マタイの福音書の恵み 87

   水の上だけでなく天も歩きなさい ② [ マタイの福音書14章22~33節 ]
 
オンヌリ教会 前主任牧師 故 ハ・ヨンジョ


すると、夜中の三時ごろ、イエスは湖の上を歩いて、彼らのところに行かれた。
弟子たちは、イエスが湖の上を歩いておられるのを見て、「あれは幽霊だ」と言って、おびえてしまい、
恐ろしさのあまり、叫び声を上げた(マタ 14:25~26)。


夜中の三時ごろに来られたイエス
夜中の三時ごろ、嵐の中で希望を失い、疲れ果てて、救われる可能性が全く見いだせないような真っ暗やみの中、イエス様がやって来られました。前回の嵐のときは、寝ておられたイエス様を弟子たちが起こすと、イエス様が風を静めてくださいましたが、今回はイエス様がおられません。しかし、夜中の三時ごろになり、もうだめだと思ったとき、主が現れました。脱出の道を備えてくださったのです。試練に耐えられないときにこそ、脱出の道を与えてくださるイエス様に出会うのです。
コリント人への手紙第一10章13節で「あなたがたの会った試練はみな人の知らないものではありません。神は真実な方ですから、あなたがたを、耐えられないほどの試練に会わせることはなさいません。むしろ、耐えられるように、試練とともに脱出の道も備えてくださいます」と言っています。どんな試練がやって来ても、心配しないでください。私たちは必ず試練に勝つのです。もし私たちがその試練に勝つことができなければ、神様が脱出の道を与えてくださいます。
主が夜中の三時ごろに来られたことには、いろいろな意味が含まれています。恐れにとらわれ、眠ることもできず、夜中の三時ごろまで悩み苦しんでいたとき、イエス様が現れたとしたら、どれほど驚くでしょうか。夜中の三時ごろイエス様が来られたことには、イエス様の愛が現れています。みなが寝静まっているような時間に、イエス様が湖の上を歩いてこられ、苦しんでいる弟子たちに会ってくださったのです。今日でも同様です。神様は私を愛しておられるので、時間や空間を越えて、いつでも私のところに来てくださるのです。
もう一つの意味は、人間が絶望する時に、主は正確に現れてくださるということです。彼らは、夜通し最善を尽くし、自分たちの経験をすべて用いたことでしょう。切実に祈ったことでしょう。しかし、もう余力が残っていませんでした。夜中の三時ごろというのは、人間の限界に至ったことを意味します。ここで私たちは、謙遜を学ばされます。人間の終わりは神様の始まりだという原理を見いだします。人間の絶望や敗北は、すなわち神の望みと勝利なのです。私たちが手放せば、神様が動き始めるのです。私たちの傲慢が砕かれるとき、神の恵みが静かに押し寄せはじめるのです。
人は、苦難と恐れに陥ると、よく「神様は私を捨てた」「神様は眠っておられる」「神様は私には関心がない」と思います。しかし、実は全く逆です。私たちが苦しみ、絶望に陥っているときこそ、神様は最も近くにおられるのです。しかし、そんなに近くにいても、子どもが親に気づかないのは、あまりにもつらくて周りに目が向かないからです。しかし、イエス様は、失敗や苦難の中でともにおられ、私たちがもう終わりだと思うときも働いておられます。

常に私たちを見ておられるイエス
では、水の上を歩いてこられるイエス様について考えてみましょう。イエス様は、日が暮れる頃、弟子たちと群衆を送り返し、山に登って静かに祈られました。そして、時は夜中の三時ごろです。その間、イエス様は湖のほとりを歩いておられたに違いありません。イエス様は、夜中の三時ごろになって突然現れたのではなく、ずっと弟子たちの後を追っておられたのです。強い向かい風と荒波に悩まされている様子を、イエス様は見ておられました。弟子たちは、舟に乗って行きましたが、イエス様は湖のほとりを歩きながら、弟子たちのほうへと近づいておられたのです。そして、決定的な瞬間に、彼らのもとに歩いていかれました。山から瞬時に行かれたのではなく、湖のほとりから行かれたのです。イエス様は、ずっと弟子たちの後を追っておられたのです。
今もイエス様は、私たちの後を追っておられます。恐れと苦しみの中で、神様を忘れ、さまよっていたとしても、神様は私たちをお見捨てになりません。愛するがゆえに、関心をもって私たちの後を追われます。主は、私たちから目を離されることがありません。イエス様は、今も神様の右の座で私たちのためにとりなされ、私たちの置かれている状況をご存じで、私たちの涙も見ておられます。

水の上を歩く奇蹟
では、イエス様が水の上を歩いてこられたことには、どんな意味が隠されているでしょうか。二つのことを見いだすことができます。
第一に、イエス様が風と波を治められたということです。前回は、風と波を叱ってしずめられました。しかし、今回は強風を突き抜け、荒々しい波を足で踏んで歩いてこられました。生きている限り、すべての人は何らかの問題にぶつかります。問題がなければ、生きている人ではありません。生きるということは、悩みがあり、病や痛みがあり、向き合うべき多くの問題があるということです。しかし重要なことは、「その問題を頭の上に載せているか、足の下に敷いているか」の違いです。
ある人は、重荷を頭に載せて、苦しみながら生き続けます。自分に問題が多いことを自慢する人もいます。またある人は、教会に来て問題の詰まった風呂敷をみな広げますが、礼拝が終わったら再びそれを包み直して持ち帰ります。私たちクリスチャンは、問題を避けようとせず、問題を足もとに置き、それを踏みつけてしまいましょう。負いきれない思い煩いは、すべて頭から足もとへと下ろすのです。波を治め、環境を支配し、あらゆる問題を支配し、征服されたイエス様のようにです。
第二に、クリスチャンの人生とは、水の上を歩くように、常識で考えれば不可能だと思えるような人生を歩むことです。可能な人生を歩むのは、クリスチャンの人生ではありません。イエス様が水の上を歩かれたように、私たちも心を克服することができます。赦せない人を赦し、罪を克服できるようになります。これは、水の上を歩くことよりももっと驚くべき奇蹟です。聖徒は、世の人々にはできない奉仕や施しをします。貧しい者や病んでいる者を捜し出し、自分の名誉や財産を犠牲にしながら、何の利益にもならないことを熱心にします。だれもほめてくれないこともします。世の人々は、ほめられ、認められる何かがあるから、それをしますが、クリスチャンは、条件なしで、名前も名乗らずにします。まさにそれが、超自然的な人生なのです。人間の罪に染まった本能に従って生きることなく、驚くべき聖霊の世界の中で美しい人生を歩むのです。
わたしだ。恐れることはない
イエス様が水の上を歩いてこられたとき、弟子たちの反応はどうでしたか。
「弟子たちは、イエスが湖の上を歩いておられるのを見て、『あれは幽霊だ』と言って、おびえてしまい、恐ろしさのあまり、叫び声を上げた」(マタ 14:26)。
彼らは疲れ果て、空腹で、絶望的な状況の中で、湖の上を歩いてくる人を目撃したとき、それがイエス様だとは思いもしませんでした。私たちも、イエス様が来られても受け入れられず、主が奇蹟を起こされても、その奇蹟を信仰によって受け入れられないのではないだろうかと心配になります。私たちはどれほど常識的で、日常に染まり、経験を重視し、合理的な考え方の枠の中でのみ生きていることでしょう。信仰を回復しなければなりません。
イエス様は、湖の上を歩くご自分を見て驚いている弟子たちに向かって、「しっかりしなさい。わたしだ。恐れることはない」(マタ 14:27)と言われました。人間が自分の力では解決できないとき、すべてが終わったと思った瞬間に、主がやって来て状況をひっくり返してくださいます。神様は最後に勝利されます。ですから、私たちは決してあきらめてはなりません。神様は葦の海を分け、天からマナを降らせ、火を下し、驚くべき奇蹟を起こしながら、私たちを愛してくださいます。私たちを救い出してくださいます。「しっかりしなさい。わたしだ。恐れることはない」と言ってくださいます。みなさんが、そのようなイエス様の声を聞かれますように祈ります。


 

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