教会成長のための牧会戦略

   たましいに響く歌、ブラック・ゴスペル―人の祝福になるための祝福―
 
ゴスペルシンガー レイ・シドニー


ある日、神は私にこう言われました。「出て行って、祝福となりなさい。」それが、私の使命に対する大きな土台となりました。もし祝福する人が見つからなければ、私は人が祝福されるための環境を作ります。日本に来て働きをすることも、「出て行って」だれかの「祝福になる」ためでした。ゴスペル・クワイヤのワークショップは、まさにそのための私の方法です。つまり、そこに集った人々が祝福され、さらにその人たちが別の人々を祝福するために出て行くように備えさせるのです。
これが神が私に与えてくださった召命に関しての要約です。しかし、そこに至るまでにはいくつかのプロセスがありました。「プロセス(process)」という単語の定義は、「特定の結論に至るまでの一連の変化」です。私の「プロセス」の始まりは5歳の時、母に連れられて、初めて教会の聖歌隊の練習に参加しはじめた頃のことです。私はすべてのパートのメロディをすぐに覚えて歌うことができました。これには、みながとても驚きました。このような音楽の才能は神が与えてくださった賜物です。このようにして、私は幼い頃からゴスペルを歌うことを愛し、後には教えるようにまでなりました。その「プロセス」を通して基盤が作られたのです。それで、幼い頃から現在に至るまで、私はいつもゴスペル・クワイヤに関わってきましたし、時にはグループのリーダーを務めたりしてきました。

私のような伝道者を通して「ブラック・ゴスペル」というジャンルの音楽を用いて、神が日本でのみわざを始められてから、今や長い年月が経ちました。ブラック・ゴスペルは、ウーピー・ゴールドバーグ主演の映画 『天使にラブソングを』などを通して、日本でも広く受け入れられるようになりました。多くの日本人がそのようなスタイルの音楽に魅了されたのです。ブラック・ゴスペルは、エネルギッシュで包容力があり、とてもリズミカルです。私がいつも驚かされるのは、ブラック・ゴスペルに魅了される人の大多数が、ノンクリスチャンであるということです。その人たちが、クリスチャンと同じくらいの、時にはもっと大きな情熱と喜びをもって、力いっぱいゴスペルソングを歌っておられるのです。私にはその理由がよくわかります。ブラック・ゴスペルという音楽のスタイルは、ポップ、ロック、ブルース、ジャズなどといった、実に多くのジャンルのスタイルの影響を受け、また、包括するものだからです。それでノンクリスチャンでも、なじみやすいのです。
ゴスペルという言葉は、もともと「良い知らせ」という意味です。つまり希望、喜び、平和、愛、神の助けと救いのおとずれなどの「良い知らせ」です。こうした神の良いご性質に加え、神の存在、神が持っているもの、神が与えてくださるもの、神のご権能などは、信じる者だけに限られず、神の御名を呼び求めるすべての人に与えられるものなのです。

私が初めて日本を訪れたのは2004年でした。日本でどんなことが起こるか、私にはまったく予想もつきませんでした。神が私を日本へ呼んでくださったということと、主が私と共にいてくださるということへの確信はありましたが、「ワオ!」と驚かされるようなさまざまなことがあり、緊張もひとしおでした。「ワオ!これが初めての日本か!」「ワオ!一体この人たちは何と言っているんだろう」「ワオ!ラーメンっておいしいなあ!」というような初体験の出来事がたくさんあったからです。しかし、神は、そんな中でも私に必要なすべてのことをあらかじめ準備してくださっていて、私を助けてくださいました。
ケン・テイラー氏と出会い、彼が主宰するゴスペルクワイヤのネットワークである「ハレルヤ・ゴスペル・ファミリー(以下HGF)」とパートナーとなることにより、神が私に与えてくださった召命と賜物を分かち合う扉が開かれました。この出会いを契機として、現在は年に2~3ヶ月、日本でブラック・ゴスペルを教えたり、また日本中でコンサートを開いて歌ったりしています。神が出会わせてくださったのは社会人や成人だけではありませんでした。公立・私立の学校を訪問して、さまざまな年齢の子どもたちにもゴスペルソングを教える道をも開いてくださったのです。子どもの頃、私の心に蒔かれたのと同じゴスペルの種が、日本の子どもたちの心にも蒔かれていくことは、私にとってとても大きな喜びであり、報いです。
また、HGFとのパートナーシップが私にとってとても重要な理由は、彼らが「ただ歌う」ことだけが活動の目的ではないということをよく理解しているからです。歌は人が集まる目的を生み出します。HGFがかかげている目標は次のとおりです。「ブラック・ゴスペルを用いて、ノンクリスチャンたちと信仰を土台としたコミュニティーを発展させ、ゴスペルミュージックの持つ祝福と賛美の精神によって、その関係を深めていくこと。」つまり、ブラック・ゴスペルの目的の焦点は、「その歌のほんとうの意味を分かち合い、説明する努力をしながら、つながりを築いていく」ことです。だからこそ、私がいつもワークショップのときに言うのは、最もたいせつなことは、歌によって気分がよくなる私たち自身ではなく、歌の中で宣言されるその方を見つめることだということです。
HGFとのパートナーシップが私にとってたいせつな理由はほかにもたくさんありますが、その中でも重要なもう一つの理由は、HGFが歌うことだけではなく、その後のケアも大切に考えているからです。私が気になったことは、「ノンクリスチャンの人たちが元気よく賛美し、恵まれるけれど、その後どうなるだろう」ということでした。すばらしい歌にいざなわれて元気よく歌い、賛美し、踊り、跳びはねて、その後はどうなるのだろう、ということです。これまで多くのノンクリスチャンの方々から、こんなコメントをいただきました。「ゴスペルを歌うと、どうしてこんなに幸せな気持ちになれるのでしょうか。」「どうして涙が出るのでしょうか。」また、「クワイヤに参加すると、私もたいせつなんだと感じさせられます」とか、「私は愛されているんだ!」という声さえ聞きました。日本にはたくさんのゴスペル・クワイヤがありますが、中にはキリスト教とは無関係で、ただ集まってそのスタイルの歌を歌って楽しむグループもあります。しかし、HGFに参加する人は、必ず牧師や教会、宣教師や伝道者たちと交流することになります。それぞれのグループには必ずクリスチャンがいて、ノンクリスチャンの方の質問に答えたり、祈りを導いたりしながら、ゴスペルによって心に蒔かれた種をはぐくんでいるのです。
ブラック・ゴスペルとひとことで言っても、さまざまな楽器やアレンジの仕方、振り付けなどがあり、バラエティ豊かです。中でも、ここ数年で新しく加わったのは 「フュージョン」です。HGFでは、三味線や和太鼓をとりまぜて、和と洋の融合したゴスペル・スタイルを編み出したのです。アメリカでは、弦楽器のアレンジされた音楽と言えば“東海岸スタイル”と呼んだり、また別のスタイルは“西海岸スタイル”と呼んだりしますが、日本で生まれたこの新たなゴスペル・スタイルは、いわば“極東海岸スタイル”と呼べるかもしれません。
ブラック・ゴスペルを通して日本に祝福をもたらすようにしてくださった神に、心から感謝します。神はこれまでに、ショッピングモールやコーヒーショップ、病室や駅の改札口、学校など、教会の外の多くの公の場所で、ゴスペルミュージックを届ける機会を与えてくださいました。また日本のバラエティ番組の「YOUは何しに日本へ?」というコーナーに出演する機会まで与えられたのです。本当に楽しくて、祝福されています!
最後に、私がいつもワークショップの中で話していることですが、「どうしてブラック・ゴスペルをしているのか」という理由について述べたいと思います。私は歌うことが大好きなのですが、それが私の歌う理由ではありません。私がブラック・ゴスペルを歌い続けるのは、主を愛していて、その主への愛を歌いたいからです。これこそが私が歌う理由です。そして、その喜びを多くの日本人に伝えていきたいと心から願っています。


レイ・シドニー
ゴスペルシンガー、ミュージシャン、ワーシップリーダとして、音楽を通して福音を宣べ伝えている。ハレルヤ・ゴスペル・ファミリーという日本のクワイヤ・ネットワークと提携し、年に二度ほど来日し、クワイヤ・コンサートなどの働きをしている。現在、カリフォルニアに在住している。

 

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