日本CGNTV「本の旅」より
NHK朝の連続テレビ小説や大河ドラマ、また映画・舞台を中心に20代前半から脚光を浴びてきた水澤心吾さん。現在は一人芝居「決断・命のビザ」の千回公演を目標に舞台に立ちながら、全国での講演会も開催し、熱い涙の伝道師として活躍しています。今回、ご紹介する『水澤心吾の杉原千畝物語 一人芝居「決断・命のビザ」ノート』は、役者、水澤心吾が、挫折し傷つきながら、役者としての使命に出会うまでを描いた本です。では、水澤心吾さんにお話を伺ってまいりましょう。
イエス様を信じるようになったきっかけ 私の生まれは滋賀県の田舎なのですが、子どもの頃、テレビというものを見て「こんなに、にぎやかな世界があるのか」と私の心のツボに入ってきて、学校を卒業したら東京に出ようと決意しました。実は、最初は歌を歌っていましたが、ある時、「私には歌の才能がないな」と思い、役者の道へと方向を変えることにしました。 そのような華やかな世界にいながらイエス様を信じるようになったのは、杉原千畝に出会ったことがきっかけでした。千畝は、無条件で難民の方たち、特に、ユダヤの方たちに6千枚におよぶビザを申請します。しかも、何度申請しても国から許可が下りないので、最後には独断でビザを発給するという決心をされるんです。「どんなエネルギーで、それができたんだろう」と思ったときに、私も日本人ですから、大和だましいとか、武士道のようなエネルギーのためにできたんじゃないかと思いました。でも、何か腑に落ちない。そんなとき、千畝がロシア正教のクリスチャンだったということを知り、「そこにヒントがあるんじゃないか」と思って聖書に興味を持ち始めました。だから、私を伝道した方は杉原千畝です。そして聖書を読んでいるうちに、無条件のアガペーの愛に行きつきました。ようやく腑に落ちました。そこから、「無条件の愛って何なんだ」「アガペーの愛って何なんだ」というふうに、どんどん引き込まれていったんです。
なぜ一人芝居をするようになったのか 最初は一人芝居という発想はありませんでした。オーストラリアのシドニーに4か月間、映画の撮影に行った時期があるんですが、その時、オーストラリアから日本を見ながら、「何か日本の物語で世界に見てもらえる作品はないだろうか」という思いが芽生えました。オペラハウスの回りを散歩している時に「杉原千畝のドラマだったら、絶対世界に見てもらえる」という直感がありました。日本に帰ってみると、千畝に関して団体で芝居をしているグループがあったので、「だったら、私は一人でやってみよう」と思いつきました。杉原千畝は、実はすごく寡黙な方で、団体の芝居だと、寡黙さが強調されます。でも、これだけすごいことをされたのなら、心の葛藤はすごかったはずです。その心の葛藤を表現するには、一人芝居がいいだろうと思ったんです。すべて一人称で、彼の心の叫びを表現するんです。
千畝を演じる中で 今振り返ると、私にはもともと「役に立てる人間になりたい」という思いがありましたが、「何が」役に立てる行動なんだろうというのが見つかっていませんでした。でも、よく考えてみたら、私には(役者としての)“表現力”しかありません。60歳を前にして、表現者として使命感のある生き方をしたい、そう思うようになりました。それで、どんな作品を選び、どんな表現をしたら、その使命感につながるだろうと悩み、千畝の作品だったら、私の求めていたものに合うと思ったんです。 千畝を演じる中での私の変化は大きなもので、最初は「自分がお役に立ちたい」「自分が何かできたら」つまり、「役に立てることは、“自分が”のエネルギーであってもすばらしいものだ」と思っていました。そのエネルギーでも続けることはできました。ところが千畝の博愛の精神、無条件の愛を探求していくうちに、「結局、“自分が”じゃないな」ということに気づきました。それで、最近は「高慢のエゴが強いので、それをきよめてください。そして、あなたの光を反射できるようにしてください。そして劇場の中が聖霊に満たされた世界になりますように」と祈っています。1時間15分の舞台の間は、聖霊とエゴの戦いという感じです。その場その場の演技をどう演じようというのは、私の頭にありません。ですから、その日その日の芝居がどうなるかは、私にもわかりません。聖霊様がどう働いてくださるかが、その日の課題です。ゴールのない世界に入ったような感じで、全く飽きることはありません。
今後のビジョンは? あるセリフに「くり返しのきかないこの一生に自分の命を燃やしていこう。そしてイエス・キリストのみことばを掲げて、その光を反射する者となろう」という言葉があります。私は聖書を学びながら、「自分がイエス様の光を少しでも発する者になること」が大切だと思っていましたが、最近、「みことばを掲げて、その光を反射する者となるのだ」ということに気づかされました。ただイエス様の光を反射することのできる役者、そして人間になりたいというのが、今のビジョンです。
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