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世界にひろがるキリストの愛

特別インタビュー最も強力な説教は説教者自身です①

フラー神学校総長　マーク・レバートン　
インタビュー：オンヌリ教会英語礼拝部牧師　スティーブン・チャ

昨年末、フラー神学校の理事会は、250人の候補者を検討した結果、新約学者であるマーク･レバートン博士を第5代総長に選任しました。米国パサデナにあるフラー神学校は、1947年に設立され、全世界約80か国から来た4200人の学生が学んでいます。
レバートン博士は、ウィットマンカレッジを卒業後、フラー神学校で牧会学博士号を受け、イギリスのケンブリッジ大学で神学博士号を受けました。2009年、ロイド・ジョン・オギルビー説教研究所の説教学教授、また理事として、フラー神学校に合流しました。フラーに来る前には、カリフォルニアにあるバークリー第一長老教会で16年間、主任牧師として仕え、ジョン・ストット研究所の研究助教授としても活動した経歴があります。

ロイド・ジョン・オギルビー説教研究所の初代所長を務められましたが、研究所について紹介をお願いします。また、神学生たちに対して、より良い説教者、牧会者になれるよう、どのように教えておられるのか教えてください。
ロイド・ジョン・オギルビー説教研究所は、オギルビー牧師を記念して、牧師が引退される頃、後輩牧会者たちが設立した研究所です。オギルビー牧師は、長い間カリフォルニアのハリウッド第一長老教会で牧会をされ、アメリカ議会のチャプレンでもありました。
私は、フラー神学校から所長職の提案を受け、研究所をどのような方向性で導くべきか悩みました。そんな中、説教のための既存の多くの資料の内容が、説教の情報を提供し、説教に霊感を与え、聴衆を楽しませるようなものであることと、それらが私の関心事とは違うことに気づきました。説教に対する私の悩みは、方法論に対することではなく、なぜ、説教をするのか、だれに説教するのか、何を説教するのかについてのことだったからです。
情報と楽しみ、また、霊感を与える説教者ではなく、「まことの知恵」を説教する説教者を立てるためには、どんな努力が必要であるかを問い始めました。そして、知恵とは、人生の現場で生きておられる神様の真理と品性であると悟りました。知恵の最高峰は、人となられたイエスです。ですから、イエス様は神様の知恵です。その方は、私たちの現実に生きておられる神様の真理と品性です。ですから、知恵は言葉ではなく、行いなのです。では、知恵のある説教者たちは、どのようにして作られるのでしょうか。説教者は、自分の力で説教すると考えますが、説教は神様の力によるものです。神様の力が私たちの状況に合わせて人々の中で、人を通して、そして人のために語られるのです。ですから、説教はゆだねられた神様の知恵なのです。
聖書を見れば、知恵のある説教者は神様の臨在のもとで作られます。知恵のある説教者として生まれ変わるためには、十分な時間と苦難、そして行いが調和しなければなりません。したがって、知恵のある説教者は、孤立された状態で形成されることはありません。共同体的な環境、そして、聖霊の働きがなくては不可能です。また、知恵のある説教者は、苦難の中で作られます。苦難は個人の変化をもたらし、それぞれが自分の十字架を負ってキリストに従うようにさせます。最後に、知恵のある説教者になるためには、それらすべてを、世のために喜んで受け入れる意志がなければなりません。
それで、このすべての組み合わせを集めて、私たちは「ミカ・グループ」を作りました。ミカ・グループは、多様な地域、人種、教団の人々が、約2年の間に、2か月に一度ずつ集まって、知恵のある説教者について学びます。12種類のテーマを中心にして授業が進められます。最初は7つのグループから始まったのですが、今は95のグループに成長し、約1000人がミカ・グループに属しています。
良い説教者についての真実な牧会的助言をしてくださった思いますが、霊的な面以外に、技術的な側面も知りたいと思います。どのように説教を準備され、伝えておられますか。
私は、最も強力な説教は、説教者自身だと思います。最も重要な説教の準備は、説教者自身であり、説教者の個人的な品性だと思います。もちろん、説教を準備する技術や、それに関連するいろいろなものを否定するわけではありませんが、この世にあるすべての説教の技術を手に入れても、それを説教者自身が行わないなら、その説教は決して影響力を持つことができません。
主任牧師を任されていた頃、私は数人の説教者たちでチームを組みました。会衆は一人の声からだけ福音を聞こうとする傾向があります。しかし、一人の説教者だけに集中するところには、いつも危険性があります。福音は、さまざまな背景と多様性を持った人々によって宣言されなければなりません。神様の御声を聞く方法は多様だからです。
私は、私だけの聖句集を作るのが好きです。私が好きな節や、聖書のいくつかの部分だけではなく、長期的に聖書全体を説教するための努力の一環です。説教を準備するとき、まず最初にすることは、日程を計画することです。私は5年計画を立てます。この計画は、主要な説教と、特別な状況に対する説教に大きく分かれます。主要な説教は、私だけの聖句集に従って計画を立て、特別な説教は、テーマやキリスト教の祝祭、または教会が置かれた状況によって決まります。ほとんどは、私の聖句集に沿って進めます。
もし2年分の説教を計画したなら、実際に説教する日よりも1年か2年くらい前から、定期的に該当する聖書個所を読み始めます。みことばを研究するのではなく、そのみことばとともに生活するのです。聖書の話の側面により集中します。聖書のみことばを心を砕いて読み、アウトラインを作ってみて、消化しようと努力します。一部分ではなく、全体を見ようと努力します。
そして、実行する1年前に、計画を細分化します。週ごとに分け、テーマのみことばを決め、具体的なタイトルを決めます。そして、説教を1、2文で整理しておくこともあります。最後に、説教をする2週間前からテーマの聖書個所を深く研究し、祈って黙想します。そして、説教の1週間前には、説教の準備を終えます。実際、このような方法は、大学の時、オギルビー牧師から学びました。
だからといって、この方法を絶対的に固守するわけではありません。私にとって、これは一つのツールにすぎません。もし、聖霊がほかの方法で私の心を感動させてくださったり、悲劇的な出来事などが起こって扱わなければならない問題が生じたりした場合は、柔軟に対処します。重要なことは、会衆にはバランスの取れた食事が必要だということです。説教を長期的に準備することは、会衆にバランスの取れた食事を提供する努力の方法の一つです。

総長の著書を拝見し、聖徒が生活する場で神様を礼拝するのでなければ正しい礼拝ではなく、礼拝者としても失敗したのだという内容に、深い印象が残りました。生活の中での礼拝者について語られたのだと思いましたが。
旧約聖書を調べてみると、礼拝について最も自負心の大きかったイスラエルの時代に、神様はその礼拝を喜ばれませんでした。預言者たちを通して神様は、明らかに彼らの礼拝を忌み嫌われると言われました。彼らが神様の御名によって行う行為を忌み嫌われるというのです。それは、彼らが神様を礼拝したのではなく、自分自身に仕えていたからです。このすべてのことは、イスラエルの宗教的な生活に対することを含めたみことばです。
どうしてでしょうか。彼らが礼拝を形式どおりにしなかったからではありません。彼らの礼拝が公共の生活に現れていなかったからです。神様の基準は、貧しい者たちをしいたげ、やもめを放置し、不当な扱いを受けている者たちを顧みず、不法を行っていないかどうかということにあります。もし、このようなことを行っていたとしたら、礼拝は彼らの人生を新しくできていないという証拠です。以前のように罪の人生を生きているなら、礼拝の力あるわざがその人の人生に全く及んでいないということなのです。
このように、礼拝は「力の再編成」です。信仰者は神様の力のもとに生き、それを通して自分の隣人に、また自分自身に反応する者です。もし、私たちの捧げる礼拝が、世に対して何の影響力も及ぼすことができていないなら、旧約の預言者たちが言ったとおり、それは神様が忌み嫌われる偽りの礼拝です。神様はあなたの心の宮に入り、あなたの名を呼んで、世に出て行って神様の御名に反する行いをしてはならないと言っておられます。
イエス様はこれについて、もっと強く語っておられます。山上の説教の中で、くり返し語っておられる部分もこのことです。山上の説教の最後の部分に出てくる「岩の上に建てた家」についてのみことばは、真理を認めて終わるのではなく、行わなければならないという意味です。
マタイの福音書7章を見てみると、イエス様は教えられた後に、ただアーメンと答えて終わらず、はっきりと「わたしのこれらのことばを聞いてそれを行う者はみな、岩の上に自分の家を建てた賢い人」だと言っておられます。すると人々がイエス様の教えの権威に驚きます。この権威が現れた理由は、イエス様がみことばと行いが一致しておられる方だからだと思います。
続く8章で、イエス様が最初に出会った人はツァラアトに冒された人でした。その人は、公共の場所に出てはならないという旧約のおきてを破り、多くの群衆の前に出て来て、「主よ。お心一つで、私をきよくしていただけます」と言って、イエス様にひれ伏しました。それに対し、主は「わたしの心だ。きよくなれ」と言われました。
その次の個所では、百人隊長が登場します。彼のしもべの中風をいやしてくださるよう請い、イエス様が「行って、直してあげよう」と言われると、「ただ、おことばを下さい。そうすれば、私のしもべは直ります」と言います。しかし、イエス様はイスラエルのうち、だれにも、このような信仰を見たことがないと言って、直してくださいました（マタ 8:5～10）。
これらのみことばが示唆するところは、旧約の預言者たちが言おうとしていることと同じだと思います。つまり、真の礼拝をささげたなら、それが生活に現れなければならないということです。集まって賛美し、祈り、説教を聞いたなら、それぞれの生活の場に戻って、イエス様と関係のない、イエス様を現すことができない歩みをしてはならないということです。なぜなら、もしそうであるならば、私たちの歩みを通して、礼拝が偽りであることを神様に示すことになるからです。
これこそ、まさに韓国の教会だけでなく、アメリカの教会の暗い側面です。聖徒が集まって賛美し、いろいろな活動をしますが、生き方に現れていないのです。私たちの歩みに、世に対する正義も、真理も、あわれみも現れていません。私たちが経験する教会は、一貫性がなく、不法に満ち、批判的です。教会が自分の個人的な有益のために存在するなら、それはすべて罪です。イエス様はこのような姿を極端に叱責しておられます。

―4月号に続く―
『牧会と神学』（韓国版）より抜粋

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