クリスチャン人生論 ⑨

   神論:創造主なる神 神が喜ばれるように
 
ユ・スンウォン デトロイト韓国人連合長老教会 主任牧師


「知識もなく言い分を述べて、摂理を暗くするこの者はだれか。さあ、あなたは勇士のように腰に帯を締めよ。わたしはあなたに尋ねる。わたしに示せ」(ヨブ 38:2~3)。これを聞いているヨブは、悪人ではありません。神が最高の義人と評した人です(ヨブ 1:8;2:3)。しかし、理由のわからない苦しみの中にいるヨブのところに訪ねてきた友人たちが説教を始め、それを聞いていたヨブは心が乱れ、自らを弁明し、神につぶやきはじめます。これは、その時、主がヨブに語られたみことばです。

ビッグバンではなく神様
宇宙の起源として支持されているのが、いわゆる「ビッグバン」説です。現在の宇宙は大きな爆発によって始まり、膨張し続けているという主張です。では、その「ビッグバン」の前には何があったのでしょうか。世界中のどの科学者も答えられないこの難問に、韓国の物理学者であるキム・サンウク釜山大学教授が「ビッグバンの前には、東方神起(東から神が起こるという意味の名の男性アイドルグループ)がいました」と、おもしろおかしく答えました。宇宙の起源については、こんな冗談しかできないのが人間の限界です。神はヨブにこのような限界を悟らせたのです。
しかし、私たちはその答えをよく知っています。この世の始まりには神がおられました。「神の、目に見えない本性、すなわち神の永遠の力と神性は、世界の創造された時からこのかた、被造物によって知られ、はっきりと認められるのであって、彼らに弁解の余地はないのです」(ロマ 1:20)。
地球は、23時間56分4.091秒周期で自転しています。その軸は、北極と南極をつなぐ目に見えない線です。自転速度は時速約1,660キロメートルで、太陽の周囲を365.2564日周期で公転しています。公転速度は時速107,160キロメートル、つまり秒速約30キロメートルです。秒針が一つ動く間に、地球は秒速約460メートルの速さで回転しながら30キロメートルの距離を飛んでいるのです。しかし、それほどの速度で動く地球上にいる私たちは、めまいを感じることも、酔うこともありません。しかも、公転と自転の正確性のゆえに、年月日時を正確に把握して生きています。
このような精密な機械が偶然生まれたと主張するのは、ガラスのかけらと色素、鉄の塊、プラスチックのかけらなどを瓶に入れて振り動かしていたら、時計ができたというのと同じことです。高度の知性を持つ創造主を前提にしなければ、この世界の存在を説明することはできません。神が造られたのです。

アルファ碁を作ったハサビスがいるように
天才囲碁棋士に勝利した人工知能囲碁プログラムの「アルファ碁」は、1202個の超高性能 CPU(中央処理装置)と、176個のGPU(グラフィック処理装置)を使います。CPUは1個当たり1秒に1千回以上のシミュレーションをし、囲碁の実戦を記録した棋譜16万件をデータに、5か月間、毎日3万回の実戦経験を積む内部学習を経ました。200人もの優秀な技術者たちがかかりっきりで人の情報処理能力を模倣したハードウェアとソフトウェアを作り出したのです。
しかし、アルファ碁が勝利した後に喜びの歓声をあげたのは、アルファ碁ではなく、アルファ碁を作ったプログラマーのデミス・ハサビスでした。アルファ碁は、人間の囲碁の天才に勝つほどの推論と戦略判断を下す優れた知能機械ですが、それを作った人がいるのです。このアルファ碁が偶然生まれたと信じる人がいるなら、その人は正常ではないでしょう。
アルファ碁がその一部を模倣した人間の脳に関して、これまで明らかにされたことがいくつかあります。脳の重さは約1.3キログラムであり、その中に約860億個の細胞があります。脳の神経単位であるニューロン1個は、平均4万個の染色体接合(シナプシス, synapsis)とつながっています。砂1粒ほどの大きさの脳組織(tissue)に10万個のニューロンがあり、10個のシナプシスとつながりつづけます。脳の中には1万種類の異なるニューロンがあります。その中で伝達される情報は、時速416キロメートルで移動し、1秒に10万回以上の化学反応が起こります。普通の人の脳は1日に約5万個の考えをします。
人間の脳は非常に複雑で精巧であり、人工知能は人間の脳にはまだまだ及びません。このような人間が偶然アメーバから進化したと考える人がいるなら、その人は、まず物質がぶつかって、偶然「アルファ碁」がポン菓子のようにポンとできたというような笑い話を証明してみせなければなりません。しかし、それはどう考えても、ありえないことです。アルファ碁を作った人がいるのです。人間はアルファ碁よりも精巧で、複雑な神秘的な存在です。そのような人間の発生は、その人間よりも高度の情報能力を持つ創造主でなくては、説明することができません。
正直に心を開いて、宇宙と世界と人間の中を見つめるなら、このような告白が出てきます。「天は神の栄光を語り告げ、大空は御手のわざを告げ知らせる。昼は昼へ、話を伝え、夜は夜へ、知識を示す。話もなく、ことばもなく、その声も聞かれない。しかし、その呼び声は全地に響き渡り、そのことばは、地の果てまで届いた」(詩 19:1~4)。
この世界と私自身の存在の起源についてのふさわしい結論は、ただ一つです。聖書の最初の文、「ベレシト バラ エロヒム エト ハシャマイム ベエト ハアレツ」、すなわち「初めに、神が天と地を創造した」(創 1:1)です。神は宇宙と世界、そして私たち人間を造られた方です。私たちが信じる神は、創造主である神なのです。

人生の目的は人間には定義できない
神が創造主であり、私は神に造られた被造物であるなら、私の人生の目的は何でしょうか。「人生の目的」を検索語にして、インターネットで調べてみました。良い内容を引用した文章を一つ見つけ、読んでみました。そのすばらしい文章の結論はこうです。「そのため、人生の目的は定義するのが本当に難しいのです」
よく考えてみると、人の人生の目的を自ら探そうとする探求の結論は、結局これ以外にはないのです。被造物、つまり造られたものは何であれ、自分の存在目的を自ら定義することはできないのです。機械も、食べ物も、本も、コンピューターも同様です。すべての被造物の存在目的は、それを造った者が定義します。非常に特別ではありますが、人間も被造物です。測りがたいほど賢いですが、人間は造られた存在であり、自ら存在することはできません。そのため、人が自分の存在目的を自ら定義することは、いくら努力しても不可能であり、身の程知らずなことなのです。
人間は被造物です。被造物なら被造物らしく生きなければなりません。被造物が創造主であるかのように自分の存在に意味づけしようとしてはいけません。それは、知恵があるかどうか、可能であるかどうかという問題ではないのです。私たちの人生の意味は、私たちを造られた創造主なる神が与えられるものであり、哲学や文学、芸術にこじつけるものではありません。私たちが自ら作り出した人生の意味は、「虚構」(フィクション)であり、事実(ファクト)ではありません。虚構の中で生きるべきではありません。
神が人間を造られたあと、与えられた最初の戒めは、創世記1章にあります。人間が存在する限り、人間創造の目的、つまり人生の意味は創造主が語られたこのみことばにあります。「神は彼らを祝福された。神は彼らに仰せられた。『生めよ。ふえよ。地を満たせ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地をはうすべての生き物を支配せよ』」(創 1:28)。私たちのために神が造られたこの世で、幸せに生きつつ、この世を満たせと仰せられたのです。そのために、私たちは神が与えられた知恵をもってこの世をよく治め、生活と文化と文明を創造しなければなりません。
これが、創造主なる神のかたちに造られた人間の存在目的です。これを「文化命令」(cultural mandate)、または「創造命令」と言います。この命令を守るためには、何よりも神から恵み(祝福)を受けなければなりません。求め、捜し、たたきながら、さらに美しい世を造っていかなければなりません。これが被造物である人間の人生の目的です。
神は、この世を造られるその瞬間瞬間に、「良かった」とおっしゃいました。創世記1章には、「良かった」という単語が7回も登場します(創 1:4, 10, 12, 18, 21, 25, 31)。最後に人間を造り、すべてを完成された後、その満足の叫びはさらに大きくなります。「神はお造りになったすべてのものを見られた。見よ。それは非常に良かった」(創 1:31)。
被造物の存在目的は、神に喜ばれる者になることです。ですから、私たちの人生の目的は、「神に栄光をささげること」なのです。私たちが「文化命令」に従って生き、創造を続けるとき、神が喜ばれます。それが神にとって栄光なのです。それが私たちにとっては幸せであり、人生の意味です。いろいろと複雑なことを考え、悩む前に、まず創造主なる神の前に幸せに暮らしてください。その意味で、幸せは権利ではなく、義務だと言えます。


世界が偶然に生まれたと主張するのは、
いくつかの物質を瓶に入れて振り動かしていたら
時計ができたというのと同じです。

被造物の存在目的は、それを造った方が定義します。
人間が人生の目的を定義することはできません。
人は特別ではありますが、被造物にすぎないからです。

 

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