、実に、……世を愛された」。これは、全く愛するに値しない人に対する神の恵みとあわれみの愛を表しています。「しかし私たちがまだ罪人であったとき、キリストが私たちのために死んでくださったことにより、神は私たちに対するご自身の愛を明らかにしておられます」(ロマ 5:8)。神は、私たちがまだ罪人であったとき、本当に憎いときに愛してくださいました。さばきを受けて当然の世を愛されたのです。

「そのひとり子をお与えになったほどに」
多くの人に感動と笑いを与えた韓国ドラマ『応答せよ1998』の中で、父親がいなくてもまっすぐに成長したソンウは、本当に親孝行の良い息子です。しかし、自分の大学の授業料を工面するために、内緒で銭湯の掃除をする母親のために悲しむ彼に、恋人のボラが核心を突いた発言をします。「だれかを愛するというのは、ただ何かをあげたいという豊かさじゃなくて、あげるしなかい切実さなのよ」。息子のことだけを考えて、自分がつらいということも恥ずかしいということも全く気にしない切実さが、母の愛です。このドラマの中で引用されたユダヤの格言があります。「神はすべての家に訪れることができないため、母を造られた」。自分の子どものためなら何でもせずにはいられない切実な「母」の愛は、ユダヤの格言によれば、その母親を通して私たちに示される神の愛なのです。
神が私たちを愛されるその切実さは、ご自分のひとり子を、さばかれるべき対象である世に遣わし、私たちの代わりに十字架で死なせることによって、差し迫ったさばきと死の問題を解決するしかないという切実さでした。人には滅びとさばきの道から抜け出せる道徳的能力も、宗教的方法もありません。さらに、永遠のいのちを得られる道もないため、神が最も胸の痛む愛の方法として、ひとり子イエス・キリストをこの世に遣わされたのです。
ただ遣わされたのではなく、「お与えに」なりました。ご自分のからだと血と存在のすべてである「モノゲネース」(ひとり子、5月号参照)を十字架に差し出し、私たちの罪のために死なせました。そのひとり子は十字架につけられる前夜、過越のパンを祝福し、弟子たちに裂いて与えながら言われました。
「トゥートー・ムー・エスティン・ト・ソーマ・ト・フィペル・フィモーン(tou/to, mou, evstin to. sw/ma to. u`pe.r u`mw/n)」(Ⅰコリ 11:24)。直訳すると、「これは、あなたがたのためのわたしのからだである」となります。「これがわたしだ」というのです。イエスが過越のパンを分け与えながらこのように語られたのは、イエスご自身を私たちに与えてくださるという意味だったのです。神はひとり子を与えてくださいました。ひとりしかいない御子を、神ご自身の唯一のモノゲネース(ひとり子)を、何の代価も求めず私たちに与えてくださったのです。これこそ、神の「切実な愛」の現れです。


神の愛は、到底愛することができない、
処罰の対象である「醜い者」を愛することに
決められた破格的なものです。

神の愛はひとり子をこの世に遣わし、
切迫したさばきと死の問題を解決する
胸の痛む「切実な」愛でした。

 

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