愛隣チャペルキリスト教会 主任牧師 内越 努
先日、思わず笑ってしまったツイッターの投稿です。 「姉が高校生の頃、パンストを履いた露出狂に遭遇して、なぜかここで逃げたら相手の思う壺!と思ったらしく、首を振り回しながら手足バタバタさせて甲高い声でコンニチハ!って迫ったら、露出狂が腰抜かしたらしく、勝った!と思いながら露出狂の周りを回ってたら、警察に補導されたって話が今でも伝説」 真剣だったのに、しかも良かれと思ってやったのに、逆に正義の味方に逮捕されちゃったという話。 ところで、日曜学校の先生たちから「子どもって、本来すぐに心を開くはずなのに、なぜか心を開いてくれない」という相談をよく受けます。それって、もしかしたら、補導されたお姉ちゃんに似ているところがあるかもしれません。教会に来ている子どもたちや、初めて来た子どもたちと素敵なコミュニケーションをとりたいと真剣に思うのだけど、逆に心を閉じさせているのかもしれないのです。 では、そうならないためには、どうしたらいいのでしょうか。3つの考え方を提案したいと思います。 第一に、一人の「人」として認めることです。「子どもという子どもはいない。子どもという人間がいる」のです。例えば「挨拶」。礼拝で初めて出会った女性に何と言って挨拶しますか?きっと「こんにちは。初めまして。私は〇〇です」と言うでしょう。決して最初に「あなた、何歳ですか?」なんて聞きません。そんな質問をしたらコミュニケーション終了です。ところが、相手が子どもになると、開口一番「きみ、何歳?」と聞いてしまったりする。「こんにちは。先生の名前は〇〇って言います。きみの名前は?」って声をかけるところから始めてみてはいかがでしょうか。それが素敵なコミュニケーションの始まりです。 第二に、ガイドになってあげることです。先日、台湾の国立美術館へ行ってきました。いろんな石や布や皿がありました。付き添ってくださったガイドさんが、日本語で「一体これはどういうものなのか」を具体的に詳しく教えてくれました。すると、今まで「ただの石ころ」にしか見えなかったものが、ものすごく価値のある石に変貌したのです。石は変わっていません。ただ、ガイドさんによって、その石に対する私の見方が変わったのです。「ガイドさんがいなければ、この石の前をただ通り過ぎていただろうなぁ」とありがたく思いました。 さて、日曜学校に置き換えて考えてみましょう。例えば「使徒信条」。素晴らしいものだと思います。絶対必要なものです。けれど、子どもが本当に理解しているのか?ただの石ころになっていないか?と問うてみてほしいのです。その素晴らしいものを、ちゃんとその人の理解できる言葉で、わかりやすく価値を教える人が必要です。そして、子どもはそうしてくれる人に「ありがたい」と思い、心を開くのです。 第三に、しつけることです。狼の群れには、非常に厳しいルールが存在するそうです。そして、ルールを守らない狼は、群れから追い出されてしまいます。危険の多い森の中で、一匹で生活しなければならず、安心できないために、攻撃的になってしまうのです。しかし、厳しいルールによってしつけられた狼は、ルールを守るゆえに「群れとリーダーが守ってくれる」という安心を手に入れます。つまり、「しつけ」とは「信頼」を生み出す大事なものなのです。 何でも子どもの好きなようにさせることが必ずしもコミュニケーションを助けることではありません。「しつけ」こそが重要なのです。もしかすると「子どもだからわからない」という誤解があって、しつけていないのかもしれません。しかし、それでは子どもたちが逆に心を閉ざすことになります。今度、ワガママを言っている“あの子”を思い切ってしつけてみてはいかがでしょうか。「あなたを守る責任を持っているのは私だ」というメッセージを送るのです。 ある日、帰宅してきた小学一年生の女の子がお父さんに言いました。「あのね!きょうの宿題ね、家族に抱っこしてもらいなさいだって!」 お父さんは、女の子を抱っこし、ギューッと抱きしめました。その子のとても嬉しそうな顔を見たお母さんも「じゃあ、お母さんもしてあげる!」と抱きしめました。それを見ていたおじいちゃんも、おばあちゃんも、そしてお姉ちゃんも彼女を抱きしめました。次の日、学校から戻ってきた女の子は「あのね!私が一番たくさんの人にギューってしてもらったの!」とうれしそうに報告しました。「よかったね!ところで、宿題してこなかった子はいなかったの?」とお父さん。すると女の子は「あのね、一人いたの。そしたら先生がその子を前に呼び出してね。怒られるのかなって思ったら、先生がその子をギューってしてあげたの。とってもうれしそうだった!みんなもうれしくなったの!」と笑顔いっぱいで答えました。 抱きしめられるべき子どもがいます。ぜひ、あなたの手を、あなたの思いを、子どもたちのために使ってください。それが子どもの心をつかむコツなのです。
内越 努 アメリカ・アズサパシフィック大学大学院 牧会学卒。 愛隣チャペルキリスト教会 主任牧師。 MEBIG代表。 国内外40個所以上でMEBIGセミナーを開いている。
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