日本CGNTV「本の旅」より
日本同盟基督教団等々力教会の教育主事をされ、教会学校やこども聖歌隊の指導にあたっている井上直子先生は、2009年より教会附属善隣幼稚園の園長をしておられます。現役の園長が大切な子育ての軸をつづった本が『こどもの中に見えるもの』です。
善隣幼稚園について 善隣幼稚園は、お互いがすり抜けるようにして遊ぶほど小さいですが、こどもたちは、のびのびと自分の好きな遊びをくり広げています。園庭も小さいですが、大きな木や草花があり、虫もいて、こどもたちにとっては素晴らしい場所です。園舎は1階が保育室やホール、2階は礼拝堂で、日曜日は2階で教会学校や礼拝が行われます。その横に自由にお母さんたちがお茶を飲めるスペースがあり、こどもたちもお母さんたちもほっとできる幼稚園です。
出版のきっかけ 園児が減った時期があり、その時に等々力教会が「教会のビジョンとして幼稚園をもっと支えていきたい」と言ってくださり、今までその祈りに支えられてきました。まず地域のお母さんに、善隣幼稚園がどういう保育をしているのかを伝えるため、毎月の園だよりに自分のコラムを書き始め、2010年にはブログも始めたところ、保護者の方が信頼してこどもたちを送ってくれるようになりました。しかし、長い目を持って関わってくれる先生はいませんでした。そこで、クリスチャンで保育を目指している方々に、「こういう保育をしている幼稚園があるということを知っていただきたい」「教会の祈りによって幼稚園の働きが形になったということが、他教会の励ましや参考になれば」という思いで、一つの本にまとめようというアイデアが与えられたのです。自費出版でもいいと思い、出版社に持って行くと、「本にしましょう」と言ってくださり、出版させていただきました。
園長としての苦労は? 幼稚園の園長になるというのは私の計画には全くなく、その意味を考える時間が長かったです。でも、こどもたちの素晴らしさや、こども伝道がされているのを見る中で、御心の時に園長にさせていただくのだろうと思っていたので、教会から声がかかった時は、平安のうちにさせていただきました。私が聖書から教えられている子育てについての話ができることは、本当に喜びです。その一方で、ともに保育に向き合う保育者の先生方も、長い時間をかけなければ育たないと思っています。その保育者を育てることが一番難しいことだと思います。
一生分の親孝行とは 息子がまだ幼かった頃、どこかで聞いた言葉です。わが子はただお母さんだけを見上げ、お母さんからすべての糧を得て、心もお母さんがいれば満たされます。そのようなこどもたちが求めてくれる喜びを今のお母さんたちにも味わってほしいと思います。また、神様が、私たちが生まれる前から計画を持っておられ、この世にいのちを与えてくださり、そこにすべての可能性が与えられているということを、子育てをしている時に教えられました。信仰者として、限りない報酬を、こどもを通して頂いていると感じます。
こどもにとって音楽とは こどもは楽しい時に鼻歌を歌ったりします。楽しいなと思える歌や音楽が、身近な空気のような存在としてこどもたち一人一人にあったらいいと思います。それを身体で表現するように導くと、恥ずかしさが先立って見ているだけの子もいますが、それぞれがやりたいと思う時期を待ちながら、きっかけ作りを心掛けています。一人ひとり違っていても大丈夫、これが正しいということはないということを知ってほしいと思うのです。そのほうが、歌が上手に歌えることよりも意味が大きいと思います。
イエス様と保育者 私たち保育者は、「これを教えてあげなければ」「これをこうしてほしいのに」というように、要求や課題を先に出してしまいがちです。でも、イエス様はこどもの言葉や行動を尊重するよう教えておられると思います。こどもがしていること一つ一つに意味があるので、止めることよりも、「何をしようとしているんだろう」ということを考えていきたいと思います。こどもたちのありのままの姿を見守ることが大切だということをイエス様から教えていただいています。
今後のビジョン 教えること自体が神様の愛を伝えることです。それが本当の教育の土台だと思っています。また、ご家庭とよく連絡を取って、こどもたちを育てたいと思っています。善隣幼稚園では親子登園日に、最後に皆さんといっしょに賛美し、お祈りしますが、本当に皆さんが生き生きと賛美し、お祈りをされます。神様を賛美し、神様から愛を受けてお互いを愛し合える場所になり、それが地域に広がっていくことが、私自身の、そして教会のビジョンです。
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