マタイの福音書の恵み 82

   天の御国の倉の学者
 
オンヌリ教会 前主任牧師 故 ハ・ヨンジョ

「あなたがたは、これらのことがみなわかりましたか。」彼らは「はい」とイエスに言った。
そこで、イエスは言われた。「だから、天の御国の弟子となった学者はみな、自分の倉から
新しい物でも古い物でも取り出す一家の主人のようなものです」(マタ 13:51~52)


イエス様は、天の御国についての7つのたとえを話されたあと、弟子たちに「これらのことがみなわかりましたか」と問われました。イエス様がこのように確認の質問をされるのは珍しいことです。なぜこのように問われたのでしょうか。それは、天の御国というテーマが重要だからです。
もし天の御国の実体がなければ、私たちの救いは無意味です。永遠のいのちも、復活も意味がありません。私たちはこの世に生きているので、この世を実体のように考えますが、この世はつかの間です。生きていることほど非現実的なものはありません。元気に暮らしていても、死ねば終わりなのです。実体は、現実ではなく天の御国です。現実はつかの間ですが、天の御国は永遠です。それでイエス様は、天の御国のたとえを話された後、「これらのことがみなわかりましたか」と問われたのです。

天の御国を悟る人
そのイエス様の質問に対し、弟子たちは「はい」と答えました。わかったということです。イエス様の意図したすべてのことを彼らが理解したと見るのは困難です。しかし、イエス様は「はい」という答えを受けて、さらに驚くべき真理へと導かれます。
「そこで、イエスは言われた。『だから、天の御国の弟子となった学者はみな、自分の倉から新しい物でも古い物でも取り出す一家の主人のようなものです』」(マタ 13:52)。
これもたとえですが、7つのたとえの結論と言えるみことばです。これまでのたとえを総括して考えてみると、天の御国は、御国の弟子となった学者が倉から物を取り出すようなものだというのです。
このみことばを理解するために、「天の御国の弟子となった学者」について調べてみましょう。まず、学者とは、エズラの時代から受け継がれてきた社会の宗教階級で、本来は、神に仕える非常に尊い務めでした。神の律法を読み、写本し、解説する人で、今日で言えば聖書の解説者、みことばの宣言者に当たります。つまり、律法の専門家です。
天の御国を正しく悟った人は、天の御国の弟子になった学者のような人で、その人たちだけが御国の宝を取り出すことができます。御国にすばらしい祝福があったとしても、それを取り出して使うことができなければ、自分と関係がないものです。どんなに天の御国がすばらしくても、自分と関係がなければ意味がありません。ですから、天の御国のまことの民になるためには、まず天の御国の弟子となった学者にならなければなりません。

天の無限の倉
では、天の御国の弟子となった学者は、天の御国とどんな関係があるのでしょうか。このたとえを理解するために、倉について具体的に調べる必要があります。
農作業をすれば、その農作物は倉に蓄えられます。しかし、倉には農産物があるだけではなく、食糧、衣服、各種農機具など、生活に必要なあらゆる物が収められます。それが倉の役割だからです。倉には古い物もあれば、新しい物もあります。ところで、倉の主人が貧しい場合は、人に分け与える余裕がありません。自分のことだけで精一杯です。しかし、金持ちであれば自分の必要以上の物を収め、人々に分け与えることができます。
では、天の御国の倉はどうでしょうか。天の御国は一種の“巨大な倉”です。そこには、あらゆる物が満ちあふれています。それらをすべて取り出せる人は、「天の御国の弟子となった学者」です。主人が倉で古い物と新しい物を取り出すように、天の御国の弟子となった学者、つまり、真に天の御国の意味を悟った人は、神様が備えておられる霊的な祝福、とてつもない天の宝を取り出して、実生活の中で用いることができるのです。これがきょうのみことばが意味するところです。
ここで「取り出す」ということばの原語には、「惜しみなく、制限を設けないで物を出して投げる」という意味が内包されています。神の倉のものは、どんなに取り出しても限りがありません。そういう意味で、クリスチャン、つまり天の御国の弟子となった学者とは、霊的な祝福を取り出して用いる人のことを指すのです。

天の御国は壮大なみことばの宝
では、新しい物と古い物とは、何を意味するのでしょうか。これは、学者という単語と結びつけて考えれば明らかになります。つまり古い物とは、「旧約の神のみことば」を指します。
では、新しい物とは何でしょうか。今彼らは、イエス様から律法の新しい解釈について聞いています。天の御国に関するみことばを聞いているのです。驚いたことに、旧約には天の御国に関するみことばはありません。永遠のいのちということばもありません。イエス様が来られたときから、それらのことばが集中的に用いられました。これは、旧約では聖霊ということばが直接用いられませんでしたが、イエス様が来られた時から聖霊が新しく理解されたのと同じです。旧約に天の御国や永遠のいのちがなかったわけではなく、律法が福音によって新しくなったように、このような新しい律法の解釈と適用がなされたのです。これが新しい物です。ですから、天の御国とは壮大なみことばの宝を意味するのです。
神の恵みの倉には、限りなく豊かなみことばがあります。これは、一家の主人が必要に応じて倉から物を取り出すように、無限で豊かな神のいのちのみことばが旧約と新約聖書に収められていることを意味します。そこに永遠のいのちがあり、救いがあり、喜び、満たし、奇蹟があるのです。
「そういうわけだから、何を食べるか、何を飲むか、何を着るか、などと言って心配するのはやめなさい。こういうものはみな、異邦人が切に求めているものなのです。しかし、あなたがたの天の父は、それがみなあなたがたに必要であることを知っておられます」(マタ 6:31~33)。
神様は、私たちに日ごとの糧を与えてくださいます。心配したからといって、自分のいのちを延ばせるわけではありません。神様は、食べる物や着る物など、私たちの生活に必要なものを満たしてくださいます。病もいやしてくださいます。
「あなたがたは心を騒がしてはなりません。神を信じ、またわたしを信じなさい」(ヨハ 14:1)。
思い煩いのある人に、神様は安心と慰めを与えてくださいます。そのような力のあるみことばは、天の御国の倉から取り出されるのです。寂しく孤独な人も、もうひとりではありません。永遠なる私たちの友、イエス・キリストがおられるからです。
しかし、教会に通いながらも、天の御国があるのかどうかわからない人がいます。そのような人は不幸です。教会に通いながらも不安や重荷を負い、天の御国と関係なく生きているのです。祈りは呪文にすぎず、人間的な悩みは手放せず、日々不安に囲まれているのです。そのような人は、本当に不幸です。
天の御国は、私たちのあらゆる問題を解決できるもので満ちあふれています。私たちは、この天の御国の倉に自由に出入りする権利のある、天の御国の弟子となった学者です。私たちは、この天の御国を私たちの生活の中から始めなければなりません。私たちの手に神のことばが与えられた瞬間、天の御国の種が蒔かれはじめます。天の御国は家庭から、夫婦関係から始まります。夫婦の関係で天の御国が経験できないなら、高い所の御国を考える資格はありません。子どもとの関係から、職場から、家庭でのお金の使い方から、御国は始まるのです。
また、天の御国の宝には限界がありません。ですから、惜しみなく分け与えなければなりません。しかし重要なのは、天の御国はイエス・キリストとともに始めなければならないということです。子どものようにイエス様を受け入れてください。イエス様を受け入れた瞬間、そこから天の御国が始まるのです。

 

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