越谷幼稚園 園長 石橋秀雄
ページェント礼拝に気合が入って自宅出産 教会付属幼稚園父母の会会長が、奥さんの出産を嬉しそうに語りました。上の2人は病院で出産。しかし、今回は自宅で出産したとのこと。その理由は、奥さんの出産予定日が年長組のクリスマス・ページェント礼拝と重なってしまったからです。病院で出産すれば、ページェント礼拝に出られなくなる。何としてもページェント礼拝に出たいという奥さんの気迫におされて、自宅出産にしたとのことでした。 ページェント礼拝をささげた翌日、父母の会会長の家で上の子どもたちが見守る中、赤ちゃんが誕生しました。「赤ちゃんはお母さんのお腹が開いて出てきて、産まれたらお腹が閉じる」と思っていた子どもたちにとって、一生忘れられない経験となり、驚きと感動をもって赤ちゃん誕生の瞬間を見つめました。
保育者がささげる礼拝から始まって 「育ての心は信じて待つことだ」と保護者に訴えています。子どもの成長した姿を見て「信じて待って良かった」と感動する時が、クリスマスのページェント礼拝をささげる時です。そのために自宅出産を決断させるほどの感動を味わう礼拝です。子どもと保護者と保育者が一つとなる幸せを味わう時です。 年少・年中組は、讃美が中心のページェントです。年長組はセリフが中心のページェントをささげます。年少・年中組のクリスマスの日があり、年長組のクリスマスがあって、冬休みに入ります。 待降節に入ると、幼稚園では毎日ページェント礼拝がささげられます。まず保育者がページェント礼拝をささげます。子どもたちは保育者のページェントを見、そして、子どもたちのページェント礼拝が始まり、週4回の礼拝が積み重ねられていきます。 礼拝だから毎日が本番です。練習はしません。役は子どもたちが自由に選び、きょうはマリヤ、あしたは天使といろいろな役を演じます。マリヤ役は人気があって、5、6人のマリヤが舞台に立ちます。これに対してヨセフは1人ということもあります。女の子がヨセフ役を、男の子がマリヤ役を選ぶこともあります。
子どもの能力を引き出す場 「見よ、わたしはエルサレムを喜び踊るものとしてその民を喜び楽しむものとして、創造する」(イザ 65:18、新共同訳)。これは、保護者に子育ての心を語るときに指し示すみことばです。「子どもを喜び楽しんでいますか」と問い、「子どもたちは大好きな父・母から、この自分が『喜び楽しまれている』と知ったとき、両親から愛されていることを感じる」と話します。また、子どもたちを本気にさせるみことばでもあります。「みんなのページェント礼拝を、大好きなイエスさまが喜び楽しんで見てくださっているよ」と言うと、子どもたちの目が真剣な眼差しになります。 「すごい!羊さんみたいだった」と礼拝後にほめると、「羊みたいじゃないよ、羊だよ」と子どもに叱られたことがあります。子どもたちは、その役になりきっているのです。年長組の女の子がヨセフ役を選び、ヨセフ1人にマリヤ役5人、ロバも従えて旅をします。このヨセフはマリヤを守るという気迫がこもっていて、私は大変感動しました。「ママが喜んでくれている、イエス様が楽しんでくださっている」と聞き、彼女の内にある力が最大限に発揮されたのです。彼女は、発達遅滞という重荷をもつ子でした。 ページェント礼拝を迎えるにあたって、保護者にも幼稚園に集まってもらい、クリスマスの話を聞き、讃美歌の練習をします。特に年長組のページェント礼拝では、子どもと輪唱する曲があり、保護者も練習してその日を迎えることが求められます。子どもと保護者の歌が輪唱をして、そこにハーモニーが生まれると、涙が出るほど感動します。子どもと保護者と保育者の心が一つになって響き合う礼拝です。保護者に何が何でもページェントに出たいという思いを抱かせる礼拝です。「この教会に幼稚園があり、そこの牧師・園長で良かった」と幸せを感じる時でもあります。 保育の中心に礼拝があります。日曜礼拝があり(自由出席)、水曜日には全園児による礼拝がささげられています。年二回、保護者を含めた礼拝もささげられます。これらの日常の礼拝がページェント礼拝につながっています。保育の中でささげられる礼拝で子どもが育ち、子どもの能力を引き出し、礼拝で子どもと保護者と保育者がつながり、神の愛の中で共に生き、育つ喜びを味わうことができるのです。
石橋秀雄 1970年、東京神学大学大学院 修士課程修了。日本基督教団 鴻巣教会 主任教師。同付属英和幼稚園 園長。1981年、日本基督教団 越谷教会 主任教師。同付属越谷幼稚園 園長。 キリスト教保育連盟理事。講習委員会 委員長歴任。関東教区教区 総会議長を経て、現在、日本基督教団 総会議長。
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