ソン・ヨンモク ● 高神大学 神学科 教授
ヨハネの黙示録は、聖書の最後の書であり、聖書の結論です。「この世の国は私たちの主およびそのキリストのものとなった。主は永遠に支配される」(11:15)。これがヨハネの黙示録が伝える核心メッセージです。 ヨハネの教会論は契約的で、神の国とその勝利を強く表しています。そのため、ヨハネの黙示録は、大王であるイエスと、当時迫害下にあった小アジヤの7つの教会(しもべ・民)との契約関係を記した「契約の手紙」であると言えます(下の図表参照)。
イエス・キリストの過去・現在・未来の働き 王であるイエス・キリストの働きは、過去・現在・未来の三つの時制に分けられます(1:4)。キリストの働きと象徴は大きく分けて、主の死、復活、高挙(高く挙げられること)に焦点が合わせられています。
1.過去 「ほふられた小羊」は主が十字架で完了された働きと結びつきます。「勝利を得る」という表現が繰り返されていますが、これはイエスが十字架と復活によって一度に成し遂げられた、永遠で完全な救いのみわざを指しています(3:21;5:5)。 2.現在 ヨハネの黙示録は、キリストの未来の働きよりも、現在の働きをより多く紹介しています。キリストは現在、全宇宙の王、つまり、すべての王の王であられます。イエスが過去に流された血は現在も有効です(12:11)。イエスは現在、教会の中におられ(1:12~13;2:1)、語られ(1:1;2:7;4:1;22:6,20)、王、祭司、預言者として働いておられます。7つの教会に語られた「勝利を得る者」という表現は、現在「勝ち続けている者」という意味です。これは、イエスの過去の勝利のみわざを信じ、現在勝ち続けている教会に慰めを与えます。 3.未来 イエスの未来の働きは、ほとんどがこの書が記された直後に起こる近い未来のことです。もちろん、遠い未来に成し遂げられる終末や、新しい天と新しい地についても記されていますが、イエスの再臨によって完成される神の国に関することです。
小アジヤの7つの教会をはじめ、すべての教会は、この地で王なるイエスのしもべ、また代理人として生きています。イエスの過去・現在・未来の働きのおかげで、迫害の中でもキリストの統治が臨み、今も神の国の完成に向かって進み続けているのです。 イエスが過去に十字架でなされた勝利は、再臨の時まで教会がなすべき現在と未来のすべての勝利を内包し、保障します。ですから、迫害と患難の中でも聖徒が忠実に信仰を守っていることは、彼らがすでにキリストの勝利が続く新しい時代の中に生きていることを証明しています。聖徒はいかなる状況下でも、神がすべてを統べ治めておられることを確信しなければなりません。そうすれば、世の権力によって歪められた世で、悪をもって悪に報いるのではなく、むしろ善をもって悪に打ち勝って生きることができるのです。
王なるイエス・キリストの最後の勝利 ヨハネの黙示録は希望と勝利の書です。ヨハネは竜や獣などの悪の働きについて言及していますが、根本的には苦難を受ける教会のためのイエス・キリストの勝利が中心テーマとなっています(1:7~8;17:14)。 7章(第六の封印と第七の封印の間の間奏)と、10~11章(第六のラッパと第七のラッパの間の間奏)で14万4千人(新・旧約の教会)と巻き物を食べたヨハネ、ふたりの証人(福音を伝える教会)が世から逃げる様子ではなく、忍耐の期間を描写したのは、7つの教会が世で能動的に働いていることを意味します。つまり、現実逃避的な教会ではなく、世に向かって働きかける預言者的な教会の性格を示しているのです。このように、王なるイエス・キリストと教会が結んだ契約関係は、苦境の中にいるすべての聖徒に勝利と希望を与えるのです。
序論 歴史的序言 義務条項 証人を立てる 祝福とのろい
ヨハネの黙示録2~3章に現れた契約 7つの教会ごとに王なるイエス・キリストを異なる象徴で描写 「あなたの行いを知っている」―過去の事実を説明 7つの教会の状況に合わせて主が命じられた事がら―おもに悔い改めを促す 「御霊が言われることを聞きなさい」―キリストのみことばは御霊が語られるみことば 勝利を得る者に与えられる約束と忠実でない者に与えられる警告
ヨハネの黙示録全体に現れた契約 地上の王たちの支配者であるイエス・キリスト -王であるイエス・キリストを描写(1:5前半) 過去にイエス・キリストがご自分の民のために行われた働きを描写(1:5後半~6) キリストへの忠実と真実を求める(2~22章) イエスが遣わした御使いのあかし(22:16)、御霊と花嫁のことば(22:17)、あかしする方の最後のことば(22:20) 巻き物の預言のみことばを守る者は幸いだが、そうでない者は御国の恵みを受けられない(22:7, 14, 18~19)
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